勇者軍の討伐隊
朝日が昇る、薄暗がりの中にフローズの姿が街にあった。そして、フローズは深いため息を吐き出す。
その視線には、勇者軍の旗が有り討伐隊が彷徨く。
マルコシアスが、物音をたてず隣に現れる。フローズは、気付いていたので特に驚かず歩き出す。マルコシアスは、無言でフローズを追い掛ける。
「それで、何を買う予定なんだ?」
「食材は、勇者軍に買われて無いかもね。このままでは、街に食材が渡らなくなるだろうし。なるべくは、多くの食料を確保したいけど。なので、今から狩に行きたいと思いまーす♪さて、行きますか。」
異空間に、狩った獲物を全て入れて歩く。
しかしながら、勇者軍には困ったものだよねぇ。取り敢えず、何か対策を設けなければ。それに、勇者軍のトップは何をしているのやら。
「お前が、そこまで不機嫌なのは久し振りだな。」
「………そうだね。現代の勇者軍は、戦闘力を重視しすぎて周りが全く見えてないからなぁ。」
フローズは、苦笑してからお店に帰る準備をする。
アンドロマリウスは、仕込みを終えて待っている。フローズは、素早く手を洗いエプロンを着けて、腕捲りすると調理器具を棚から出して動き出す。
「フローズ、もう火を止めても大丈夫か?」
「いいや、火を弱めて更に2分温めて。」
フローズは、包丁でキャベツを刻みながら言う。アンドロマリウスは、机を拭いたりしている。
すると、冒険者達が来て何時もの光景になる。
「良く、肉が手に入ったな?」
「まさか、早朝から狩りで忙しかったよ。」
フローズは、冒険者の男に暢気に返し笑う。冒険者達は、嬉しそうに食べている。すると、勇者軍の男達が入ってくる。フローズは、殺意を飛ばし言う。
「ここは、一般の食事場所だ。帰りなよ……。」
「済まない、私達は一般客では無理かい?」
青ざめ、腰を抜かしながら言う。冒険者達は、フローズの冷たい表情に驚きマルコシアスを見る。ちなみに、マルコシアスは知らぬ存ぜぬとスルー。
「お前達は、街の民を考えず片っ端から食料を買い漁ってなお奪うの?お前達は、民を守るべきなのに苦しめるの?お前達は、なにがしたいの?」
「でも、俺達は勇者だぜ?」
すると、フローズは馬鹿にしたように笑う。
「昔の勇者達は、自分達の事を勇者だとは言わなかった。寧ろ、勇者だと言われるのを嫌ってた。それくらい、昔の勇者は優秀で素晴らしかった。」
それには、驚く冒険者と勇者軍の人達。
「僕は、元魔王陛下の家臣フローズ。だから、過去の勇者も知っているよ。まぁ、過去だけどね。」
「ふん、何が元魔王陛下の家臣だ。そんな、嘘を信じる訳ねぇだろ!もういい、それなら奪うしな。」
そして、その声を聞いて反撃とばかりに怒鳴る他の勇者軍達。けど、周りの目は凄まじく冷たい。
「そうだ、平民風情が調子に乗るな!」
「いいから、大人しく食事をだせよ!」
「俺達は、勇者と呼ばれるほど強いんだぞ!」
『ぶっ殺すぞ!』
勇者達は、武器を構える。すると、冒険者達とマルコシアスとアンドロマリウスは警戒して武器を構える。すると、フローズは呆れた表情で言う。
「奪うねぇ……。何で、実力差がわかんないの?もしかして、今回の勇者軍はアホなのかなぁー。」
フローズは、魔力解放して魔力を高める。すると、マルコシアスは驚いて構えをやめる。アンドロマリウスも、守る必要は無いと判断して座る。
勇者達は、恐怖に気絶してしまった。
それを見て、フローズは魔力封印して魔力を押さえた。魔力封印の反動で、吐き気がして一瞬だけ思わず眉を顰める。しかし、何事もなかったかのように勇者達を見る。周りは、蔑みの視線を向けて笑う。
「ふん、口ほどにもない………。」
フローズは、鼻で笑ってから蔑みの視線を向ける。マルコシアスは、苦笑してから優しく言う。
「フローズ、口調を直そうな。皆が、怯えてる。」
「うぇえっ!ごめん、怖がらないでぇー。」
少しだけ、狼狽えてあたふたするフローズ。
その、可愛いらしい姿に恐怖など消えてしまった。どうやらフローズは、街の皆を困らせた勇者軍達の事が余程腹に据えかねた様子だった。フローズは、深いため息を吐き出してマルコシアスを見て言う。
「マルコシアス、彼らを外に放り投げといて。」
「はいよ。」
フローズは、ドアの方を見てから苦笑する。
「貴方も、老いたね。それと、部下くらいしっかり教育してよ。わかった?初代勇者 心事。」
「済まない、フローズ様。本当に、部下が迷惑を掛けた。これから、きちんとしきる。」
フローズは、ため息を吐き出してしまう。
「頑張りなよ?」
「それと、フローズ様にかけられた冤罪は消えた。なので、討伐隊は撤退する。では、失礼……。」
そして、勇者軍は去って行った。
次回 魔王様の思い