取引をする文芸部(2)
昼休みが終わるころになって二人は決心した。芽衣子は空の弁当箱を持って、都を伴って自分のクラスに戻った。弥生は席に座って授業の準備をしていた。
「弥生。あなたの取り引き受けるわ」
「その言葉を待っていたわ」
芽衣子の言葉に弥生は少し首をかしげて嬉しそうに笑った。きっと老女になったとき魔女の役が似合うだろうと、芽衣子は感じた。
「その代わり、一週間だけの部員をもう二人なんとかならないかしら?」
「そうすれば、心おきなく仕事ができるんよ」
「後二人ねえ。部員になったりやめたりって面倒だからなあ。私はうまくやる自信があるけども」
弥生が考え込むのを見て都がつけくわえる。
「卒業するまで部員でもかまわないんよ。別に何か仕事をさせたりしないから」
「それだと取り引きにならないわ」
芽衣子は弥生のそっけない返答にため息をついた。
「もしかして、この先もうちの部がピンチになるたびに取り引きを持ちかけるつもり?」
弥生は首を振った。
「それはわからないけど、フリーハンドを持っておくのって大事じゃない? 将来他の部との取り引きが必要になることも考えられるし」
「それで、後二人なんとかなりそう?」
都は弥生の計算高い言葉に驚いた様子もなく先を促した。都も弥生の考えに同意ということなのだろう。見た目も性格も異なるが、この二人、どこか似ているのかもしれない、と芽衣子は思った。
「聞いてみるわ。とりあえず、文芸部さんは放課後、図書室に来てよね」
「わかった。じゃあ、お願いするね」
そこへ、教室に次の授業の教師が入ってきたので、都は自分の教室に戻っていった。芽衣子も席に戻って弁当箱をしまう。
「弥生と何話していたの?」
隣の郁奈が興味深そうに聞いてくる。
「弥生と取り引きをしたのよ」
「えー? 気をつけなよ。とんでもない目に遭うから」
弥生の評判はかなりのものだと芽衣子は苦笑いした。
「大丈夫だと思うけど」
「けど?」
「やっぱり大変なことになるかも」
「やっぱりかあ」
授業の準備をしながら、ハードな週になりそうだと、芽衣子は覚悟を決めた。




