丑三つ時の赤ポストに通う君へ。
曲がり角、曲がった端の家が君の家。帰り道に何度も通るこの通りは僕等の愛を紡いだ通学路。
そして俺が死んだ赤ポスト前だ。
彼女を助けて俺は死んで彼女が生きた。それだけで俺は幸せだ。心残りがあって、あの交通事故以来、地縛霊として赤ポストの横にずっといる…
「彼女また来ちゃうよなぁ…」
未練とか早く消えなきゃいけなくて俺が居たら彼女は前に進めないし、彼女の幸せを考えたら早く成仏した方いいんだろう
スタスタスタ
『ねぇ、いる?』
ほら、来ちゃった。
「いるよ」
どうして来たの?とか、もう来ちゃダメとか突き放してもいいけど、俺も未練あるのかな…っていうか未練しかないか。彼女が心配なのもあるけど、会いたくてしょうがなくて…どうにもならない気持ちを抑えて、笑わなきゃって
『今日も来ちゃった』
そうだね…
好き過ぎて…離れたくなくて…嗚呼、突き放さなきゃ
「おかえり」
突き放す言葉より先に出た迎える声
『ただいま』
嬉しそうでなにより。彼女も抱える気持ちがあって俺にもある。けれど、隠さないと涙が滲んで、君に笑えないから
「……」
『今日はね、お母さんと買い物行ってきたんだ』
「怪我しなかった?」
『大丈夫だよ』
「ほんとに?」
『心配しすぎだよ?』
「そりゃ心配だよ、君の彼氏なんだから」
『えへへ、ありがとっ』
死んだ俺と話して笑顔を見せる君、愛おしくて触れたくて…嗚呼神様ってお願いしても、まぁ無理だろう
「学校は?」
『んー、みんな元気だよ』
「君は?」
『早く死にたい』
「だーめ。」
『やだ』
「こっち来ちゃダメ」
「死んだら貴方にまた触れられるでしょ?」
「それでもダメなものはダメだよ」
君は自分をよく責める。俺の事で悩まなくたっていいのに、君は自分のせいで俺が死んだとかそういうの思ってんだろうなぁ…責めなくていいのに。
「また自分責めてるでしょ」
『なんでわかるの…』
君のことなら何でもお見通しだよ。
「泣き虫さん、あんま泣かないでくれよ。俺の分まで生きて?」
君が泣いたら俺…
『あ、今日ね、テスト100点取ったよ!』
!?…少し驚いたけど、俺が君でも君みたく話変えるよ…つらいもんな…
「はぁ…話逸らしたな」
『まぁいいから♪』
隠し事なんてありませんよって顔に貼っつけたような笑い方して吐き出したい悲しみを口にチャックして話を変える君に今日も乗ってやろう
「…で、テストがどうしたって?」
「あのね…」
…いつか、いつかは君に会えなくなって無になったら君は幸せに生きてくれるかな。生きてくれるなら早く成仏しなきゃなって言いたいけれど、君が好きでさ…血が通って君に触れられた時と今も変わらず君を愛してて、毎日会いたくて君の表情みて君の声聞いて「大好き」とか言いたくて……
『ん?』
ん?じゃないよ…その顔も華奢な体も触れて愛して好きって伝えたかったなぁ…なんて後悔しかないけどね、今だって伝えたいこと伝えられる声はあるから。
「愛してる」
サヨナラするのがいつか分からないから言いたい事言っておこう。誰しもいつかは大切な人に会えなくなるのだから。
……神様なんて居なくて叶わない願いを夜空に、ぽつりと呟いても君に触れる事は叶わなくて…何が言いたいかって言われたら
「君の隣にずっと居たい」