癒しの場所
ほのぼ~の~♪
さて、今日は晴れそうだね。そうだ、まだ4時だし朝市にでも出掛けようかな。フローズは、市場に行き新鮮な野菜や魚介類そして肉を選んで買う。
「ん?よぉ、フローズおはよう!」
「おや、ティシュルさん。おはようございます。」
ティシュルさんは、ランクAパーティー『清瀧』のリーダーでベテラン冒険者さんだ。
「フローズ、その敬語はどうにかならねぇ?」
「えっと、歳上には敬語を使うものと母が………。」
ごめんなさい………。僕の方が、圧倒的に歳上です。
でも、見た目が見た目なので許してね。それにしても、朝市でティシュルさんと会うだなんて。あっ、もしかして………。ふふっ、なるほどねぇ………。
「俺は、敬語で話されるのが苦手なんだ。」
「あはは……。そうだ、お嫁さんにお土産ですか?」
すると、赤面しているティシュルさん。
「まぁ、そうなんだけど………。」
この市場は、食べ物の他に骨董品や必需品そして消耗品と数多くの品を揃えたお店が多い。
最初は僕も、武器や防具などを買いに来たと思っていたのだけど………やはり、嫁さんに一途という噂は本当だったのですね。幸せそうで、なによりです。
今度は、是非ともお嫁さんを連れてご来店くださいね。とは言え、お嫁さんのネイさんは個人的に1人でご来店しているのですが。確か、今日もご来店するとか言っていたような。ふふっ……。
「なぁ、フローズ。女性って、何が喜ぶかな?」
「うーん、そうですねぇ………。って、僕は恋愛経験すらした事のない初心者ですよ!?アドバイスを、貰うのならば町の長老ルーバスさんに聞いてみてはどうです?ルーバスさんは、その手の相談も受け付けていたはずです。なので、頑張ってください。」
まぁ、恋愛経験はぶっちゃけた話し、全力で逃げていたんだよねぇ。えっと、僕ってば勉強や戦闘技術ばかり学んで、女性に興味がなかったし?
うん、悪いとは思うけどさ。
さて、お店にそろそろ帰りましょうかね。
「いや、そんな暇は無いんだ!」
「ふむ、別に何でも良いと思いますが。好いている相手から、貰ったものならきっと何を貰っても、嬉しいに決まっていますよ。だから、悩まずにネイさんに渡したいものをあげてみては?」
もう、これくらいしかアドバイスが出来ないよ!
「そうだな、ありがとなフローズ。」
「いえいえ、それでは失礼しますね。」
「おう、またな。」
やれやれ、僕でさえ結婚してないのに………。
いいえ、正確には婚活もせずに、親からの紹介も無視してました。やっぱり、独り身が楽で良いからねぇー。さて、気持ちを切り替えますか。
さて、早く開店しなければ。とっ言っても、お客さんは基本は昼間と夜しか来ないけどね。
すると、足音がして暢気に振り向く。
「ん?」
「フローズ、お久しぶりだな。」
フローズは、その声に驚いて警戒する。
「こらこら、落ち着けってフローズ。」
「良い、フローズの反応も当然であろう。」
そこには、マルコシアスと現魔王が立っていた。
「いらっしゃいませ………。ご注文が、決まりましたらベルでお呼びください。」
そう言うと、フローズはキッチンに入る。
「今日から、お店の店長だと聞いてな。」
「私は、紅茶とアップルパイを頂こう。」
「じゃあ、俺も同じのを頼む。」
フローズは、昨日の夜に作ったアップルパイを皿に盛り紅茶をいれる。そして、素早く運ぶ。
「お待たせしました、紅茶とアップルパイです。」
二人は、苦笑してこちらを見る。すると、次の来店者が来たので笑顔で挨拶をしているフローズ。
「いらっしゃいませ。」
「よぉ、フローズ!やった、ネイが嬉しがって……」
「おやおや、落ち着いてくださいティシュルさん。でも、成功したようでなりよりです。」
フローズは、落ち着いた口調で優しく笑う。
「おう!今日は、ネイと待ち合わせなんだ。」
「つまり、デートですか。羨ましい!僕に喧嘩を、売っているんですか?受けてたちますよ?」
少しだけ、冗談のニュアンスで言うと拳を構える。勿論、本気ではなく冗談でだが。
「そう言うなよ、フローズ!」
二人で、笑っているとネイが入って来る。
「ティシュル、またフローズ君をいじめてるの?」
「そうなんです。ティシュルさん、酷い。」
フローズは、あえてネイの冗談に乗る。
「だぁー、嘘つくんじゃねぇ!フローズ!」
三人で、笑うのだった。賑やかで、心が暖まる癒しの場所である。フローズは、笑顔で二人を見送る。
さて、そろそろ昼の準備でも……その前に……
「魔王様、砂糖を入れすぎでは?」
「いっ、良いのだ。私は、甘い方が好きだしな。」
今ので、11杯目ですよ。砂糖が、溶けきらずに底に溜まっていますが。さぞかし、甘くてざらざらした飲み心地でしょうね。僕は、遠慮したいです。
「はぁ……、そうですか。」
「あっ、甘い…………。」
酷い表情で、お口直しにアップルパイを食べる魔王様。うん、だと思ったよ。諦めて、残しなさい。
僕は、新しく紅茶を入れながら言う。
「まぁ、でしょうね。」
「だが、せっかくフローズが入れて………」
すると、僕は思わず苦笑して言う。
「それは、大変失礼しました。」
隣で、マルコシアスが青ざめている。知らない!紅茶は、ティーポットに作ったし自分で入れてね。
「陛下!それでは、不味い紅茶をフローズが出したと言っている事になります!それは、お店が美味しくないものを出したと言っているようなもので!」
「なっ!?すまない、フローズ!」
魔王は、慌てて振り向くがフローズは無視して仕込みを始める。時間が無いのに、相手する必要はないだろう。そろそろ、午前中に依頼に行った冒険者達が、お腹を空かせて帰って来る時間帯だろうし。
「フローズ、オークを狩ったんだが要るか?」
「本当?欲しい、どれくらいで売ってくれる?」
ここで、初めて敬語をやめる。
「フローズ、お前には借りがある。金はいらん。」
「別に、気にしないでロア。それで、いくら?」
すると、ロアは首を横に振ると加工済みの、オーク肉をカウンターに素早く置いて全力で立ち去った。
「そいじゃっ!また、何か持ってくるな!」
「あっ、こらぁ~!もう、気にしなくて良いのになぁ………。律儀と言うか、なんと言うか。」
そして、オーク肉を見てから頷いてから呟く。
「後で、串カツにしてお裾分けしに行こうかな。」
実はロアは、致命的なくらい料理が出来ない。ビーフシチューを、作らせたら何でこうなったと思うくらい悲惨な事になる。過去に、1度だけ作らせた。
まず、色は黒いし野菜はカットせずにゴロゴロ入っている。そして、当然だが野菜は生で土を落としていない。と言うか、土くらい落としなよ!普通は、常識だよねっ!?その時点で、僕的にはアウト!
肉も、中途半端に火が通り赤い。当時の僕は、それを食べて当時だけど食中毒に………うん、殺し料理だったよ。毒耐性を、持っているのに食中毒の耐性まで、新たにゲットしたくらいヤバかった!うん。
さて、仕込みますか!そこで、畑をしているモアナさんが入って来る。かごには、カボチャが16個。
「フローズ、カボチャがいっぱいでね。要る?」
「うわーい、要ります要ります!今夜は、カボチャの煮物でも作りますかね。なら、他の具材も市場で買いに行く必要が有りますね。どうしましょう?朝市で、他の具材を買って午前中に作るとしたら……出せるのは夕方になりますしね。うーん………。」
すると、売り出し中の有望Cランク冒険者、ラスタ君が入って来て暢気な口調で椅子に座って言う。
「それなら、俺が買って来ましょうか?」
「えっ、良いの?でも、午後から依頼は?」
すると、ラスタは明るい笑顔で暢気に言う。
「俺も、フローズさんのカボチャの煮物が食べたいので。疑ってはいませんが、報酬は美味しいカボチャの煮物でよろしくお願いします!」
「あははっ、なら宜しくお願いするね。ちゃんと、明日の朝食に出しておくからさ。」
気付けば、マルコシアスと魔王は居なかった。
次回、フローズは店員を押し付けられる。じゃっ、なかった………。強引に、相手が店員になったんだしね。うん、フローズ君ファイト!
フローズ「??、魔界にすぐさま帰れ!」
??「私は、帰りませんよ。坊っちゃん………。」
フローズ「…………。」