6話 旅立ち
ステータスを数字表記から英字表記に変更しました。
数字だとバランスが難しいです。
朝か。
おれはやっと表世界に戻る事ができたのか。
あのうるさい案内人は放置でもいいかな・・・
‘報告。今回の接続で異常は確認されませんでした‘
‘しかし職も封印されたためレベルがリセットされました‘
‘そのため十分の一より低いステータスとなります‘
もしかしてまだ裏世界なのだろうか。
先ほどまでと同じ文字が見える。
「お前なんで・・・」
バン!
そのとき扉が開く。
「アバド!」
マイシャだ。わずか一日でやけに懐いたな。
まあ子供にしては高位の召喚魔方陣を書けるようだらか子供は近寄らないだろうし、
大人も君が悪くて近づいたく無いか。
たぶん初めて自分と普通に接してくれる人に出会ったからだろう。
・・・出会ったときは人ではないがな。
「おはようマイシャ。プレゼントの本だ」
突然言われてぽかんとしている。
当たり前か。ちょっと前まで死んだように眠っていた人間がいきなり本をプレゼントするって言ってもな。
「いいの?本は高いよ?」
そうかこの世界では高価な物なのか。
だとしたら魔術書なんて相当・・・
もしかしたら魔法は口伝多いのかもな。
だとしたら何故マイシャは召喚魔法陣を書けるのだろう。
一種の才能なのだろうか。いたずら書きが魔方陣になる的な。
「大丈夫。心配しなくてもいいよ。」
これは本当。何故なら裏世界の本棚からコピーして持ってきた物だからだ。
そのままは彼女に不可能といわれた。
燃えたりしてなくなったら、その知識が全てなくなるらしい。
「やった!」
マイシャはすごく喜んでくれた。
ギィ
ドアの開く音。
そろそろ来るとは思っていた。
「起きたか」
サルシアだ。
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「で?お前はアバドでいいのか」
「あの時と違って人間だがね」
サルシアは驚いた顔をする。だがまあ予想はできていたかもしれない。
気を失っているときも角と尻尾は出てないはずだしね。
「一体何が起きた。何故悪魔のはずのお前が人間に!」
俺は村を出てからのことを説明した。
変な集団に襲われて、そしてその後裏切られ・・・
「まさか・・・魔王が誕生していたとは・・・しかも100年も前に」
どうやら衝撃の事実らしい。
「デリシン様はもう行ってしまったぞ・・・」
デリシン?だれだっけ?
「デリシンって誰だ?」
「お前長老のことを忘れたのか?」
「あぁ・・・長老か。そういえば最初に言ってたな。」
あんな感傷に浸ってたのが恥かしい。
まさか忘れているとは。
「アバドよ、これからどうするつもりだ?」
痛い質問だ。仲間に裏切られたばかりの俺にこれからなんて・・・
「・・・」
何も答えられない。
「とりあえずアプス王国向かってみてはどうだ?」
「アプス王国?」
「そうだ。あそこにはいろいろなものがある。ここにいてもしょうがないだろう。」
「ああ。そうだな、そこへ向かうよ。」
何が言いたいかは大体わかった。
マイシャと俺を村においておきたくないのだろう。
当たり前だ。今は人間のもと悪魔。そして魔獣を召喚可能魔方陣の書ける召還士。
マイシャはもともと気味悪がられてるようだし。
「すまないが馬はやれない。でも旅の道具なら渡せる」
そういって入ってくるように合図する。
入ってきた男の手には大きなカバンがあった。
「傷はなかった。体力も回復しているはずだ。」
「・・・すまないがもう行ってくれ」
俺は何も言わずにカバンを受け取り小屋を出る。
マイシャも後を着いて来る。
「やっぱり村の人は冷たい」
マイシャがつぶやく。
「何処の村もそうだった。みんな私の絵が嫌いなんだ。」
絵・・・魔方陣のことだろう。
村が見えなくなるまで会話はなかった。
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「マイシャは何処でその絵を知ったんだい?」
村が見えなくなって少ししてから俺は聞いた。
「6歳のころおじいちゃんが見せてくれた紙をまねして書いてたら楽しくなったの」
長老が獣魔召還用の魔方陣を見せたのか。
そこからの創意工夫で魔獣まで召還できる魔法陣をかけるようになるとは・・・
「一枚俺にもくれないかい?」
ちょうど荷物持ちがほしい。
「危ないよ?」
自分が書いている物の危険性はわかっているのか。
「大丈夫!強いから!」
封印されているとはいえ魔獣には負けないだろう。
「うん!じゃあ一番かっこよく書けたのあげる!」
マイシャが俺の背負っているカバンの中からスケッチブックを取り出す。
「それもおじいちゃんからのプレゼント?」
紙が高価なこの世界でスケッチブックしかも魔法陣を書ける魔紙は相当高価なはず。
「うん!あと・・・これ!」
「ありがとう」
あのじじい何者だよ・・・
そういえばフェル族であの年を取った見た目・・・何歳だよ。
俺は少し離れたところで召喚する。
魔法陣を地面に置く。
その後魔力を込める。
雑魚はいらないから少し大めにいれよう。
・・・おかしいこの魔方陣やけに魔力効率がいい。やばいかもしれない。
やめようかと悩んだとき、魔法陣が発動する。
大きく広がった魔法陣、かなり大きい。
獣魔なんてかわいいものじゃない。きっと魔獣だ。
出てきたのはトラックほどの狼。
ゲーム時代にダンジョンボスで何度か見た。
狼神種。
戦闘になれば勝てないだろう。
そのときその狼がしゃべる
「君!本当に忘れていたね!」
「ごめん!忘れてた!」
その魔獣の魂は黒いもやの彼だった
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「本当に反省しています。」
俺その巨大な狼の前で正座させられていた。
「最初はちょっとした冗談だろうと思ったよ。でもさっぱり召喚しようとしないじゃん!」
元黒もやは前足を一度ドン!と踏む。
「ハンセイシテイマス」
「しかも召喚されたと思ったら狼神種!流石に魂乗っ取るのはダメかと思ったよ!」
マイシャは未だに理解できていない。え?え?っと戸惑っている。
「自分もお荷物にならない程度の荷物持ちが欲しくて。まさかダンジョンボス級がくるとは・・・」
黒もやがいなかったら今頃全滅していただろう。
まず獣と名の付く全ての種に言えることだが、普通より数倍でかい個体は種の中でも高位の存在である。
大体が一回り大きい程度で群れのボス、明らかに大きく特殊な特徴があるのが種のまとめ役。
コイツのように他の個体と比べるのがおかしいのは○○神種と呼ばれる。
この狼の詳しい種は俺にもわからない。
ただし獣人を除き、人の身長を超える魔獣はほとんどいない。
なのでこいつは明らかに狼神種なのである。
狼神種のボスはたまにいる。魔法を使うことはない
しかし高い身体能力、高い魔法防御・・・恐ろしい程素早い。
なので難易度が恐ろしいほど高い。(神種全般難しい)
しかしそんな狼神種の元の魂を追い出し、代わりに入れている。
こいつは何者だ?
「本当に!・・・で?そこのお嬢さんは誰?」
落ち着いたのかおすわりをしてマイシャについて聞いてきた。
「その子がマイシャちゃんだ。見た目は知らないのか?」
俺は何らかの手段でこっちを観察しているものだと思っていた。
「君がマイシャか!初めまして・・って言っても僕は本でこっちの様子を読んでいたから見た目以外は知っていたんだけどね。」
そういうことか。こっちの世界の様子が見られる本があるのか。
だかかなり早口で言っているためマイシャは理解できていない。
「は・・・はじめまして。マイシャです。あなたの名前は?」
かなり緊張しているようだ。
「僕の名前?・・・そうだねぇ。何がいいと思う?」
そういえばコイツ名前ないのか。
「え?ないんですか?え?」
まさか名無しとは思っていなかったんだろう。
しかも何がいいかなんて予想していなかっただろう。
「アバドくんも考えてくれたまたえ!」
調子に乗ってないか?
「ポチで」
「それはない!」
なんとも早い反応。
「玉」
「それ猫だろ?!」
流石にわかるか。
「玉々」
「一番ひどい!」
俺も嫌。
「コクエン」
「お!まともな名前かい?それにしよう!」
黒い煙でコクエン
・・・前の黒もやのことなんだけどね。ばれなかったかな。
「僕の名前はコクエンよろしく!」
「あっはい・・・よろしくお願いします」
ぽかんとしているマイシャに挨拶。
マイシャはまた置いていかれてた。
その後大きすぎるからとサイズダウンし、マイシャの身長程になった。
人が二人乗れる、良い移動手段。
本当にコクエンに会えてよかったよ!。
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俺はもう一体召喚することにした。
マイシャの護衛が欲しい。
次は複雑な魔法陣をくれた。
複雑な方が高い知性を持つ可能性が高いらしい。
今回も同じ位の消費量。
だが魔法陣は逆に小さく展開された。
サイズは手のひらサイズ。
・・・大丈夫か?
出てきた・・・
あれは・・・リスだ。忍者服のリスだ。
「お前と契約したい」
通じるか?通じなかったら少し厄介だぞ・・・
「我主君を求める。そなたが新たな主君か」
いい反応だ!
「この少女マイシャに尽くしてほしい。」
マイシャは俺の後に隠れていたが、自分の名前が出て顔をのぞかせた。
「リス!」
マイシャは気に入ったらしい
さてリスの反応は?
「了解した!」
良し!
「名前は何にしようか・・・」
「ハクエン!」
「アバドさんのが黒だから、私のは白!」
「いい名だ!」
リスもといハクエンも気に入ったようだ。
「両方気に入ったなら何も言うことはないな」
そうして忍者リスのハクエンが新たな仲間になった。
どうやらハクエンは珍しい種のようだ。
獣小人種のリス族
普通の獣人と違い、獣小人族は非力。
しかし隠密性に優れ、素早い。
しかも武器も魔法も扱えるらしい。
そのなかでも忍頭を勤めていたらしい。
ちなみに忍頭は「後釜が決まっているから大丈夫」だそうです
ハクエンが言うには「主にお使えできるのが何よりの幸せ」だそうです
滅多に召喚できる種じゃなさそうだから名誉なことなんだろうね。
コクエンは飽きて寝てます。
次は明日の朝5時投稿です(予約済)。