表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
1/18

プロローグ

 紅き髪と、紅金の瞳の少女…初めて会った時から、変わらない姿。

この少女と同じ特徴の自分に、彼女は微笑み掛ける。

それはいつも同じ、優しい微笑。

初めて会った時から変わらない、炎の神・フレィリーの姿だった。今、自分は老いて、人間としての生涯を終えようとしている。

自分の傍には、家族の姿とあの少女の姿、そして光の神と大地の神の神子…光地の神子である少年の姿。

後者の二人に関しては、魂迎えに来たと判っていても、嬉しく思う。

やっと、全ての肩の荷が下りた。

自国も安定して新しい歩みを始め、子供達も成人して新しい家族も増えた。

後は、この炎の剣のみ。

もう、この剣の担い手として、生きる事はしたくない。

来世は…平穏に暮らしたい。

そう、この老人は思った。

老人の名は、アーネべルア・ハールディア・グラン・コーネルト、マレーリア王国の、前国王に仕えていた騎士であり、生まれながらにして炎の神の祝福を受けた、炎の剣の担い手だった。



 ここは神殿の敷地内の、炎の神の祝福を受けた者が住まう館。

今、その屋敷の主が家族に見守られ、89歳という長い一生を終えようとしている。

彼は家族に囲まれ、神々の迎えを受けていた。

顔に刻まれた皺は、彼の年輪を示すかの様で、紅だった髪は白くなり、その紅金の瞳の優しい光だけが、炎の神の祝福を残している。

死という別れを迎えた家族は、眠る様に寝台に横たわる老人に、泣き縋っている。その傍で、表情を失くした紅の少女と、真摯な眼差しを送る金の少年が違和感を与える。

家族とは似ていない、彼の知人として見取っている彼等が虚空を見つめ、役目を終えたとばかりに、その場を立ち去ろうとした。

彼等の姿を見つけた家族は、この行動を不思議に思い、彼の孫である紅の髪の少年が叫ぼうとして、声が出なかった。

彼等の後ろに、あの老人の姿が見えたのだ。一瞬して、老人の姿が若き青年へと変わり、孫である少年へ微笑む。

『アルベルト、皆を宜しく頼む。

私は、フレィ様とリシェア様と共に、キャナサ様の許へ旅立つ。

蘇る事は出来無いが、皆を…見守っている。』

紅の髪と紅金の青年は、この言葉を残すと、彼等と共に炎の屋敷から姿を消した。

後に残ったのは、悲しむ家族と、主を喪った炎の剣のみだった。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ