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真祖な一般人のスローライフ  作者: 仲田悠
第六話「皆の吸血鬼」
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皆の先生

 また面白い生活になってきた。研究所で伯爵との情報交換が始まったし、侍女が料理のレシピを写しつつ調理を手伝ってくれる様になったし。自分の仕事と言うだけあって中々の腕前だから一緒に暮らしている皆も感心している。ヒトにここまでやらせられるのか、と退治屋達も伯爵への視線が変わったか。

「最初は無害認定されてねえってので警戒したもんだが」

「伯爵様はとてもご立派な方ですよ。確かに無害認定こそされていませんが、我が国の陛下より人権をお与え頂いている方です。領民からも慕われておりますし、真祖を纏め我が国から守って下さってもいるのです」

「ワーオ。それで情報網の元締めか」

 情報網の元締めをしているのは、私も含め討伐対象ではあるものの無害な吸血鬼を守ったり抑えたりしているからだ。ヒトの血を吸わなくても生きられる方法を教えたりもしているらしい。主に家畜を仕入れて家畜の血を吸う様に促している。

 退治屋とは接点が無いが、伯爵の事を銀狼達が知らないと言うのはそういう事からも来ているな。

 領地を持っているだけあって面倒見も良く、少年や小娘の事を気に掛けてくれても居る。

「蠱毒の一族の者だったか。姫の下に居るとなると廃業でもしたか?」

「はいです。実家も先生のおかげで廃業したですし、今はアーティファクトを勉強中なのです」

「その方が良いだろう。蠱毒ではライカンスロープを相手にする他仕事が無いからな」

 子供は未来を作る存在とも考えているらしく、子供の面倒見も良い。おかげですっかり順応だ。

「やはり大司教の家の者か。昔来た時にも会っているし、君の家の者の噂は私の耳にも届いている。代々立派な大司教を輩出していると」

「ありがとうございます。先生の下は学ぶ事ばかりで」

「然もありなん。吸血鬼でなければ是非我が領地にと誘っていただろう」

 少年の家の事も知っている。前に来た時に当時の代の者が居たから事情を話しているし、聖水の販売で世界中に名を知らしめているしな。あの教会だけ殆ど世襲制で大司教が決まっていると言うのも有名だ。それだけで立派な者が揃っていると解るし。

「凄くまともなヒトですにゃ。それでも無害認定はされないのですかにゃ?」

「血を糧にしている以上はどうしても無害認定にならんよ。それでも人権を与えられていると言う時点でまともと解る。人権を与えられている吸血鬼は私と伯爵以外に居ないはずだ。国に貢献していなければまず与えられん」

 一帯のヒト達もすっかり順応し、農法などの視察にも快く承諾してくれている。伯爵の質問にも詳しく答えているしな。領民の為とあらば真剣になるのも大きいだろう。

「いやはや、驚いた。この値段が国中でとなれば民の暮らしが相当楽になるだろうな」

「ええ。既に製水機を望む声が高まっていますよ。この工場が国中に置かれれば、様々なアーティファクトが一般市民の手に届きやすくなります」

「素晴らしい。これも欲しいな……」

「これの設計図も販売予定ですが、お持ちになりますか?」

「うお。是非とも頼む。我が国の陛下に上申させてくれ」

 伯爵の国は結構遠く、しかも錬金術大国に結構近い。そう言う意味でも技術を欲しがったのだと思う。錬金術大国に対抗出来るとなれば伯爵の地位が黙っていないだろう。吸血鬼からの進言と言っても、この計画を受け入れない様な君主なら未来は無いと言い切れる。

 製水機と魔法肥料が安くなると言うだけで大きい。

「先生、会長! 工場が完成したぜ!」

「でかした!」

「出来たか!」

 そして工場完成。やけに早い。都から応援を送って貰ったのは大正解だ。早速研究所の抽出機材を分解して工場に移動。出来た工場は設計図通り立派なものだった。

「昔からそうだったが、大工も鍛冶士も腕が良い」

「だろう。この機材も都から来た発明家とここの鍛冶士の設計でな」

「うお。そこまでか」

 他の抽出機材も部品の作成が終わっていて、工場内の各所で組み上げが始まった。どれも大型だが国を変える設備達だ。これ等が国中に広まれば大きく変わる。出来上がった物から実験だ。ガガガガ。

「うおお……!」

「よし! 会長、全ての原材料を取り寄せてくれ!」

「手筈は既に整っています! 早速こちらに向かわせましょう!」

「「わああ!」」

 全て成功。本当に良くやった。ここの者が国を変えたぞ。なんと誇らしい事か。

 実験用にと取り寄せておいた原材料が全て薬剤に変わった。速度が段違いだ。

「現段階では国内で生産されている原材料全てをここ一件で賄えると出た」

「凄まじいな。それで生産量を上げている訳か」

「ああ。失業者政策も上申したし、今後はヒト手不足で嬉しい悲鳴を上げる事になるだろうな」

「素晴らしい……」

 本当に素晴らしい。国が変わる瞬間だ。

「皆、よくやった! 皆がこの国を変えたんだ!」

「「うおお!」」




 侍女もかなり頑張っている。レシピを写しながら料理を手伝ってくれているおかげで毎食の支度がかなり楽になっているし、他の事も手伝ってくれる様になっているんだ。

「何かしていないと落ち着かなくて」

「ははは。なら遠慮なく頼もうか。暫くは大所帯だから助かるよ」

 料理だけでもかなり助かる。あれからまた少しずつ退治屋が増えているし。工場が完成した事で家の建築も始まっているが、まだ掛かるからな。

「ここは本当に素晴らしいです。特に食事が美味しいのが良いですね」

「だろう。連中の家を建てる横で観光要素も作り初めていてな」

「え。村に観光要素ですか?」

 都からの応援には引き続き残って貰って家の建築を頼み、一帯の大工はお風呂屋を建てている。村人も加勢して大賑わいだ。

「要するに、温泉地になると?」

「正にそれだ。今年から色々と新しい要素が生まれているが、これが殆ど決め手だな」

 後で伯爵にも話してみるか。井戸頼りの場所に取っては有料でもお風呂に入り放題と言うのは喜ばれるし、観光客を呼べる。

「伯爵の領地もじきに料理が美味しくなるさ。写したレシピを民衆にも見せてやると良い」

「そうさせて頂きます。特にデザートが素晴らしいですね。アイスクリームには本当に感動しました」

 アイスクリームは強し。やはり贅沢品を普通に食べられると言うのは武器になる。とにかくアーティファクト様様だ。フラッペ製造機の設計図も渡してやるか。製氷機も複数持たせよう。

「それにしても、よく真祖に仕える気になったな」

「路頭に迷っていた私を拾って下さった恩人ですから」

「成る程な。それだけ働けるなら伯爵も助かるだろう。当面は研究で籠もると思うし、支えてやると良い」

「はい!」

 恩義を感じているのなら納得だ。これなら伯爵も助かるだろう。特に身嗜みは吸血鬼にとって難しい事だからなあ。

「先生。お客様なのです」

「む。今行く」

 また客か。新しく退治屋が来たかな? そろそろ部屋が一杯になるのだが……。

「お初にお目に掛かります。貴女が姫様ですね?」

「む。その呼び方で私を呼ぶとなると君も真祖か」

 おいおい。また真祖の来客か。初対面の女真祖。どうなっているんだ。

「はい。その、お邪魔しても宜しいでしょうか」

「っと、許可が必要か。害を成さないのであれば構わんぞ」

「勿論ですとも。お邪魔致します」

 小娘に伯爵を呼んで来させよう。私を姫と呼ぶなら情報網に参加している真祖のはず。

「おお? どうした」

「お久しぶりです、伯爵様。風の噂でこちらに来ていると聞きまして、お邪魔させて頂きました。この度は大変な事となり、心よりお悔やみ申し上げます」

「忝い」

 ああ、むしろ伯爵に用が有ったか。そう言う事であれば仕方ないな。お茶を入れるとしようか。良い茶葉を使ってやろう。

「彼女はここの隣国の真祖でな」

「ああ、それでか。隣国にも居たとはな」

「伯爵様の奥方様には色々と便宜を図って頂いておりまして。伯爵様がこちらにお越しと聞いて居ても立っても居られず」

「成る程な」

 私は参加していないからそういう事情は知らん。面倒な物に関わりたくないからと突っぱねている。出来るだけ化け物とは関わりたくない。それが例えまともな者だったとしてもだ。嫌うつもりは無いが、懇意にするつもりも無い。頼られれば助ける程度。

「姫が仇を討ってくれてな。その礼と奴を止められなかった詫びを入れに来たのだ」

「それで。私からも姫様にはお礼を申し上げねばなりません。進行方向から言って、次の対象は私だったでしょうし」

「それには及ばん。見境無く襲っている愚か者ならまだしも、私を狙う真祖は昔から後を絶たんからな」

「ははは。それも無理は無いだろう。姫の力は真祖なら誰もが欲しがる」

「まあ。それだけ強大なのですか?」

 そこまでは聞いていなかったかな? 世界一脆弱な化け物にして世界最強の吸血鬼狩りとは聞いているはずなのだが。ロザリオを出して見せよう。

「な……!」

「姫には十字架も銀も効かん。それどころか聖水もだ。むしろ聖水を作って教会に売っている程でな」

「それは狙われもしますよ」

 面倒だが仕方ない。真祖なら喉から手が出るくらい欲しい力だ。弱点を全て克服出来るのだから。

「その代わり世界一脆弱だ。辞書を二冊持てば腕が悲鳴を上げるし、すぐ貧血で倒れる。満月の夜は強化されるどころか逆に動けなくなるしな。私の体液全てが聖水だから吸血鬼相手には負けんのだが」

「吸血鬼では絶対に勝てん。故に襲うなと通達している」

「そうでしたか……」

 一帯のヒト達に害を及ぼさないのであれば幾らでも襲ってきて構わん。聖水を稼げるし討伐報酬も貰える。確実に服が破けるが、それを取り返す程の収入になるし。

 彼女の為にも私の特性を全て説明しておくか。聖水の作り方もだ。

「え、あの、良く今まで生きて来られましたね……?」

「普通の食事だけで良いらしい。その上で図書館を経営している。無害認定どころか国から重用されるのも納得出来る」

「やけに大きいお屋敷と思っていましたが、図書館でしたか」

 図書館も見せようか。隣国ならここまで来て利用する事も出来るだろう。相手が誰であれ普通に利用するのなら客だ。

「うあ」

「隣国なら借りに来ても構わん。良い暇つぶしになる」

「暇つぶしどころの話ではないと思うがな」

 国の改革に使われるくらいだしな。生活の役には立つと思う。普段何をしているのか解らんが。どんな職業にも対応出来ると自負しよう。

「ううん。もっと早く訪ねていれば良かった。実は姫様にお願いがあって来たのですけど」

「ふむ? 私に出来る事でか?」

「はい。私と戦って頂きたいのです」

「「は?」」




 いやいや、待て待て。どうしてこうなった。

「何も死に急ぐ事は無かろうに」

「いえ。もう疲れたのです。吸血鬼に噛まれて吸血鬼となり、伯爵様の奥方様のおかげで真祖となる事が出来ましたが。これ以上生き長らえ様とはどうしても思えず」

 伯爵からも諭されて夜に外へ出る事となったが。自殺に等しい行動にどうにも納得出来ん。好きで吸血鬼になったのでは無いと言うのも納得したくない理由か。私と同じだものな。

「奥方様がお亡くなりになられたと聞いたのも理由です。恩義に報いる為にもと今日まで生き長らえて来ましたが、それももう」

「うぅむ。私も事故で吸血鬼になった為に気持ちは解らんでも無いのだがな」

「ほう? そうだったのか」

「暴走した馬に跳ねられて飛び込んだ先が吸血鬼になる魔方陣の上だ。元々死病で余命幾ばくも無い身だったから生きられると言う点においては感謝している」

「……相変わらずの不運体質だな。吸血鬼になる前からだったか」

 生きられるだけで充分、と言うのは流石に私だからか。趣味などが無いと長く生きてもつまらないものなのかもしれんな。もう少し説得しようとは思う。

「やはり日陰者として生き続けるのが辛いか?」

「はい。伯爵様や姫様の様にヒトと共存出来るのは稀な事と解って頂けると思います」

「まあな。しかし、参ったな。好きでも無いのに吸血鬼になった者を苦しませて殺すのは気が引ける」

「そのお気持ちは嬉しく思います。ですが……」

 やむを得んか。なら、奥の手を使うとしよう。

 初めて使う手なのだが、苦しませずに殺す手段も一応有る。

「伯爵。私の後ろ、それも三十メートルは離れろ。巻き添えを食らう」

「うお。何をする気だ」

「哀れな子羊への手向けだ。苦しませずに浄化する手段が一つだけ有る」

「なんと!?」

「多大なるご温情に心から感謝致します」

 聖水を掛けるとどうしても苦しませる。愚か者には躊躇せず使うが、今回は別だ。

 ロザリオを外して最終手段を使う。

「このロザリオは私に市民権を与えて下さった大司教猊下自らが祝福を下さった物だ。そして大司教猊下はその際に神の啓示を受けた」

「うお!?」

「その、啓示とは……?」

 見ていれば解るさ。ロザリオを注射器の様に握り、痛覚を遮断し、そのまま私の心臓に突き立てる。

「おい!?」

「何を!?」

 成る程、話は本当だった。私にとって最後にして最強の武器。力が溢れる。こんな感覚は初めてだ。

「私が真逆の性質を持った吸血鬼になったのは、吸血鬼化した時にこのロザリオを着けていたからなんだそうだ。私はただの化け物ではない。神に仕える化け物だ。そして聖遺物となったこのロザリオを心臓に突き刺す事で、本当の力を発揮すると大司教猊下から聞いた」

 だからこそ聖水を作れる。だからこそ魔性の者にとって力の源となる満月で弱る。そうした知識も頭の中に浮かんで来た。成る程、道理で。

「さあ、救済しよう。今の私なら君を安らかな眠りへと誘える」

「はい……!」

 彼女の頭に手を乗せ、大司教猊下から教わった言葉を唱える。

「我が名はミレーヌ、神の使途也。我が名と我等が主の御力を持ち、汝に救済を与えん」

「あ、ああ……! 温かい、光……!」

 私の手を中心に神の光が溢れ出す。この光に触れただけでありとあらゆる悪しきモノが浄化されると聞いた。三十メートルで足りるか解らんが、ゆっくりと広がっていくから伯爵にも下がる余裕があるだろうな。死にたくなかったらちゃんと下がれよ。

「あう……?」

 ……む? 妙だな。まだ浄化されていない。これだけの力ならすぐ消えても不思議ではないのだが。

 いや、待て。これはあれか?

「はは。すまん。どうやら希望に添えないらしい」

「え……?」

「浄化は浄化でも、完全な浄化だ」

 我等が主と大司教猊下に心よりの感謝を。

 単なる浄化じゃない。完全なる救済だ。これは面白い。

 光が収まり、それでも尚彼女は消えずに残っている。

「なん、だと……!?」

「私は、何故……」

 説明の前にロザリオを抜こう。思い切り血が吹き出て彼女に掛かったが、やはり彼女は無事。汚れてしまったのは勘弁しろ。これで確定したのだからな。

「ひ、姫、まさか……!」

「ああ。私も驚いているよ。吸血鬼をヒトに戻すなどと聞いた事が無い」

「え!?」

 吸血鬼の呪いだけを消した。ヒトに戻す事が出来た。これでは丸っきり奇跡じゃないか。奇跡を起こしてしまったぞ。なんて事だ。

「本当、ですか……?」

「私の血も聖水だ。それを被っても浄化されないのであれば確定だよ」

「あ、ああ……!」

「奇跡だ……!」

 まったく、我ながら本当に妙な存在になったものだよ。まさかまさかの救済だ。吸血鬼の風上にもおけん。いや、私としてはその方が嬉しいのだけども。

「すまんな。やはり希望に添えなかった」

「いえ……! ありがとうございます……!」

「そう言って貰えると私も気が楽だ。何ならここに引っ越すと良い。私をも受け入れてくれる地だ。元吸血鬼なヒト程度問題無い」

「はい……!」

 丸く収まったと言って良いな。ちゃんと救いのある結末に出来た。

「伯爵。他にもヒトに戻りたがっている吸血鬼が居たらここに寄越せ。救済してやる。伯爵も吸血鬼に飽きたら来い」

「ああ! そうさせて貰おう!」

「ここに住まわせればこことしても助かるしな。私に動じない奴は貴重だ」

 そしてヒト手を増やす方法にもなる。もっと早く試していれば良かった。っと。


 トサッ。


「おい、姫!?」

「どうなされたのです!?」

 へたり込んでしまった。これは仕方ない。

「貧血だ。元から起こしやすい身だが、血を流しすぎたからな。少し待てば元に戻る」

「……難儀な体なのは変わらずか」

「あう。申し訳ありません」

「いや、良いさ。ヒト助けが出来たのだから」

 こう言うオチは要らんといつも言っているだろうに。最後まで格好付けさせて欲しいものだ。




 彼女の救済は意外な事に私にも良い事があった。

「先生、です……?」

「あー、おう。何か若返ってしまった」

「なんでですかー!?」

 少し若返ってしまった。服のサイズが少し合わない。誰かを救済すると若返るらしい。起きたら手の大きさが変わっていて驚いたし、一緒に寝ていたミリイにも驚かれた。背丈も縮んでいるらしいぞ。

 とにかく小娘に髪型を整えて貰って居間へ。当然皆も驚いた。解る。

「ホワット!?」

「先生なの!?」

「おう。昨夜彼女を救済したろう。あれで若返ったらしい。元々真祖を殺すと歳をとっていたのだが、救済すると若返るらしいぞ」

「「はああ!?」」

 歳をとるのは殺した罰なのかもしれんな。それが償われて若返ったわけだ。

 ……胸が少し小さくなったのは切ないが。

「もしかして、先生。ロザリオを?」

「少年は聞いていたか。あれを使うと吸血鬼をヒトに戻せるらしい」

「凄いですね。それも伝えて行きましょう」

「頼む。こうなると最終的に十二歳の外見になるな。身体能力が適したものになるか」

 心なしか体も軽い。幼女になるまで若返るのであれば、それはそれで楽かもしれん。何とも面白おかしい体じゃないか。でも出来れば胸は小さくならないで欲しい。結構気に入っていたのに。くそ。

「懐かしいな。以前私が訪ねた時に近くなった」

「だな。後で服を新調せねば。皆がどう驚くかも楽しみだぞ」

 転ぶかどうかも確かめないといかん。歳をとる度に転びやすくなっていったし。少しでもマシになると良いのだが。

 ああ、そうだ。すぐ試せるじゃないか。

「銀狼。じゃんけんだ。運が良くなったか確かめたい」

「お、おお。若返っても元のままだと切ねえよな……」

「む。じゃんけん?」

 生まれつき不運だから解らんが。せめて一度は勝ちたい。あ、うん。駄目だ。やはり駄目だった。他の者ともやろう。駄目か。駄目なのだな。

「くそ。こうなると転ぶのも変わらずか」

「ウープス。今度から薄幸の美少女だぜ」

「く、くく……! そこまで酷かったか……!」

 せめて転ぶのだけは何とかしたい。それさえ無くなれば文句を言わない。例えじゃんけんで勝てなくても転ばなければ納得する。

「あ、誰か来たです」

「む。出てくれ」

 そこに客。この時間からとなると診察辺りだろうか。

「先生。診察希望です」

「解った。今行く」

「うお!? 先生なのか!?」

 よし驚いた。このまま練り歩いて皆に挨拶回りだ。伯爵も興味を示したから連れて行こう。それと退治屋達もだな。聖水の作り方を見せてやらないと。

最終回だけ手違いで12時更新となってしまいました。申し訳ありません。


これにて先生の物語は完結となります。

ここまでお付き合い頂き、本当にありがとうございました。

また別の物語を書いて行きますので、宜しければそちらもお付き合い下さい。

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