その先生、買い出し
隣村の家畜を助けてから一週間。都から教会の使者が何人か来てくれた。
聖水が大量に出来たから瓶を送ってくれ、と瓶の数も指定して手紙を送ったからだ。気を回して瓶詰め作業用に人員も送ってくれたらしい。
ああ、いや、それだけではなさそうだな。
「そろそろ私も引退でして。引き継ぎも兼ねようと思いましてな」
「もうそんなに経ったか。時が経つのは早いものだな」
「ええ。初めてお邪魔した日が昨日の様です」
何時も来てくれていた初老の使者が引退。他の使者に引き継がせる為に私と会わせようと言う意図も有った。
若い使者達は初老の使者や上の方から私の話を聞いていた様で、わりと普通にしているな。そこの初老の使者など最初はびくびくしていたし、それを考えると今後も上手くやっていけそうだ。
「え。あの。このバケツ全てが聖水ですか?」
「うむ。だから皆にも来て貰ったのだ。しかし、先生。やけに多いですな。流行病でも?」
「「は?」」
「ああ。隣村の家畜がな」
使者には家畜の病気を治した際に生まれた悪いモノを浄化して出来ると説明している。嘘は言っていない。病原菌を浄化したら胃に生まれる訳だし。若い使者にもそう説明して瓶詰め作業を手伝って貰おう。
「えと。先生は獣医なのですか?」
「図書館の館長で、学び舎を開いているから先生と呼ばれていると伺ったのですけど」
「その。吸血鬼だとも……」
聞いていても首を傾げるよな。ワケが解らんだろう。初老の使者も最初はそうだったし。
犬歯を伸ばして見せてからろ過の事を説明しよう。あくまでろ過。まともに吸ったら吐く。ヒトはもう犬歯を突き立てた時点で吐く。
「吸血鬼としては変わり種中の変わり種さ。殆どが普通の吸血鬼の真逆。血は吸えない、貧弱、満月で弱る」
「「え」」
だからこの国の教会からは無害認定。むしろ保護されている程。高品質な聖水の製造機と考えれば保護したくもなるだろう。他にも理由は有るのだがね。
「じゃあ、こんな昼間から動けるのも?」
「いや、それは真祖だからだな」
真祖と言うのは、ヒトから吸血鬼になった吸血鬼の事。吸血鬼に噛まれて吸血鬼になるのが殆どらしいが、私はある理由で吸血鬼になった真祖。
そもそも吸血鬼とは何か。新人使者諸君はどう考えているかね?
「怪力で不死な怪物、ですかね」
「他人の血を吸って同族を増やしたりグールを作ったり。満月になると更に強くなったり」
「日の光や十字架、ニンニクに弱い。銀に触れないのも吸血鬼でしたっけ」
他にも細々とした特徴を持っているが、概ねそんなところだな。それだけ知っていれば教会に属する者としては充分だろう。悪魔祓いや吸血鬼殺しとなると話は別だが。
「真祖となると、弱点がほぼ無くなる。日の光は鬱陶しい程度で普通に昼間も活動出来るし、十字架もニンニクも効果が無い。心臓に杭を打ち込むのと銀に触れないくらいだ」
だから私も昼間から動ける。その点においても変わり種だったりするけども。
「私の場合は更に特殊だ。まず昼間の方が良い。日の光を浴びた方が元気だし、逆に満月の夜は身動きが取れん。血に弱いのは先程言った通り。辞典より重い物は持てないくらい非力だし、貧血で倒れる事もしょっちゅうだ」
「「え」」
とにかく真逆。
とは言え悪い事ばかりでは無い。
「十字架は真祖らしく平気。と言うよりロザリオを常に首に掛けてる。ニンニク料理は好きな方だし、普通の吸血鬼と違って影も有る」
あまり指摘されないが、普通の吸血鬼は影が無いものらしい。私はちゃんと有る。
揺れるから行けないと言われる水場も平気。海も問題ない。ただし泳げない。浮き輪で波に揺られると酔うし、船も酔う。だから実質海を渡れない。風呂に入れるのは不幸中の幸いと言う奴だろう。
「あとコウモリや犬、虫に偉く嫌われる。吸血鬼の使い魔として挙げられる奴は全て敵だ」
虫とコウモリは寄ってこないから逆に助かるんだが犬は駄目だ。吠えられるわ追いかけられるわ噛みつかれるわで近寄れない。一度噛みつくと危険と判断されて逃げるけれども。逆に言えば噛みつかれるまで対処出来ない為、町などを歩く時は護衛が必須。羊の体調管理は常に危機感を覚えるな。放牧犬が怖い。
「えと。本当に吸血鬼なんですか……?」
「ああ。鏡に映せば解る。映らんからな」
ここで初老の使者が手鏡をすっと出した。引き継ぎ時の恒例行事。ここまで話すと必ず新人は私が吸血鬼である事を疑うんだ。鏡に映した方が早い。
ほら、映らない。新人達が本当だったと息を飲んだ。でも無害だから安心しろ。
「そんな訳だ。諸君等には今後教会と私を繋ぐ役を引き受けて貰う。と言っても基本的に今回の様な雑用ばかりだがな。聖水の受け取りや発注した図書館の本や教会で回収して呪われた品の運搬」
「「はい」」
物を遣り取りするだけの簡単な仕事。相手が私と言う点だけが問題で、慣れれば全く問題無い。
では、初仕事として大量の瓶詰めを頑張って貰おうじゃないか。
何も無い日は一日の殆どを図書館で過ごすが、毎週日曜日だけは図書館で過ごしながらもやる事が有る。
「せんせー! 出来たー!」
「私もー!」
「うん。じゃあ、持っておいで」
「「はーい!」」
日曜日が授業の日。近辺から子供達が集まって読み書きや計算を学んで行く。
最初は一文字ずつ教えたり一桁の計算。
一日の授業内容は文字、計算、そしてその日やった事の試験。今期は始まったばかりだからまだまだ簡単な内容だな。
そして今日は少し特別。
「丁度良い時期だったな。今からなら宿題を少し頑張るだけで間に合う」
「良かった」
隣村の新参者な酪農家が子供を連れて見学に来ている。子供が居たらしい。
隣村の騒動を片付けて帰る間際に見学させて欲しいと言われていたんだ。
私に慣れたのなら断る理由が無い。
「よし。皆満点だ」
「「やったー!」」
出来るだけ満点が取れる様に教えていくのが私の主義。子供は褒めて伸ばすべし。この近辺は村ばかりだから読み書きと簡単な計算が出来れば充分でもあるし、普通は学校なんて無い様な場所。
学費もかなり安い上に余所者以外は通ってるから子供が出来たら必ず寄越す。
「待ってろ。今おやつを用意してくる」
「「うん!」」
焼き菓子を用意するのも何時もの事。朝の内に後は焼くだけの状態まで用意しておいて、昼食中に焼いてお茶と一緒に持って行くのもいつもの風景だ。見学しに来た二人の分も用意してある。
焼けるまでは友達同士の楽しい時間。
遊んで待てる様に一文字ずつ沢山用意した言葉パズルで遊ばせてる。楽しみながら学ばせるのもまた私の主義だ。
「お待たせ」
「「わーい!」」
どうやら今日も遊んでくれて居た様だ。それも新しい友達も誘って。そう言う事も大事。
子供の方は遊ばせ、私は親に説明しよう。
「先日話した通り、学費は一日果物一つ。何でも構わない。イチゴでもリンゴでも一つで良い」
「イチゴでも!?」
「ああ。不作の時でも学べる様にな」
大抵大きめの果物を持ってきてくれるが重さや大きさは問わない。夕食のデザートになれば充分だからな。
ブドウ一粒はちょっと遠慮して欲しいけども。その場合だって何も言わない。
必要なのは筆記具とノートだけ。
今日まで教えた事の試験用紙も渡せば説明は終了だ。
「一日四時間の一年制。読み書きと計算、そしておさらいとして試験の一時間ずつ授業をして昼食。だからそれに合わせて送り迎えをして欲しい。学費も迎えに来てくれた時に受け取ってる。収穫の時期などの忙しい時は連れて来る時に言ってくれれば預かりもしている」
「解りました。息子を宜しくお願いします」
絵本や百科事典も仕入れているから退屈はしないはず。農家が殆どだから種まきや収穫の時期は託児所にもなる。
読み書きの練習になるし簡単な絵本ばかりだから帰る時に借りていく子も多い。絵本は無料だから安心して欲しい。
最初の内は私が読む事も多いな。
「しかし、立派な図書館ですね」
「始めてから長いしな。殆どが専門書の類だから借りに来る者は少ない」
「専門書?」
「小説なども集めてはいるが、知識を増やすのが趣味でな。様々な分野での専門書を集めている」
村ではまず必要が無い本ばかりなせいで利用者が少ない。借りられるとすれば基礎的な産業の専門書だろうか。彼には畜産関連の専門書を見せてみよう。
これは家業を継ごうと言う時期に借りられやすい本の一冊だ。
「これを、借りられると……?」
「ああ。一週間で銅貨三枚だ」
「安くありませんか!?」
貸し出し量は一週間で銅貨三枚。延滞料金は一日につき銅貨一枚。専門書となると高価だからまず期間内に返してくれるな。写本してから後でゆっくり読むヒトばかり。写本する事に意義があるから継がせても借りに来る。
「後は、そうだな。農耕の専門書辺りか」
「それでこの辺りの作物は良質なのですか」
稼ぎになる専門書を優先している。材料の種なんかを他所から仕入れて育ってから借りに来る場合も時々有る。だから私も新しく稼ぎになりそうな本を見付けたら仕入れる様にしているんだ。
長生きなのが幸いして、高価な専門書でも長期的に考えて黒字になれば良いと思ってるのが安い理由だな。
良い機会だから利用に必要な図書カードを発行して行くと良いぞ。
教会から金を振り込んだと言う手紙が届いた。
聖水を全部買い取って貰えたんでかなりの額。とても助かる。ただし問題も有る。
振り込み先は教会が有る都だ。本の仕入れ先が都だから私からそう指定したとは言え、都まで行かなければならない。
まだ金に余裕が有ると言っても本を仕入れる機会だし、欲しい物も出来た。行こう。その為の準備もする。村に下りるのだ。
……下りるのだが。
「うぅむ」
また貧血で倒れた。今回も上手く後ろから倒れられたぞ。
ああ、今日も良い陽気だな。このまま寝てしまいたいくらいの陽気だ。いっそ寝てしまうか。金は逃げない。余裕も有る。
これだから都に行くのは大変なんだ。早く落ち着くと良いんだが。
「先生、またかよ」
おおお?
「まただ。今日はどうした?」
先日診察しに行った牧場の男が通り掛かってくれた。
ここはウチにしか通じていない道の途中だから私に用が有るのだろう。
「いや、ほら。この前教会から何人か来てたろ。先生ならそろそろ都に行くと思ってさ」
おおう。気が利くじゃないか。
誰かに送って貰う様に頼むのが準備だったんだが、向こうから申し出てくれるとは。
「そのつもりで誰かに頼もうと村に行くところだったんだ」
「そいつは丁度良い。荷馬車取ってくるから待っててくれよ」
そうしよう。
って、おい。ちょっと待て。待ってくれ。
私をこのまま置いていくつもりか? うあ、置いていくつもりだ。そして置いていかれた。くそ、せめて起こせ。道端で座らせるくらいしろ。
幾ら簡単に倒れるからと言っても扱いが酷すぎやしないか?
酷いのだか優しいのだか良く解らん。
持ってきてくれた荷馬車には病人を他所の病院まで運ぶための寝台が載せてあり、毛布や枕もついて寝ながら都まで乗せて貰えた。それも酔わない様にゆっくりとだ。
まあ、都に近付くにつれて元気になるのだが。都に到着する頃には快調そのもの。
「もう大丈夫の様だな」
「ああ、助かった。村から出るとヒト並の体力になるんだ」
「は? そうなのか?」
これも私の特性で、やはり普通の吸血鬼とは真逆になる。
「故郷の土の上では衰弱するんだ。普通は故郷の土を敷いた棺桶の中で眠らないと弱るらしいんだがな。私の場合は長い間離れても衰弱するクセに離れた方がヒト並になる」
「また偉く大変そうな話だなそれ」
私も常々そう思うよ。
特に家の側、私が生まれた場所の周辺が一番弱る。だから貧血で倒れやすい。家の中はまだマシと言うのだからますます謎。
ちなみに普通の吸血鬼と違って棺桶で寝なくても良い。と言うか家の中で土の上だとすぐ吐くんで土間すら無い。意味不明。
さて、先ずは銀行だ。生活費と買い出し用の予算を下ろそう。今回はかなり多め。
銀行には私の事をちゃんと伝えて貰っているから恐がられたりはしない。教会からも口利きを貰っているしな。
「待たせた。最初は馬具屋に行ってくれ」
「あれ。馬を飼うのか?」
「いや。隣村の家畜を診に行った時、新しい荷馬車で迎えに来てくれたんだ。乗り心地が良かったから見てみようかと思ってな」
「へえ? そいつは俺も気になるな」
やっぱりあの荷馬車を買おうと思う。帰りはゆっくり乗せて貰えて、あまりの乗り心地の良さに感動した程だ。
都の馬具屋は初めて行くから衛兵に道を尋ねてから向かう。程なく到着。
「うお。何だあの荷馬車」
「何でも車輪にバネが付いているらしい。殆ど揺れないんだ」
「凄えな。値段次第じゃ俺も欲しい」
値段も聞いたが普通の荷馬車の倍値くらいらしいな。倍値でもあの乗り心地なら買える。
ああ、うん、買える買える。
……おお?
「おじさん。こっちの荷馬車は何が違うんだ?」
横に同じ形の荷馬車が並んでいた。ただし値段は普通の荷馬車の三倍。見た目的には違いが解らん。
「ああ、それかい。新型より良い部品を使っていてね。これまでの馬車やそっちの新型よりずっと長持ちするんだよ」
「え、マジ? どれくらい変わる?」
「長期的に考えるとこれまでの馬車を買い替えて行くよりずっと安いよ。車輪の軸受が殆ど磨耗しないんだ。そうだね、多分これまでの馬車の十台分はもつかな。そっちの新型でも五台分はもつんだけど」
なんと。そんなに長持ちするのか。技術の進歩万歳だな。
「十台分はデカいな。とは言え三倍か」
「なんなら貸すぞ。送ってくれた礼だ」
「うお。貸してくれ。帰れば返せる」
よし、二台買おう。
御者も用意して貰えるらしいから、荷馬車の分だけ支払って馬は御者に乗って帰って貰う。
馬は世話が面倒だし、何より世話をしている時に倒れそうだから買わない。まず倒れる。倒れている間に踏まれる可能性も有る。
そして会計。良い買い物だった。と、そこで面白い物を発見。
「ああ、それかい?この新型馬車を開発した職人が考えた乗り物さ。自転車と言うのだけどね。自分で漕いで進むんだ」
「ほほう」
人力の乗り物か。
椅子に車輪が着いていて、前に一輪、後ろに二輪。座席の下に着いている不思議な形の鐙を回転させて動かすらしい。
試乗させて貰える様なので試させて貰う。
「お。おおお。良いな。これは良い」
「面白えもんが出来たなー。それなら貧血で倒れる心配も無くなるんじゃねえか?」
椅子に座りながら進めるから倒れずに済む。よし、これも買おう。普通の荷馬車一台分と結構な値段だが、これも良い買い物だ。
後ろの二輪の間に籠が着いているのも好印象。買い出しにも行ける。技術の進歩万歳。
上機嫌になったところで次はガラス屋。ここでも私の事を伝えて貰っている。聖水用の瓶を扱っているからだ。
「おお、先生。そろそろいらっしゃると思っていましたよ」
「先日は助かった。かなりの量だったし、大変だったろう」
「いえいえ。買って頂ける訳ですから幾らでも用意しますとも」
教会お抱えの店でもある。先日の瓶詰め作業で持ってきて貰った瓶もここのだ。
あそこまで大量に作るのは滅多に無いから、普段は私が購入して確保している。今回も三十本程購入だ。早速新しい荷馬車に積み込んで、割れないかどうか確かめよう。
「うお。マジで良いな。瓶の音が殆どしねえ」
「でしょう。おかげで倍値でも良く出てくれるんですよ」
やはり良い荷馬車だ。割れ物でも安心出来る。御者が得意顔をするだけの事は有る。
更に上機嫌になりながら、最後の目的地となる書店に到着。今日は買い込むぞ。
「あ、先生! いらっしゃいませ!」
「やあ。大金が入ったし荷馬車も買ったから沢山買わせて貰うよ」
「うわ、ありがとうございます!」
この都で一番の書店。老舗だし広いからいつもここで買うし、手紙での発注も受け付けてくれるからここも私の事を伝えてくれている。
女性店員や連れてきてくれた彼に荷物持ちを頼み、真っ先に向かうのは専門書の売り場だ。
「うお。豊作だ」
「えへへ。先生ならと思って良さそうなのを取り寄せてみたんです」
「ありがたい。おい、これを見ろ。乳製品の専門書だ」
「マジで!? チーズとかか!?」
かなり頑張ってくれたらしい。
稼げそうな内容の専門書がかなり有った。
っと、おお?
「酒造法だと?」
「そうなんです! 隣国の学者さんがお酒の造り方を研究してたらしくて!」
「酒の造り方も有るのかよ!」
酒造法の専門書は初めて見たな。これも買う。
近辺では酒が造られていない。他所から仕入れるだけだから贅沢品だ。
こうなると必要な物が有る。
「すまない。最新版の法典を頼む。現在の酒造関連法を確かめないと」
「すぐお持ちします!」
近辺で酒造となれば国に届け出をする為の知識も必要。この国の法を確かめないと。滅多に使わないから前に買ってから随分経つ。
念の為に酒造の専門書の目次を見よう。
「お。凄いな。これは相当だぞ」
「うおお……! え、これも借りられる訳か?」
「暫くは通って貰って書き写させる形だな。各村から村長やヒトを集めて酒の種類を分担した方が良いだろう」
「ありがてえ……!」
分厚いだけあって種類が豊富。酒造に必要な物のページまで有る。これは近辺がかなり潤うな。
「お待たせしました!」
「ありがとう」
法典も来た。さて、他には。
「大分無理をさせてしまった様だな。今回の品揃えは凄い」
「そうでも無いですよ。実は良心的な行商人と繋がりを持てまして」
図書館に無い種類の専門書ばかり。これで無理をしていないのは驚きだ。村興しが楽に出来るくらいの品揃えなのに。
「待て待て待て。これは本物か?」
「ふっふっふー。錬金術協会のお墨付きですっ」
「買う。欲しい」
凄い専門書が有った。これは絶対に買う。
「錬金術の本か?」
「アーティファクトの専門書だ」
「マジで!? 作れる様になるって事か!?」
「初歩的な物だけだそうですけどね」
魔法の道具、アーティファクト。
知識と薬剤が有れば出来る錬金術に加え、希少な魔法使いの素質を持った者でなければ作れない高級品なんだが。
錬金術師が薬剤や情報を入手する為に加盟する錬金術協会のお墨付きとなれば本物間違い無し。
「先生ならお作りになられるんじゃないかと思って錬金術協会に掛け合いましたっ」
「うあ。すまない。それこそ大変だったろうに」
「それが、そうでも無かったんです。魔法使いって希少じゃないですか。だから作れるものなら作ってみろって感じで」
ははぁ、そう言う事か。なら確実だ。
店員の予想通り私なら作れる。はず。吸血鬼なだけあって魔法使いの素質、魔力を持っているからな。一応魔法は使える。魔道書も図書館に有る。魔法によっては村の近辺で使うと吐くが。魔法より消費が強く無ければ作れるだろう。
しかし豊作だな。図書館に無い分野の専門書ばかりだぞ。無い分野は片っ端から買おう。
「染め物の専門書も有るじゃないか」
「染め物?」
「糸や布に色を付けるんだ。赤い毛糸とか」
これも買おう。羊を飼ってる村に必要だ。
それにしても多い。本当に豊作だぞ。
「そんなに買って大丈夫ですか?」
「大丈夫。かなり稼げたんだ」
まだ余裕が有るな。次は小説や絵本だ。私の趣味や子供達が好きそうな物を選ぶ。
「そんなに買って大丈夫か?」
「金なら問題無いと言ったろう」
「そうじゃねえって。整理しきれるかって話」
ああ、それか。
そっちも問題無い。どうせ暇だ。ゆっくりやれるし、大変なのは確かだが本に関係した事なら楽しいから気にならんよ。
読んでから本棚に入れるので一冊ずつだしな。
「お買い上げありがとうございます!」
「また頼む。良い買い物だった」
「任せて下さい!」
後は彼や御者に食事を奢って帰ろう。
ここまで上機嫌な買い出しは久しぶりだ。




