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真祖な一般人のスローライフ  作者: 仲田悠
第一話「一般ピープルな吸血姫」
4/28

その先生、活躍

 沢山購入しての帰り道は思った以上に楽な物となった。村長達が新型馬車の安い方を揃って一台ずつ買っていたからだ。

 おかげで荷物を分散出来たし落ち着いて座る事が出来てる。馬に負担を掛け過ぎるのではと少し不安を感じていたから助かった。

「凄いですね。練習用より静かです」

「馬車の価値観が変わるだろう。ウチの協会の荷馬車も全てこれに変えたよ。調合器具の破損がかなり減ったと大好評さ」

 少年も会長も上機嫌。錬金術協会なら欲しがる荷馬車だろう。割れ物が多いはずだし。

「先生にとっても大きいのでは?」

「正に今それを考えていたよ。教会もこれに変えた様だし、この荷馬車も私の物だ。馬は借り物なのだが」

「成る程。あれだけ上質な聖水となれば一瓶割れるだけでも大損害でしょうし」

「私から送る場合はそうだな。教会から取りに来てくれる場合は教会の損害だ」

 それはそれで信仰者に悪いと思う。教会の運営予算の半分近くが寄付金だったはずだし。聖水やら祝福やらは頼む者が限られている。

「先生の聖水ってそんなに上質なんですか?」

「最上質と言っても良い。どんな呪いの品でも一瓶で浄化すると言うし、どんな悪霊であっても一瓶で確実に浄化すると聞いたよ」

「うわ。凄いですね」

 だから高く売れる。原価は一瓶で銀貨五十枚。一回吐くと二瓶作れるから一吐き金貨一枚だ。おかげで細々とやっていけている。

「私以外の真祖も一瓶らしいぞ」

「それは凄い!」

「真祖って何ですか?」

 そこまでは聞いていないか。専門職でなければ吸血鬼などどれも同じだろうしな。私から教えろと言う事だろうし教えておこう。

 真祖吸血鬼も一瓶。おかげで悪魔祓いや吸血鬼狩りにも覚えられていて、吸血鬼狩りの中には直接私の家まで来て買っていく者も居る。

 教会から無害認定されて一般市民扱いになっているから、私を狙うと投獄されると言う事も知られているな。たまにそれを知らない奴が襲ってくるのだが。

「私が真祖なのに無害認定されている理由の一つさ。ずっと昔に他の教会と確認し合ったらしいんだが、真祖すら浄化出来る聖水は私の物だけらしい。そう滅多に出る物でもないから今の供給頻度で充分間に合うと言う話だがな。納品した聖水の半数を世界各地の教会に切り札として販売され、残り半分はそのまま売ったり薄めて売ったりしているそうだ」

「それで質が色々と揃っていた訳ですか。中級聖水にはいつもお世話になっていますよ」

 錬金術協会向けなのは水で半分に薄めた中級品だろうな。余程に強い呪いでなければ充分。

 下級品は各教会で水に祝福を与えると言う伝統的な製造法で作られた物だから私の管轄外。

 確か私の純聖水で金貨一枚、半分の中級聖水で銀貨五十枚だったか。教会同士での取引には割引を掛けると言っていた。

 何気に私はあの教会の稼ぎ頭でも有る。庇護して貰って居るだけに貢献出来るのは嬉しい。私も稼げるし。

 ……む。

「ちょっと止まってくれ」

「あ、はい」

「すまない! 止まってくれ!」

 道端にある物が見えたので停止。後ろに続いている村長達にも止まって貰う。

 荷馬車から下りて、見えた物に近付いてみた。

「ふむ。猫ですか。馬車に轢かれでもしたのでしょうか」

「いや。違うと思う」

 黒猫が蹲っている。まだ生きているし、馬車に轢かれたのであれば蹲ってはいないはず。苦しいから蹲っているんだろう。

 少し撫でてみるか。

「ふむ」

「それで何か解るのですか?」

「獣医ではないから詳しくはないのだが。空腹にしては痩せている様に見えない」

「確かに」

 私に噛みつこうとか引っ掻こうとかも無い。それどころじゃない程に苦しいのか。

 となると、だ。

「少年。荷馬車にバケツが積まれていただろう。持ってきてくれ」

「解りました!」

「む。バケツ?」

 時期が重なっているのも有る。

 ここはバケツの出番だろうな。

「持ってきました!」

「助かる。……あむ」

「な、何をなさるのですか!?」

 何って、吸血。猫の血を吸うのは初めてだが、やはりヒトでなければ多少は耐えられるらしい。

 右の犬歯から吸って感触を確かめる。うん、正解。ろ過して左の犬歯から。……う。

「うぷっ」


 バケツにリバース。大分感染が進んでいた。


「透明……! では、これが!」

 肯定の頷き。詳しい説明は後で――

「うくっ」


 再度リバース。


 相当苦しかったと見える。牛の村で治療していた時に倒れていた牛と似た感触だ。

 とは言え牛と違って小さいからすぐ終わった。

「みー……」

「おおおお!」

「凄いです! 治りましたね!」

「ふぅ。いかんな。私達の村で発生した流行病と同じ病だった」

「それも解るのですか!?」

 同じ病なら解る。とは言え、どうしたものか。

 ここまで届いていると言うのは大問題だぞ。

「ノミを経由されるとヒトも感染する。とは言えヒトに同じ事は出来ん。間違いなく恐れられるし、何より私が耐えられん。ヒトが相手だと噛みつくだけで普通に吐くからな」

「ぬう。先に病原菌を回収するべきでした。予防薬の調合も私達の仕事ですし」

「う。すまん。知らなかった」

「ああ、いえ。その様なつもりで言った訳ではないのです。それにあくまで予防薬。自然治癒力に頼らなくてはなりませんから、この猫の様にすぐ助けられる訳ではありません」

 ふむ、成る程。

 とは言え良い事を聞いた。その辺りの事も後で詳しく聞いて研究してみるか。ヒトの薬も作れるのであれば努力したいし。

「先生。その聖水、ちょっと良いですか?」

「ん? 構わんが、どうするつもりだ?」

「以前父上から聞いたのですが、先生は虫に逃げられるそうじゃないですか。この聖水にも同じ力があればノミを追い払えるのではと」

 おおお?

 成る程、その考えは無かったな。

 吐瀉物を掛けるのは申し訳無いが、試しに少し掛けてみよう。


 ジュッ。


「「おおっ」」

 何かが蒸発した! ノミが消えたのか!?

 ノミごと病原菌を浄化したか!

「病すら浄化する聖水とは……!」

「これを薄めて散布すれば浄化は無理でも追い払う事が出来るかもしれません!」

「それだ! 少年、会長! 戻るぞ!」

 それなら都を病から守れる!

 下級聖水並に薄めれば何とか数も揃うだろう!

 いや、それならば!

「村長達は先に帰っていてくれ! 私の家に保管してある聖水を薄めて各畑に散布!」

「それなら私達も引き返そう! どれくらい薄めて良いのか確かめてからでも遅くないはずだ!」

「先生の事だ! また私の村の様に猫を集めるつもりだろう! 聖水も追加出来る!」

 お見通しか。ならば一緒に引き返そう。黒猫も全身を清めて連れて行く。

 教会と錬金術協会に事情を説明し、衛兵にも手伝って貰って野良猫を集める。

 感染していないかの確認と共に聖水を増やし、それを希釈して霧吹きで散布だ。

「すまないが錬金術協会で場所を貸してくれ。人目に付かない場所でなければ」

「材料の保管庫を使って下さい。先生がお買い上げ下さった事で一つは空いたはず」

「助かる。それから霧吹きとマスク。衛兵に持たせて除菌して貰う」

「急ぎ手配しましょう」

 都のヒト達にも手洗いやうがいを徹底する様に布告して貰わないと。良心が痛むが猫優先で霧吹きだな。

「バケツと大量の水も。希釈用と私の水分補給用で。私の水分も材料らしい」

「ぬぅ。確かに先生以外に作れませんな」

 だろう?

 それに病などの悪いモノが無ければ作れんし。

 とにかく急いで戻ろう。発見した以上は迅速にだ。




「それは本当ですか!?」

「父上、本当です! 僕はこの目で見ました!」

「ぬぅ! 解りました、急ぎ衛兵に協力を要請しましょう!」

 真っ先に頼ったのは大司教。あの司祭がまだ受付に居たから緊急の用事と話して通して貰った。

 猫とノミ経由で流行病が都に来ているかもしれないと話し、司祭を衛兵の詰め所まで向かわせる。事が事なので慎重に。まだ民衆に知られない様に動いて貰う。

 教会に入る前に会長や村長達には錬金術協会に向かって貰ったと話そう。

「私達の村の一帯で起こった流行病と同じ病だ。空気感染はしない様だがノミを経由している。虫に避けられる私が作った聖水ならノミ除けになるのではと少年が気付いてくれてな。結果、ノミ除けどころかノミごと浄化出来た訳だ」

「そうでしたか……。良く気付いてくれた。まだ病が流行っているとは聞いていないし、今からなら間に合うはずだ」

「いえ。先生が猫に気付いたからです」

 きっかけはそうだが、聖水を掛けるだけでも病気に効くと解ったのは大手柄だ。ノミごと浄化するとは思わなかったからな。


 コンコンコン。


 来たか。

「衛兵長をお連れしました」

「緊急の御用と伺いましたが」

 取り敢えず私は錬金術師と名乗ろう。

 都の外で猫を見つけ、死んでいると思ったからここの聖水を掛けてやったところ病気で苦しんでいただけと解った、と言う事にすれば辻褄が合うな。流石に衛兵長に私が吸血鬼などと話せん。

「錬金術協会とは既に話がついている。すまないが衛兵隊に聖水入りの霧吹きとマスクを持たせ、予め聖水を吹きかけて清めた状態で散布や猫の保護を頼みたい」

「解った。急ぎ集めよう。重大な情報の提供に心から感謝する」

 これで衛兵隊の助力は得られた。

 今度は教会側に要請だ。

「感染した猫が居る様なら追加出来るが、流石に最初は教会の在庫を出して貰わねばならん」

「喜んで出しましょう。どれくらい必要でしょうか」

「一先ずは私が作った中級聖水を下級聖水並に希釈して衛兵隊に吹き付ける。そこから更に半分に薄めて霧吹きに入れて持たせてくれ。猫に吹きかけて何か反応が有ればそのまま。足りない様なら下級聖水並の希釈で散布」

 反応が有った、つまりノミ払いや浄化を確認した猫は錬金術協会まで連れてきて貰う。

 現段階では衛兵隊だけで良い。一般人の分まで用意出来ない。発見した時点で手洗いうがいを徹底させよう。


 コンコンコン。


 む?

「大司教猊下。錬金術協会会長様がお越しです」

「通してくれ」

 準備が整ったか?

 待っていてくれと言ったのだが。

「失礼します。先生の指定通りに手筈が整った事と、先生への提案を猊下にもお聞き願おうと思い訪ねさせて頂きました」

「ふむ。どんな提案だろうか」

「私も猫探しに向かおうと思うんです。ノミを確保して病の種類を確定させてはと考えまして」

 それは名案だ。即答で頼む。

 衛兵隊に顔を合わせつつ、衛兵と同様の処置を施して当たって貰おう。

「あ、あの! 僕にも出来る事はありませんか!?」

「少年は私の助手だ。バケツの交換や水分確保。一番忙しいから覚悟しておけ」

「はい!」

 少年にもやる事は山程有るぞ。初仕事にしてはかなりの大仕事だ。

「会長。倉庫は扉付きだろうか」

「ええ。その方が良いと思って倉庫ではなく裏の搬入口を空けました。建物との扉は鍵付きです」

 お、それは助かる。

 ならば早速動こうじゃないか。




 衛兵隊への処置が完了し、会長と共に都の外側から捜索開始。私達は急いで錬金術協会へ。

 私の登録を受け付けてくれた職員が案内してくれた。会長から聖水について聞いているらしい。

「ここです。建物内からは入れない様に鍵を掛けましたし、ご覧の通り暗幕も掛けました。職員にも入るなと厳命しています」

「ありがたい。私自身はともかく、聖水の実態を知られると少々困るからな」

「ははは……。確かにそうかもしれません」

 最適な場所を用意して貰えた。

 しかも素晴らしい物まで有る。

「水を生むアーティファクトか」

「ええ。純水ですから希釈用としても水分補給用としても安全ですよ」

 作ろうとしていた水を生むアーティファクト。

 取っ手を上下に動かす事で、その力を魔力に変換して動くらしい。これは絶対に作る。そう言えば使用者の魔力で動く物だったなと今になって思い当たったぞ。

「少年。すまないがバケツを買ってきてくれ。コップでは足りん」

「ええ!? バケツで飲むつもりですか!?」

「お、お待ち下さい! それでしたら水瓶を用意しますよ!」

「では頼む。作った量と同じだけの水分を補給しなければならないんだ」

「う、うあ、ジョッキも持ってきます!」

 コップも用意して貰っていたが、それだけでは足りない。水瓶からコップで掬うくらいでなければ。ジョッキなら尚良し。

「除菌用の聖水だ。霧吹きで身体に吹き掛けてくれ。ノミ除けだと思って我慢しろ」

「「ははは……」」

 村長達と少年に除菌させよう。私の吐瀉物であっても感染しない為と諦めるんだな。職員にも後で除菌させないと。

「お待たせしました!」

「助かる。念の為君もあれで除菌してくれ。病気持ちのノミを浄化してくれる。中身が何であるかは考えるな」

「は、はい!」

 後は待機。何事も無ければ良いのだが。そうもいかないのが私と言う存在。

「こう言う時に限って必ず悪い方に向かうんだ」

「そうなんですか?」

「先生はとにかく運が無いからなあ」

「ある意味では強運だろう。絶対に感染した猫が見つかるんだ」

「え」

 運の無さもまた近辺では有名。

 運絡みの事は絶対に良くない結果になるし、こう言う事態では必ず悪い方向に話が加速する。


 コンコンコン。


「「ほら来た」」

「うわ」

 やっぱりか。

 ああ、うん、会長だ。ぐったりした猫を抱き抱えている。しかもシュウシュウ音を立てて。ノミが浄化されているらしい。

「下級聖水の半分でも浄化出来ました。ノミの確保も出来ましたので、今から研究室に持っていきます」

「頼む」

 確保も出来たか。やはり加速したな。

 私も出来る事をやっていこう。

「あむっ」

 この猫は、まだ掛かりかけだな。まだ楽ではある。……うん。

「うぷっ」


 リバース。


「本当だ……。透明……」

「けほっ。物が物だが、手早く希釈を。あむっ」

「は、はい!」

 これを都中に散布と言うのは本当に申し訳ないと思う。勘弁して欲しい。命優先。

 よし、この猫はもう大丈夫だ。

「しゃーっ」

「「あ」」

 え。ガブリ。これは別腹? 別腹なのか?

 まあ良しとする。今後も病に掛からなくなる訳だし。

「こ、こら」

「ああ、大丈夫大丈夫。猫の場合は一度先生の血を舐めると病気に掛からなくなるんだよ」

「そうなんですか!?」

「他の動物は知らないが、犬は駄目らしいな。猫だと子供にもそれが受け継がれるんだ」

 そう言う事だから少年は気にするな。職員もだ。あー、あの黒猫にも噛ませるかな。出来れば何か食べさせてやりたいところだが。

 あまり餌付けしてもまずいか。とにかく私を噛ませよう。ガブリ。

「よし。それじゃ私達は外で受け取ろう」

「だな。先生の面倒は頼むよ」

「任せて下さい!」

 ここからが本番。聖水の希釈と私の水分補給は少年と職員に任せる。ああ、うん。やはり加速しているな。猫がどんどん運ばれてくる。

「あむっ」

 聖水で浄化したら吸血。

「うぷっ」


 連続リバース。


「……水」

「は、はい!」

 吐いたら水分補給。面倒だからレギンスの裾をたくし上げる。治療が済んだ端から噛ませる為にだ。少年に促させよう。

「うぷっ」


 繰り返すリバース。


 そして足に痛み。舐められる感触。

 唯一の救いは猫達の可愛い声に囲まれながらやれると言う事だな。牛の村を助けた時よりずっと気が楽だぞ。うん、猫の為なら頑張れる。

 それにしても多い。結構危なかったんだな。

「……少年。衛兵に伝えて来てくれ。流行病が来ているのは確定。猫の確保を続けながら聖水の散布を都全域に広げてくれと」

「解りました!」

 聖水も順調に増えているし、この調子なら何とかなるだろう。

「うぷっ」


 絶賛リバース中。


「うぬ、ぅ……」

「本当に、大丈夫なんですか……?」

「……便利な体に感謝さ」

 流行病だからと言う事以外にも早く片付けなければならない理由が有る。

 もたもたしていると村から離れているせいで弱ってしまうからな。今日明日中には片付けたい。

「伝えてきました! うあ。大丈夫ですか?」

「……ご苦労。問題無い。とは言え悠長に構えていられん。吸血鬼なだけに故郷の土から離れると弱る」

「「あ!」」

 一週間ももたないから困る。四日程で家の周囲に居るくらいまで弱るな。五日を過ぎると自力で動けなくなる。だから今日明日が勝負だ。

 棺桶に村の土を入れて持ってきて貰う手も有るには有るが、見た目が宜しくないにも程が有るから最終手段。

 とにかく運びこまれた猫を吸血。まだ動く元気が有る猫は私を噛ませるなり引っ掻かせるなりすれば良い。

 聖水を増やす為にも出来るだけ血を吸おう。




 意外にも一日で落ち着いた。

 感染した猫の居場所が絞られたらしく、早期発見にして迅速極まる対処になっていたそうだ。

 聖水も教会に返却出来るくらい作れたし、万事丸く収まってくれた事になる。

 その代わり私はまだ協会の搬入口で大の字に寝そべっているのだが。

「先生。本当にお疲れ様でした」

「ああ。少年もお疲れ様。流行病の場合は助手が居ないと大変でな。助かったよ」

 職員や村長達は希釈や瓶詰め作業中。

 最初に教会が提供してくれた分だけ瓶詰めして返却し、残りは都に散布して貰うつもりだ。

「先生、落ち着いたと聞いたので……うお。大丈夫ですか?」

「何時もの事さ。落ち着いたらしい」

 会長も来てくれた。予防薬が出来たらしい。流石は都の錬金術師。仕事が速くて良いな。

「ああ、そうそう。そこのバケツ。確認用に取っておいたから、あの呪われた品に使ってくれ」

「うあ。すみません。もう充分理解しましたけどね。折角なのでお言葉に甘えて……」

 最初に猫を治療した時に浄化させようと思っていたが、こんか事態になってしまったから別に確保しておいたんだ。

 純聖水がどれだけの威力か確かめてくれ。


 ボボッ!


「「うあ!?」」

 おおお? 結構強い呪いだったか。

 この音はかなりの反応だぞ。

「か、会長! 今のって封印していた本でしたよね!?」

「あ、ああ……。中級聖水では駄目だったから効果を確かめるのに良いと思ったのだが一発で浄化とはな……」

 ああ、一番強いのを持ち出したか。

 効果の確認と言う名目で純聖水を一瓶も得した訳だ。それも良いだろう。元々礼のつもりだったし、コネの為と思えば安いものだ。

「まだ残っている様なら他の物も纏めて浄化すると良い。物に掛けるより溜めた容器に物を入れる方が経済的だぞ」

「え。出来るんですか?普通の聖水だと残りも水になりますが」

「出来るぞ。蒸発するまで使い回せる」

「そこまで強力だったんですか!?」

「中級聖水だと解らんがな」

 中級聖水だと水で薄めた分は使い回せないと思う。やった事が無いから解らん。

 純聖水なら蒸発するまで有効だ。知っていると中級聖水を買い足すより経済的なはず。生産元の私は使い放題。纏めて呪われた品を送られた時はこれで節約している。

「本当だ……!」

「そうでなければ真祖を殺せん。蒸発するまで常に浄化するのだからな」

「ようやく理解出来ましたよ。先生の聖水は本当に素晴らしい」

 吐瀉物なんだが、それは言わないお約束と言うものだろう。

「改めて、今後とも宜しくお願いします」

「こちらこそ宜しく頼む」

 良いコネが出来た。

 今後もお世話になるはずだし、良い関係を続けていきたいところだな。




 早く帰りたいので、衛兵長に護衛を頼んで私の事情を話しながら帰路につく。信頼出来る衛兵も一緒。少なくとも彼等には話せる。都を救った恩人になった訳だし。すっかり敬意を払ってくれる様になってし。

 会長とは証拠を見せられたから別れている。

「ご冗談を。先生の様な立派な錬金術師が吸血鬼だなどと」

「本当だぞ。私の影を見てみろ。今日は半月だからヒトの半分くらいに薄まってる」

「「うおおっ!?」」

 信じて貰えなかったが、夜なら影を見せるだけで良い。月が欠ければ欠ける程に薄くなるとか言う、ここでも真逆な在り方なのだがな。どうも新月に近付く程に力が増すらしい。増すと言ってもヒト並までが限度なのだから切ない。

 ひ弱さなども話し、縁が有って大司教の家に庇護されているとも説明する。

「僕もこれからお世話になるのですが、当家に生まれた者は必ず先生から様々な事を学ぶんです。父も祖父もそうだったと聞きました」

「なんと……。大司教猊下の恩師とは……」

 あの大司教猊下のご子息から何代だったかな。

 もうどれだけ教えて来たか覚えてないくらいは生きている。

「む。お待ちを。吸血鬼の身でありながら聖水をお作り下さったので?」

「「あ」」

「ああ。本当に逆でな。聖水が効かないどころか作る事も出来る。十字架も効かん。少年の先祖である大司教猊下から直々に祝福を頂いたロザリオも常に身に付けているし」

 吸血鬼の弱点は克服している。はず。

 死のうと考えた事が無いから解らん。

「昔、知り合いの吸血鬼狩りから変な呼ばれ方をされた」

「それはどの様な?」

「その知り合いの国ではヒトをピープルとも呼ぶらしくてな。一般ピープルなバンピール、略してパンピールと呼ばれた。真祖なクセして一般人並なのはどうなのだと笑われたよ」

 確かに私の事だなと苦笑いしながら納得した。

 何故こんなワケの解らん吸血鬼になったのかと考えた事も無くは無いが、パンピールのおかげで無害認定されて平和に暮らせているからな。

 その分周囲を助けたりしながらのんびり生きるつもりだよ。




第一話「一般ピープルな吸血姫」了

ブラバせずに読んで下さった方、本当にありがとうございます。

前回よりは少し読める物になったのでは、とびくびくしながら期待していたり。

一先ず三話投稿し、前回より読んで下さる方がいらっしゃるようなら続きでもと考えておりますので、良かったらまた覗いてみて下さい。


ご意見やバッシング大歓迎です。励みになります。勿論普通の感想も頂けますと狂喜乱舞。



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