文芸部と仕事部(8)
月曜日、登校してみるとどこか校内がざわついていた。
教室に入ると弥生がやってきた。
「ネットの掲示板見た?」
と、言う。
学校内でネットの掲示板といえば、この学校についての噂話があることないこと書き流されている掲示板のことである。芽衣子も入学した当初、眺めることがあったが、最近は見ていなかった。
「見てないわ。何かしたの?」
「写真が二枚流れているのよ。一つは私だけど、もう一つは私じゃないわね」
芽衣子はスマートフォンを取り出して、掲示板にアクセスしてみた。確かに活況のようだ。スレッドの流れが速い。『例の写真2』という一番先頭のスレッドを開いてみた。トップに、ラフなシャツを着た黒ぶちメガネの男性が女性を抱き寄せてたばこを吸っている写真が表示される。男性は黒木だ。女性の方は知らない顔である。
「どうしたの、これ?」
芽衣子の問いに弥生が声をひそめて答えた。
「ネットの友達に『幽霊詩人の会』の話を流したら、すぐにメンバーが特定されてね。そこから検索を重ねてたら芋づる式にいろいろ出てきたのよ」
「すごいわね。どうやったらこんなに早くこんなものを見つけるの?」
「私じゃないわ。そういうのも含めて、お友達にお願いしたのよ」
「一体、どういう友達なの?」
「内緒よ」
芽衣子は自分の提案した同盟でありながら、すごい人間を味方につけてしまったと感心した。
「もう一つはこっちよ」
弥生が芽衣子のスマホの画面上を指さす。『こいつは首だろ(4)』というスレッドだ。開くとグレーのジャケットの男性とこの学校の制服を着た女子が並んで車に乗っている写真がトップに置かれている。女子の顔には丁寧にモザイクがかけられていてわからないが、男性の顔ははっきりとわかる。竹中だった。
あの日、芽衣子が撮影した写真である。
「あら、まあ」
「この写真は日曜日の夕方からいくつかのメッセージグループに出回っていたみたいなの。それを誰かが拾ってこっちに置いたみたいだけど。竹中、危ないんじゃない?」
「でしょうねえ」
芽衣子はどういう顔をしたものか迷って、ちょっと困った顔をつくってみせた。
「ま、これで芽衣子の困難は解決ね。そのうち私の相談にも乗ってもらうわよ」
「わかってるわ」
弥生は席に戻って行った。芽衣子も自分の席につく。
隣の席の郁奈が声をひそめて話しかけてきた。
「ね、知ってる? 竹中先生が大変なことになってるのよ」
「あら、そうなの?」
芽衣子は素知らぬふりで応対した。




