2話 おとぎ話の悪魔
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いい朝だ。まだ日は登ったばかりだろうか。
小鳥のさえずりで起きるなんて滅多にあることじゃない。
木を背にして寝たから全身痛いのと、
横でクリムゾンソードがまだパチパチと音を立ててていなければさらにいい。
それと俺を縛る縄と俺を囲む鍬などもいらない。なんだこれ。何故囲まれている?
「おい!お前!マイシャちゃんに何をした!」
俺の正面に立っていたスキンヘッドが聞いてきた。なんて厳ついやつなんだろう。
どうやら悪魔になったのは本当らしい。向けてくる視線が人間に向けるものではない。
恐怖が感じ取れる。こんなに厳ついおっさんの目から。
「何もしていません」
俺は正直に答える。
「悪魔が人間守るわけ無い!」
信じてくれないらしい。そりゃあ当たり前か。
「最近まで人間だったんですよ」
「まだそうな嘘を!俺たちをどうするつも・・・」
そこまで言いかけてスキンヘットのおっさんの後ろから一人のじじいが出てくる。
120センチくらいしかないだろうか。真っ白いヒゲが地面までつきそう。
顔は口と目がかろうじて見える程度。まさに森の賢者といった感じ。
「すまんが下がってくれ」
そう言うと俺を囲んでいた男どもが下がっていく。
「長老なぜこんなところに」
さっきの厳ついスキンがその賢者に質問をした。
(てか長老なんだ・・・)
すこし呼び名が賢者じゃなくてがっかりした。
「黙っておれ。サルシア」
(サルだって。プププ。ゴリラっぽい体つきなのに。)
「村の者が失礼した。その炎系の攻撃魔法でよろしいかな?」
賢者もとい長老が聞いてきた。これが魔法だってわかるってことは魔法使い。この感じ結構高位かな。
「よくわかりましたね。普通の人なら魔剣位にしか考えませんよ。」
年はとっているが同じ転移者なのだろうか。
「いやいや。そういえば名前がまだでしたな。わしは村長のダラム・デリシンじゃ。防御魔法を得意としておる。お主もしやアバドという名では?」
アバドというのはゲーム時代の名だった。
最初はサキシンという名をつけたのだが、ギルド戦で破壊の限りをつくしていたら、滅びとも訳されるアバドンからアバドというあだ名を付けられそっちのほうが広がってしまい、改名する羽目になった。
どちらかというとルシファーの方が俺には合ってと思ったけどな。もとはギルドの副長で転生して悪魔でNO.1の軍を作り上げたわけだし。アバドンってイナゴだし。虫嫌いだし。ルシファーかっこいいし。
アバドンってルシファーよりマイナーだし。
「ここでその名を聞くとは思いませんでした。」
その一言で後ろの男たちがざわつき出す
「嘘だろ・・・」
「あの聖魔伝説の?」
「消えたアバド?」
「同姓同名だろ」
「でもまさか人間であの名を付けると思えないし」
「悪魔の中でもあの名をつけるのは禁忌だって」
「でもあれっておとぎ話だろ」
「静かにしなさい!」
ざわつきを老人とは思えない気迫で静まらせる
「有名な悪魔なんですか?」
「まさか聖魔戦争の伝説を知らないのですかな!?」
よぼよぼに戻った声で驚かれた
そこから聖魔戦争について話をしてくれた
ある男の伝説
その男は帝国の前身となる集団の副長に若くして上り詰めた。
しかし突然その男は力に目がくらみ、名をアバドに変え悪魔となってしまった。
悪魔となったその男は滅びの化身。
すべてを滅ぼす魔神。
人間側の命運は男が元いた集団にまかされた。
しかし人間側は劣勢。リーダーも打ち取られた。
終わったかに見えたそのとき、
『アバドという名の男は消えてしまった』
人間側はこれで流れを持って行き、
悪魔側はその男を失い何もできずに負けてしまった。
これで人間側は一時平安を取り戻した。
しかし人間の苦しみは終わったわけではない。
男に召喚された悪魔は今も男を探してさまよっているのだから・・・
「信じられない・・・あれから俺たちが負けただと?」
「仲間で作り上げた最高の軍が?」
俺は全身から力が抜ける感覚に陥った
「それほどそのアバドという男・・・いや悪魔の力は恐ろしかったということですかな」
「嘘だろ・・・」
あのとき運営から勝利を確認するメールは届いていた。あそこから負けるはずが無い。
(俺の軍は全て失った?)
「まだ終わったわけではないぞ。」
長老は続けて
「使役していた者たちは滅んでおらん。雷帝グロムと炎帝プラーミャは今も各地で主を探し暴れとる。呼び出してみてはどうかな?」
長老は優しい声でそういった。
「あなたはどうしてそこまでしてくれるのですか?俺は悪魔であなたは人間だ。しかもあなたにとってはおとぎ話の大悪魔のはずだ!。恐ろしい敵のはずなのにどうして?」
おれは叫ぶように怒鳴るように長老に言う。
「大悪魔?はて?誰のこと。わしは大事な孫のマイシャを夜の魔物から守ってくれた恩人が困っているようだから助けたものよ。」
老人はニカッと笑った。
俺は何も言えなかった。
俺は長老と昼まで他愛もないことを話した
主に俺の話。おとぎ話の裏側になるだろう。
長老は楽しそうに興味深そうに聞いてくれた。
聖魔戦争からおよそ1000年経っていらしいということもわかった。
「それではそろそろ呼ぶことにします。1000年近く待たせている友を。」
「お主が召喚したとはいえ1000年も経っていては来るとは限らんぞ。」
長老はそう忠告してくれる。
「大丈夫です。」
そういうと村から離れる。ここでは村に影響がでる。
長老だけは興味があるようでついてくるらしい。肝の据わったじじいだ。
少し離れると俺は呼び出しの呪文を唱える。
「コール。サモンモンスター、カモン!」
しばらくすると俺の前に一つの雷が落ちる。
「主よ!」
「グロムか」
次に赤いドレスの女性が舞い降りる
「プラーミャか。心配をかけた。」
「主様!」
続いて紳士服のダンディなやつが来た
「主よ!探しました!」
「えっ?誰?」
見覚えないぞこんなダンディ。
グロムとプラーミャはゲーム時代と変わらない見た目で俺の前にいた。
グロムは格闘家の服装。多分ゲーム時代のと同じ。上半身の服は若干の痕跡を残して消し飛んでいる。
体の傷もすごいためどれだけの苦労があったかわからない。
職も格闘家で近接系の雷魔法と格闘技を駆使した戦闘スタイルだったはず。
ゲーム時代のグロムのステータス
名前 :グロム
通り名:雷帝
種族 :巨人
職 :上位格闘家
能力 :サイズ操作
魔法 :近接系雷魔法 中距離雷魔法
グロムは気(HP)と魔力(MP)の両方を使える上位の格闘家である。
簡単に言えば、気は防御特化、魔力は攻撃特化。
異世界では。両方使える者を上位の格闘家と呼び、片方のみしかつかえない者が下位や中位の格闘家と呼ぶ。
これは近接戦闘職では一般的である。もちろん上位のでも差はある。
プラーミャは真っ赤なドレス。
グロムと違ってゲーム時代の服装ではないが、あの頃も真っ赤なドレスだったという点は変わらない。まさに西洋の美人。
職は狂戦士といったもので、自身のみエンチャント化、エンチャント能力は高いが反動も大きい。
脳筋職。パーティであまり好かれる職ではなかった。
魔法反動で勝手に死ぬ邪魔者扱いといったところ。
ゲーム時代のプラーミャのステータス
名前 :プラーミャ
通り名:狂い炎くるいほむら
種族 :ゴースト
職 :上位狂戦士
能力 :憑依
魔法 :近接系炎魔法 自己強化魔法
そのとなりに立っているのは誰だろう。
見た目は完全に紳士。顔はダンディなナイスミドルて感じ。
悪魔系統の種族ではなさそうだが、かなりの知的な感じ。羽で飛んできた。
羽の見た目は悪魔とはそっち系のため天使や虫ではない。龍人だろうか。
しかしさすがにそこまで高位な魔物は召喚できても契約はできなかった。
プラーミャは完全に脳筋のため周りの世話役として雇ったのだろうか。1000年も生きているわけだし。
(しかし俺を知っている風なんだよな)
「まさか私を忘れたというのですか!主よ!」
「忘れた」
キッパリと言う。忘れたものは忘れた。
「主の唯一のドラゴン。大天丸のことを」
「嘘つけ。」
大天丸は結成初期の頃に召喚したミニドラだ。
あのころは召喚士のヘボかったからミニドラでも一回召喚しただけで魔法陣が壊れてしまった。
そう考えるとあいつも良い召喚魔法陣書けるようになってたんだな。
おっと話がそれた。
ミニドラはすくすくと成長して上位のドラゴン(上位の中でも最下位クラス)にまで成長してたっけな。
大天丸は確かに成長は早かった。1000年生きているなら上位の中でも上の方まで行っているだろう。
しかし形状変化は別。あれは龍人クラスの知能があってできること。
主に才能ある龍人ができるものであって、獣程度の知能のミニドラから成長してなれるものじゃない。
ドラゴンだともともとの知能が高い種でなければ可能性はない。ミニドラには獣程度の知能しかなかった。
「上位魔法も使えるようになったのですよ!」
「・・・・・・」
さらに胡散臭い。龍族で形状変化もできて、さらに上位魔法もできる。
そんなのは竜王以上。山脈の主とかそんなクラス。
「これならどうです!」
そういうと体がどんどん大きく、そして服はウロコに変わっていく。
手をつき四足歩行の形になり、背中からは大きな翼。顔はまさにドラゴン。
見慣れた俺のドラゴン大天丸の姿だった。
「嘘だろ・・・。大天丸は人語に反応する程度だったはず。どうしてそこまでの成長を・・・」
大天丸はゲーム時代中位程度のたまに会う強い敵程度の強さだった。
中位ドラゴンでも1000年生きたら形状変化はできるようになる。
しかし普通なら1000年はありえない。その前に討伐されてしまうからだ。
俺は戦争に負けたと聞いたとき、その時にやられてしまっただろうと思っていた。
大天丸は人型に戻り、膝をついてこう言った。
「主よ。我々は今もあなたの下僕です。」
それに続いて二人も膝とついた。
長老は腰を抜かしてた。
その後お世話になった村を後にし、大天丸の背中にいた。
グロムとプラーミャと俺でこれからを相談していた。
最初の目標は仲間集めに決まった。
とりあえずは俺が契約していた者たちの捜索。
どうやら俺が消えた瞬間に離脱したため死んだものはいないらしい。繋がりを残したまま消えたため異常事態だと思ったらしい。
戦争で負けたのも恐らくそれが原因。一度終わった戦争で何故結果が変わったのかはわからなかったが。
問題は多い。目標の前に解決しなければならないこと。
宿の問題。食料の問題。そしてついてきたマイシャのこと。
マイシャの両親はすでに他界しているらしい。長老は唯一の肉親だが大国で魔法を教えているらしく村では一人らしい。
しかもマイシャは凄腕の召喚士らしく、獣魔のみだが種族制限のない召喚陣を書けるらしい。
両親が死んだのも10才の頃らしい。マイシャの魔法陣絡みの事件らしい。
『村で暴走したのか』と聞くと『違う。大国でじゃ』と言っていた。それ以上は何も語らなかった。
そのあと長老から『マイシャと連れてって欲しい』と言われた。
大国に連れて行けば死ぬまで魔法陣の制作。村では悪質ないじめ。
たまたま帰った時にそれを知り、迷っていた時に俺が来たらしい。
本当に俺でいいのかと聞くと『伝説の悪魔に預かってもらえたら光栄だ』と笑っていた。
大国については名前も教えてはくれなかった。
(俺が一番危ないよな)
そうしていまはドラゴンの頭に乗り目を輝かせている。
マイシャはブルーっぽいシルバーの髪で身長は140以下位。喋るタイプじゃない。完全に無口なタイプ。
見た目は中学生くらいで幼さが残っている。結構可愛い。
年は28と聞いて驚いたが人間とは違う種族で、フェアリーが祖先のフェル族というものらしい。
年は人間の10倍近く生きるらしいが、幼年期は人間の半分位の成長速度らしい。性格ものんびりしているため、一週間あの木の下ということもあったらしい。
しばらくして大天丸に衝撃が走った。
下から魔法で攻撃を受けた。
大天丸は無傷であったがこの世界での初めての他者からの魔法攻撃。
俺は他の物にここに残るよう言って下に降りた。
降りるとすぐに囲まれた。
頭まで隠れた灰色のローブで何も見えない。
胸のふくらみから正面にいるのは女。結構でかい。
すると正面の女が顔のローブをとった。
金髪に長い耳。エルフか?ハーフエルフの可能性もあるが・・・
「放浪の龍か?」
女は俺に高圧的な態度で聞いてきた。聞いたと言うより命令だが。
「なぜ俺を」
放浪の龍とは恐らく大天丸のことだろう。
嘘を言ってみたがさっき攻撃してきた魔法使いならおそらく違うことに気が付くだろう。
「拘束」
そう一言。すると周りと囲っていたローブの者が何かを取り出した。
龍の頭を型どったワンド。口には魔法記録用のオーブ。
「「龍の鎖発動」」
『龍の鎖』
呪術魔法士によって発動可能は束縛魔法。龍を捕らえることができる。相手が強ければ複数人必要
ワンドも龍に対しての効果がありそうだ。オーブでは魔法の威力が下がるがこれなら普通通りの性能を発揮するだろう。
さっきの攻撃は自動感知の記録魔法での攻撃だったのか。同じワンドとオーブで中身の魔法だけの違い。
「我々はアプス王国の龍捕獲隊である。先ほどこの近辺で魔力が感知されたため送られてきた」
アプス王国・・・知らない名だ。
俺を間違えてるということは上空の大天丸に気づけないってことは下位以下の見習いか。
捨て駒とこだろう。
「お前の主である悪魔の居場所をいえ!言えばこのまま開放する!」
目の前のエルフも捨て駒か?エルフが魔力の変換も行えない見習いとは思えない。
しかもこいつだけ拘束魔法と使っていない。
「どうやら吐く気はないらしい。やれ!」
するとローブはもう一本ワンドを取り出した。
「「破光」」
一般的な光攻撃魔法でいわゆるビーム。中位の魔法だが攻撃距離、威力は申し分なし。
しかし魔力消費が多い。まぁ俺は問題ないが。
(そしかしてそこそこの精鋭?魔力量の多いようだし。だとしたら気づかないのはおかしい。)
試しに軽く攻撃をしてみる。
「ファイヤ」
最下級魔法。炎攻撃魔法の初歩。
ローブの一人が激しく燃え上がる。炎は一瞬で消えたが当たった者は重症。
「ヒーリング!」
ヒーリング
中位回復魔法。即死以外ならほぼ回復できる。
正面のエルフが唱えた。回復魔法士だったか。
きっとそこそこいい腕だろう。魔力量が多い者が拘束魔法で捕え攻撃し、抵抗されてもヒーラーがいる。
ヒーラーがしょぼくては即全滅。
巨乳、エルフ、ヒーラー
「合格だ。」
俺はあのエルフを連れて行くことに決めた
村人の名前は適当です。