気づいた者達……。
皆さん、お待たせしました。ブックマークを、着けたお二人様には感謝します。待たせてすみません!m(_ _;m)三(m;_ _)m
冒険者達は、複雑な心境でとあるお店に向かった。ついに、魔狼の名前がわかった。そして、知り合いに同じ名前の小さな友人が居るのを思い出した。
「いらっしゃい!」
「あんた、誰だ?フローズは?」
すると、魔族の青年は心配そうに上の階を見た。
「実は、疲労で熱を出してな。」
「………なぁ、あんたとフローズの関係は?」
そこで、青年は悩む素振りを見せる。
俺達は、直感的だが分かってしまった。こいつは、悪い奴じゃない。そして、俺達の知らない事を知っている。ならば、聞かなきゃいけねぇ。
「フローズは、俺の上司で魔王陛下の右腕だった男だ。そう、お前達が探してるフローズは………。」
「やっぱりか………。」
本当に、運が良い。俺達、ベテランだけしか此処には居なかった。もし、青いのが居たら大変だった。
青年は、悲しみと苦悩を浮かべている。
「あんた達は、フローズを殺すのか?」
「いいや、俺達はフローズを殺さない。いや、殺せねぇよ。だって、フローズには助けられてきた。恩人なんだ。そして、大切な仲間だと思っている。」
すると、青年は安堵して優しく微笑んだ。
何だよ、愛されてるじゃねぇか。こうなると、詳しく事情を聞きたいんだが。さて、兄ちゃんは何か知ってるだろうか?それに、フローズが熱を出して倒れるだなんて。いったい、どんな無茶しやがった?
「まず、兄ちゃんに聞きたい事がある。」
「………俺が、知っている事で良いなら。」
兄ちゃんは、名をマルコシアスと名乗った。もう、俺達は絶叫レベルで驚いた。いや、フローズが魔王の右腕だったから有り得るか。何で、魔王軍の幹部で軍師のマルコシアス様がこんな店で………いや、こんな店でとは失礼だったな。とにかく、何で魔王軍の現役幹部がお店で働いているんだっ!?
「何で、お店で働いているんだ?」
「うーん、まず疑問を1つずつ教えるか。まず、フローズが魔王軍を裏切ったか否かだな。」
すると、俺達は黙って座った。青年は、少しだけ俯いて苦々しげにフローズの過去を語り出した。
「答えは、否だ。裏切ったのは、俺達であってフローズじゃない。魔王軍は、邪神との戦いで撤退を余儀なくさせられた。その時、撤退の時間稼ぎを申し出たのが魔狼一族だった。そして、自ら肉盾になり魔王軍と勇者軍を逃した。けれど、その代償は大きく生き残ったのはフローズだけだった。俺達は、あの時に助けようと思えば助けられた。けど、更なる被害を恐れた魔王は見捨てる選択を選んだ。」
俺達は、思わず目を丸くしてしまった。
「おい、見捨てたって………。フローズはっ!?」
「そうだ、あの時フローズは家族や友達…………そして、大切な仲間を失った。極め付きは、敵がうじゃうじゃ残る戦場に1人残されたんだ。そりゃあ、絶望的だったろうな。現に、俺達もフローズが生きているとは思わなかった。だから、探さなかった。」
すると、激怒して立ち上がる冒険者達。
俺は、思わず呻いていた。フローズは、いつも笑って優しく時にはアドバイスをくれた。けど、本音は魔族と人間を恨んではいないのだろうか?
「俺だって、命令を無視してでも助けたかった……。けれど、味方に阻まれて行けなかったんだ。ずっとずっと、後悔して罪悪感に苦しんでいたよ。」
俺には、兄ちゃんの苦悩や後悔を理解できる。だからこそ、次の質問をする事にした。
「何で、フローズが殺されなきゃならねぇ?」
「これは、フローズにも教えたが事の始まりは数週間前。まず前提として、魔王軍を抜けたフローズを気に入らない奴は少数派だが確実に結構いるんだ。そいつらが、魔王軍の名前で貴族たちに話をちらつかせた。そして、欲にまみれた貴族は冒険者ギルドに依頼した。奴らに、罪の意識は無いようだ。」
すると、青年が入ってくる。そして、苦笑した。
「どうやら、彼らは魔王陛下の圧力で鎮静化したようです。ですが、私達の仕事は継続するようにと。それと、フローズの具合を気になされてました。」
良かった!これで、フローズは狙われない!
「にしても、魔王陛下はフローズにやたら気にかけるな。確か、今回の魔王は女性だったか?」
「まぁ、戦争の事もだけどたぶん、フローズは魔王陛下の初恋の相手だからな。フローズは、魔王陛下の事を拒絶して、会話すらしようとしないけど。」
マルコシアスは、苦笑しながら皿を棚に戻す。
へぇー、あのフローズがそこまで嫌っているのか。まぁ、仕方がないだろう。でも、珍しいな。
「ちなみに、俺達はフローズの護衛兼店員だ。」
「フローズ様は、身を守ろうとはしませんから。」
アンドロマリウスとか、名乗った兄ちゃんが言う。
「最後に、フローズが疲労で倒れるだなんて。いったい、どんな無茶しやがった?」
「それは………、俺達の口からは言えない。」
「ですね。たぶん、本人に聞いても答えないかと。ですが、悪い事では無いのでご安心を。」
俺達は、納得してしまった。
冒険者達が、帰って行き俺達はフローズの部屋に向かった。フローズは、俺達の気配に目を開ける。
「あー、悪い。何か、起こしちゃったか?」
「いや、大丈夫だよ。彼らの気配で、うっすら目は覚めていたから。それで、彼らに話したの?」
フローズは、起き上がるとアンドロマリウスに止められる。仕方なく、もう一度ベッドに横になって2人を見る。まだ、熱が引かないようで辛そうだ。
「ああ、話したから大丈夫だ。」
「………大丈夫ねぇ。本当に、大丈夫かな?」
フローズは、小さく呟くと目を閉じて眠った。マルコシアスは、苦笑して下の階に降りていった。
さて、熱も引いたしお仕事しよう!
「おはよ。もう、体調は大丈夫なのか?」
「おはよう。うん、大丈夫だよ。」
すると、ベテランの冒険者達が来る。
「おはよー!おい、フローズ倒れたって?余り、無茶すんじゃねぇーぞ?お前は、細いんだからな。」
「むっ!だから、僕は細くはありません!」
フローズは、ムッとしながら料理をつくる。
「さて、そろそろ敬語をやめてくれ。」
「さすがに、年齢はバレてるよねぇ………。うん、分かったよ。それで、ご注文は何かな?」
フローズは、苦笑してから言う。伝票を持って、マルコシアスとアンドロマリウスがお客さんの場所に行く。フローズは、暢気にキッチンに行く。
「フローズ、俺達はお前が何者でも構わない。お前はもう、俺達の大切な仲間で友達だからな。」
フローズは、驚いてから嬉しそうに笑った。
次回 勇者軍の討伐隊