表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
1/5

序章

 美しい声が聞こえた。

 その声が己を呼んでいる。

 薄闇の中、そっと手を伸ばすと、柔らかな乙女の頬に触れた。

 思わず、抱きしめた。

 と。

 簡雍(かんよう)憲和(けんわ)の頬に、弾けるような痛みが奔った。

「そんなにおなごの肌が恋しいのなら、妻を(めと)ったら良いでしょう?」

 美しい声と、激しい痛みの元が言う。

 大あくびをした簡雍の、霞んだ目に、ぼんやりと、若い官吏の姿が映った。

阿花(あか)、お前さんが嫁いできてくれるって言うんなら、考えてやってもいいがね」

「阿花と呼ぶのは、やめてください。大体、私に『寧国(ねいこく)』という(あざな)をくれたのは、叔父上でしょう?」

 背が高く、華奢で、童顔の頬に新しい刀傷が痛々しく残る若者が、ため息を吐いた。

「子供扱いしなければ、嫁にきてくれるかね?」

 無精ひげの中に埋没した口元に、にやけた笑いを浮かべる簡雍に、若い官吏……の衣服を着た()が、ぴしゃりと、

「父上に聞いてください」

「ちっ。雲長(うんちょう)兄ぃが愛義娘(まなむすめ)を俺なんぞに()()()はずがねぇ」

 簡雍は大きく伸びをして、寝台から起き上がった。

「伯父上……いや、主公(との)がお呼びです。軍議が始まりますよ」

 王索(おうさく)寧国はにっこりと笑った。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ