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第七話 初戦闘

 ぐるぐると回る渦潮のなかにいる。黒い渦潮は音もなく、ゆっくりと俺を飲み込もうとしている。あがいてもまとわりつくねばつく黒い水が、やがて俺の顔まで飲み込んで……。


『提督! 起きてください! 提督!』

 

 警告音がしている。これは……艦がゆっくりと周っている、のか? 目を開けると、見慣れない部屋でベッドの上だ。夜? ここは……? 俺は……やはり、昨日のことは、夢じゃなかったのか……。 

 それよりも、敵襲だと!?


「すまん、状況を教えてくれ!」

『申し訳ありません、巨大な魔物に取り付かれました! 現在ランスロットとイオが甲板で応戦中です!』

「! わかった、すぐに行く!」

『甲板は危険です! 提督は指揮所にお越し下さい』

「……ああ」


 俺は戦えない。その力がない。彼らだけ戦わせることになるなんて。ゲームでなら、俺だって戦えていたのに。拳を握り締めたままエレベータに乗り込んだ。



「被害はどうなっている?」

「はい。船体に被害はありません。体当たりをうけた後、巨大な食腕のようなものが船体に叩き付けられ、そのまま巻き付けられました。現在艦の舵をきりながらランスロットとイオが攻撃し、魔物を引きはがそうと試みています。現在の速度三十。面舵二十で旋回中です」

「なら、舵とスクリューは無事か」


 正面のモニターでは、甲板に巨大な触手が複数本まきついている。叩き付けようとする食腕にはイオが火魔法で牽制しているが、巻き付いた触手に対応するランスロットは、数が多い上に触手が太いために苦戦しているようだ。


「オフィサー、船体の防護シェルの耐久はどれくらい減った?」

『ダメージはごく微量です』

「……そうか、それならひとまずこの魔物に艦が沈められることはなさそうだな」

「はい。……深海から急速に浮上してきたようで、ソナーに映ってからでは回避しきれませんでした。申し訳ありません」

「艦は停止してたんだろう? ニーナが悪いわけじゃないさ、そう落ち込むな」


 ゲームのときですら船は機敏に動かせるものではなかった。まして実際に波や風の抵抗を受ける海で動こうとすれば、艦の動きが鈍いのも当然といえる。


「出力はどうだ? 力負けして海に引きずり込まれる恐れはあるか?」

『パワーではこちらがはるかに上回っています』

「魔物の触手に吸盤がついているようです。そのため喫水下から絡みつかれたような状態でして、振り切ることが出来ません」

「暗くてよくわからないがでかいイカみたいなものか……?」

「提督、いかがなさいますか?」

「うーん……キッカ、弾薬はどうなっていた?」

「弾薬庫は空でした~」

「やはり、弾薬だけ都合よく残っているなんてことは……ん? 各種兵装に装填されてはいることになってるぞ? オフィサー! 艦の武装は使用可能か!?」

『可能です。ただし一部砲扉が外部から押さえ込まれて使用不能です』

「よくわからんが少しでも武装が使えるならなんとかなる、か……?」


 正面に浮かぶ現在の状況を模したホログラムを見ながら考える。敵は単独、右舷から絡みつかれて砲は使用不可。だとしたら取れる手は。


「右舷爆雷用意。起爆深度……三十」

『アイサー』

「イオ! ランス! 爆雷を使う、船内に退避しろ」

『了解!』『あいよっ置き土産だ、喰らえっ』

「微速前進。二人の退避完了後に爆雷を投下する」

『微速前進、アイ』

「右舷に爆雷を投下と同時に舵戻し。起爆と同時に取り舵いっぱい(三十度)。速度二十。左舷アッパーデッキ(上砲列甲板。三段あるうちの一番上の砲列)の船尾側の砲を五つだけ発射用意。照準あわせ。発射タイミングはこちらの指示を待て」

『アイサー。……操艦予約入力完了』


 復唱の代わりに艦長デスクのモニタに入力内容と予測進路、大砲の射界が表示された。


「イオ、ランスロット。爆雷の起爆後に甲板に戻って魔法で巻き付いた触手を剥がせるか?」

『まかせなっ』『問題ありません』

「ニーナ、これでどうだろうか?」

「異存ありません」

「こんな形で武装の試射と防御性能の確認をすることになるなんてなあ……。よし、二人が戻ったな。いくぞ……」


「いまだ! 投下! 念のために舵とスクリューに防御フィールドを展開しろ」

『爆雷投下。舵戻し。防御フィールド展開』

「全員何かにつかまれ。対ショック姿勢」

「了解」『了解』


 ホログラム上で爆雷が深度三十に向けて沈んでいく。敵は減速したこちらを仕留めたと思って気を取られているのか、爆雷の着水には反応していない。

 艦長デスクの左右についているセイフティバーを両手でそれぞれ握りこむ。ホログラムを睨みつける。


『起爆まであと……三、二、一』


 ズドン、と艦を持ち上げるような衝撃。大量の気泡が浮かび上がり、艦の左舷からは斜め向こうへ、右舷からは垂直に水柱が高く上がる。衝撃で何本か触手が離れる。甲板に飛び出したイオとランスロットが、前甲板と中部区画に残った力の抜けた二本の食腕をそれぞれの魔法で吹き飛ばした。


『取り舵一杯。速度二十。砲扉開放。発射用意完了。……照準完了』


 敵は爆発の衝撃で気絶したのか、動きを止めていた。降り注ぐ海水の中で、力を失い広がった触手の中心に巨大なイカの胴が浮かんでくる。


「よし、振りほどいたな。まだ撃つなよ。照準は予測できる頭の位置にあわせろ。眼のあいだを狙え。イカの近縁種だとしたらそこが弱点のはずだ」

『アイサー』

「……撃て!」

『左舷二十六番から三十番、発射』


 ゴン、という響きを残して発射された球形弾が斜めに並んで飛翔していく。わずかに収束しながらゆっくりと吸い込まれていく弾丸を見ながら、やっぱり一応帆船のてい・・にしてるから砲弾は丸いままなのかな、なんてどこかのんきなことを考えてしまっていた。


『命中。……敵魔力の拡散を確認、活動停止しました』


 指令所が屋内であるために弾着の音は聞こえなかった。まだ降り注いでいる海水によって視界が悪いために命中したかどうかよく見えなかったが、ちゃんと命中はしていたらしい。見れば少し赤みがかっていた巨大イカの体が白く濁っている。図らずもイカの活け絞めっぽくなったな……。


「キッカ、一応ソナーとモニターで敵の監視を頼む。周囲に同じような魔物がこないかどうかにも注意してくれ」

「は~い」


「舵戻せ。極微速前進。損害報告」

『アイサー。舵戻し、極微速前進……船体に損害なし』

「……ふぅ~~。終わった、のかな?」

「お疲れ様です。提督、お見事でした」


 気が抜けて艦長席に崩れ落ちる。なんとか、うまくいった。


『てーとく~……』

「イオ、どうした!? 怪我したのか!?」


 弱った声音に焦る。俺の指示のせいで負傷させてしまったのか!?

 切り替わったモニタに映ったイオとランスロットは……ずぶ濡れだった。


『しょっぱいよ~』

『小官は無傷であります。……報告に伺う前に、シャワーを使用してもよろしいでしょうか?』

「……はは。ああ、もちろん許可するとも。二人ともお疲れ様。よくやってくれた!」


 ねぎらうと二人はいい笑顔で敬礼してくれた。ほんと君たち、格好いいな。俺にはもったいない従者だよ。

 

『提督、損害を発見しました』

「なんだって? どこだ?」

『ゴメス船員が船員室で気絶しております』

「……あ。ゴメスのこと忘れてた」

戦闘シーンは難しい……。掛け声とか復唱、命令の種類についてはゲームでの音声入力に個人差があるものとしてください。

敬礼はゲーム時代から無帽でも挙手の敬礼モーションです。ということに(ry

そのうち手を入れるかもしれません。

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