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焔の騎士の想い

 隣の部屋での精霊達の遣り取りを知らない神々は、件の炎光の精霊の事を話し出した。

リシェアオーガの許に暫くいる彼と神々を会わせる手段を話しているのを聞きながら、アーネベルアは、エニアバルグ達がいた部屋で思っていた事を心の中で復唱していた。

人間であった頃、一緒に戦った戦友と言うべき精霊が自分と言う主を失い、戦う意味を見失っている。剣士としての道をも見失っていると思える彼に自分は何が出来るであろうか。

精霊騎士への誘いはしたが、自分としては同じ神に仕えて欲しい。

我儘だと判っているが先程の空の神の言葉を聞くに、彼の実力を発揮出来る場所は自分の神の所だと感じる。

リシェアオーガと言う戦の神の許ならば、彼の実力を考慮しても精霊騎士として成り立つ。加えて、神龍達とも仲が良いとなると余計に誘いたくなる。

しかし、強制は出来無い。

あくまでもレナフレム自身が選ぶ事。

自分はそれを待つしかない。

そんなアーネベルアに気が付いた神々は、彼の方へ視線を向ける。集まった視線にアーネベルアは、思案を中断して顔を上げた。

視線に戸惑う彼へ知の神が声を掛けた。

「べルアは、またフレアムと一緒に戦いたいみたいだね。

でも、何故、彼がリシェアに仕えないか考えた事があるかい?」

投げ掛けられた質問に紅の騎士は即答する。

「恐らく今まで、リシェア様の戦い振りを目にした事が無いのだと思います。

実力を隠したままの右腕を使った訓練での剣技は見ていますが、王宮解放の時やあの忌まわしき者達を葬った時の左腕の剣技は見た事が無いのです。

それ故に、リシェア様の神としての姿が実感出来ないのだと思います。」

返された答えにカーシェイクは頷き、ある提案をした。

「そう言う事だったら、リシェアの左腕の剣技を見せれば良いんだね。

……となると相手はアレィか、レアか、ルシェになるけど…。」

「アレィは邪気が残っていないか確かめている最中だし、レアは情報収集中、ルシェはアレィの援護に当ってるしな………?

べルア、お前、リシェアの相手をしないか?」

クリフラールに言われて驚くアーネベルアと、何か期待を持っている様に嬉しそうなアルベルトがそこにいた。

彼等の様子に、ジェスクは楽しそうに口を挟む。

「それが良い。アルも見たいと顔に書いてあるし、丁度良い。

まあ、べルアの剣が出来てからの方が良いとは思うが、それが一番の難点だな。」

「そうだよな…普通の精霊剣はべルアには力不足だし、かと言って、炎の剣は人間を主とする様にしてあるからな。

……リシェ、お前、剣を創ってみるか?」

伯父からの思い掛けない提案でリシェアオーガは驚き、カーシェイクの方へ視線を向ける。何を意味しているか判った兄神は、頷きながら答える。

「それなんですが、父上、伯父上。

リシェアは、剣を創れない様なんです。輝石で装飾品を作ってる時に試しにと思って、私が提案してみたのですが…尽く駄目でした。」

告げられた言葉でリシェアオーガに視線が集まる。

それを受けて、残念そうな顔で彼が告げる。

「兄上の分析では、輝石から剣を創る際に私の力が入り過ぎるとの事なのです。

それに輝石が耐え切れない為、剣の形を保っていられないのです。ですから、剣を作り変える事は出来ますが、一から創る事は、まだ無理なのです。」

「一応、私も加わって改善策を捜しているのですが、未だ見つかっていないのですよ。

…べルアの剣は、炎の精霊剣にリシェアが手を加えれば、仮初めでも使える様になると思いますが…。」

二人の子供(?)に言われて納得する父親と伯父。彼等の会話にべルアも驚いた。

「私の腕では、どの様な精霊剣をも扱えないのですか?

それにリシェア様が剣を創れないなんて…初めて聞きました。」

「仕方無いだろう、私も創ってみたいと思って試したが、神の力と神龍己の力が入ってしまって、輝石が耐えられなくなって全部崩壊したんだからな。

だから、兄上に頼んで、輝石が耐えられる様にする方法を捜している。」

先に己の事を答えたリシェアオーガは、次にアーネベルア自身事の回答を述べる。

「それにべルアは、元々炎の騎士だったから、普通の精霊剣は扱えない。

光と炎の精霊剣でも無理だ。…剣を作り変えるか…遣ってみても良いかもな。」

剣に関しての話が決まり、彼等はリシェアオーガの新しい騎士へ視線を戻した。

元々は、同じ血筋の紅の騎士達…その彼等にリシェアオーガは、早々と自分の騎士の証しの一つを渡す。

「べルア、アル、服や他の装飾品、剣は後から渡すが、一応これを先に渡して置く。」

金色に光る蜷局を撒いた龍の飾りを二人に渡し、リシェアオーガは言葉を掛ける。

二人の手にあるのは、他の精霊騎士達が着けていた光の龍。

それを手にして嬉しそうにする孫を見ながら、アーネベルアの顔も綻んだ。まさか、自分の孫と共に同じ神へ仕えるとは思ってもいなかったが、共に戦える嬉しさが込み上げてくる。

これでレナフレアムが揃えば…と我儘を思ってしまう彼は、自嘲しながらも在りし日の事を思いだしていた。

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