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1話 村へ


目の前に広がる草原

どこからか聴こえてくる鳥のさえずり

都会では感じられない木、花、草の香り

悩み事すべてを忘れさせてくれるかのような爽やかな風

天高くから見下ろす太陽

一面に広がる草原

全身で感じたくなるほど柔らかそうな草



「まぁ・・・全身で感じてるんだけどね」



太陽が高い。

俺佐々木信は草原に寝っころがりながら呟く。

ここに来てからもう何時間経っただろうか。

扉を出たときはまだ朝だっただろう。少し薄暗かった。

しかし既に日は天高く登っている。



扉を出た瞬間何かおかしいと思った。


まずVRMMORPGには基本的に匂いは存在しない。

風についてもそよ風程度では感じない。暴風などはあるが・・・。

あの扉は新しいモードの体験の招待だったんだろうか。

だとしたらすごいことだ。

・・・まるで現実と遜色ない。


だがしかし何もなさすぎて寂しい

運営に連絡しようとステータス画面を開こうと


「ステータス」


と言ってみる。しかし広い草原の中に吸い込まれていくだけ

ステータスはおろかメニューさえ開かない。

何の反応もなかったのだ。


アイテムもない。

装備もあきらかに初心者といった感じの服装。

風景はどことなく『Life's first adventure』で最後を戦った戦場と似ている。

しかしゲームの草原には森などなかったが少し遠くに森らしきものが見える




・・・いや・・・・だがしかし・・・・


ひとつだけ夢のような話がある。

ここはまるで現実のようではないか?

・・・嘘みたいな話だ。


異世界転移。

あの門はバーチャルと異世界を繋ぐ門


厨二乙。

夢の見すぎ。


・・・そういって誰か俺を起こしてくれ、強制ログアウトさせてくれ。



このときもう少し冷静だったら、頭の角と尻尾に気付いたかもしれない。



俺は全てを失った。家も、家族も、PCも、大好きだったフカフカベットも。


・・・考え方を元の世界では手に入れれなかったもの全てを手に入れられるかも


この世界は『Life's first adventure』の世界にどことなく似ている。

『Life's first adventure』ではNO.1の『救世主』その軍団長だったのだ。

俺は最強かも知れないほどの力を持っている。

ゲームからこの異世界にあの門をくぐって来たのだから。

この『Life's first adventure』に似た世界でなら何不自由なく暮らせるかも知れない。


しかし魔法が使えないのだ。『Life's first adventure』も魔法が使えなかったら何も意味はない。

そしてたった一人の今、モンスターに出会ったら何もできずに死にゆくだろう

俺は現実逃避ねることにした




しばらく寝ていると一つの考えが思い浮かぶ。


そうだ普通の魔法なら唱えれば発動できるかもしれない。

ステータスは呪文ではないく、メインメニューを表示させるための物だった。


「ウォーター」

俺はすぐに一つの魔法を唱えた。

何も反応はない。


しかしその瞬間俺の体に異変が起きた。

体の奥深くから何かが溢れてくるかのようだった。

・・・いや確かに溢れて全身へ回っていく感覚。


その正体はすぐ直感的にわかった『魔力』だ


たしか前に何かで読んだ。このゲームの魔力は『変換』して使っている。

俺は出したいものを強くイメージしてから手の平を上にしてもう一度唱えた。


「ウォーター」


その瞬間目の前にこぶし大の水の弾ができた。

感覚的にそれを飛ばすこともできるのがわかった。


半日飲まず食わずだったことに気づく。

それを恐る恐る口に近づけ飲んでみる


「うまい!」


コンビニで売っている天然水と遜色ない上手さ、

この世界の魔力の便利さがよくわかる。


一通り魔法が使えることを確認する。

上位の属性はなかなか苦労した。

しかしゲーム時代と魔法は変わらなかった。

体がどっと疲れる感覚。

・・・魔力切れか。今日は野宿か。

明日は食べ物を探して進むことにしよう。


あたりは魔法によって焼け野原とかしていた。





しばらく歩いていると森が見えてきたこのあたりに大きな森はゲーム時代には無かったはずだからあまり大きな森ではないだろう。


森の中は少し涼しい。

雨が降っていたのか地面は少しぬかるんでいる。

わけのわからぬ虫も飛んでいる。

時々果物のようなモンスターを見かける。

危うく手を食いちぎられるところだった


同じところをグルグル回っているような気がする


「…森は嫌いだ」


きっと迷っているのだろう。

少ししてから引き返した。

帰り道は簡単に分かった。

足場が悪いからすこし疲れた。

こんなところを半日も回っていたのに何故すんなり戻れたのだろう?



虫がかなり気持ち悪い。

帰り道で毛虫みたいなのが木にもっさりと付いているのを見つけた。

最初見たとき新種の木かと思っていた。

近くで見て少し吐きそうになった。



迷った腹いせに火の呪文で燃やしておいた。

近くの木に燃え移って大惨事になりかけたのはきっと天罰だろう。





草原に戻り歩いていると前方から走ってくる音がする。


「第一村人か?」


近づくにつれかなりの轟音。

・・・草猪の群れだ


草猪は文字の通り草の生えたイノシシ

ゲーム時代はあまり回復量はよくなかった。もしかして不味いのかもしれない。


大技で全てを狩ろうかとも思ったが昨日みたいな魔力切れが怖いので逃げるときにぶつかるであろう2、3体にしておいた。

食料にいいだろう。



わかったことはモンスターを倒しても消えてドロップアイテムが落ちるようなことはなくモンスターも死体が残るだけだった。


「持ち運びどうしよう…」


魔法で切ろうにもどこが食えるのかわからない。

仕方がなく置いていくしかない。


結局1体しかない。

絶望的食糧難。


そんな時一つの希望が見えた

「村だ…」


すでに夕方

俺はイノシシ片手にその村の方へ歩を進めた


門の前に立つ

すでに大きな木の門は閉まっている

日はいつ消えるかといったところ



仕方がないから野宿か…

でも野宿というのはすこしだけ夢がある。


だってそうだろ。

綺麗な夜空の下

草原で寝る


日本では考えられない

(まぁ・・・日本で野宿は・・・ありえない・・・)



周りを見回す

すると少し丘になているところに大きな木があった


(あそこで寝るか)


よく見ると木の下になにかいる

もうモンスターがでてきたのか?


夜はモンスターも活発になる

それさえなければよかったのに。

実際寝れるかも全くわからない状況。

きっと活発な時間になるまで休むことしかできないだろう。

昨日はあたりが焼け野原だったため問題なかった


(でもまだ少し早いはず)


日は沈みきってはいない

警戒をしながらそっと近づく。


手と足が長い

二足歩行動物だろうか

服を着ているため人間に近い知能


・・・ていうか人間だろこれ


女の子が寝ていた。

肩まで伸びた白髪で歳は13くらいだろうか。少し幼さが残っている。

木の影で寝ているため正しいかはわからない。


(危ないだろ)


夜の木の下女の子が一人

すでに門は閉まっていて村には帰れない




しばらく見ていると目を覚ます

「・・・っ!」

こちらを見た瞬間表情が固まる


「あくま・・・」


「こないで!」


そういってポコポコ殴ってくる

たいして痛くない


(それにしての寝起きと思えない反応の良さだった)

「悪魔って・・・」


失礼な話だ。いくらなんでも悪魔はひどい。

そこまでブサイクなのか?

自分では中の下くらいだと思っていたが・・・

さすがに人外には見えないはず・・・


「お嬢ちゃん悪魔はひどいだろそんなにブサイクかい?」


そう言うと女の子は必死に頭を横に振る


(怯え方が尋常じゃないな)


いくらか確かめる

ゲームの頃は悪魔族だった

しかし背中を触っても羽のようなものはない


尻尾は・・・ある!

なんでこんなに違和感があるのに気がつかなかったんだろう!


「すげぇ尻尾だ!悪魔尻尾!」


女の子はそんな光景をポカーンを見ている



『Life's first adventure』のころ俺は悪魔族に転生していた


最大魔力量が多く魔法への高い適正

手先も器用なための武器とは相性良し

筋力が少ないため重い武器不可

しかし鎧不可。プライド的な面でのことだろう。


人族とは圧倒的なステータスの差

ソロでもトップ級の強さだ


「もしかして本当に悪魔に見える?」


するとゆっくり頷いた

口は開こうとしない


(そりゃそうだよな。悪魔怖いよな)


「こんな見た目だが旅の魔法士でね。村の門が閉まっていて困ってたんだよ」


女の子は怯えながら聞いてくる

「たべるんですか?」


「食べないよ」


生憎人間の肉には興味ない。


「村をおそうんじゃない?」

「襲わない」

「・・・門は閉まっているの?」

「閉まっていたよ。それがどうかした?」

「それは・・・」


そう言いかけたところで背後の動物の唸り声

夜は魔物が多い。そろそろ時間になったか。

二人は囲まれていた



「クリムゾンソード」


炎の剣を作り出す魔法


俺は攻撃魔法氏だった

攻撃魔法氏は攻撃特化型の魔法使い

魔法によっては前衛も可能

補助、回復などの魔法は使えない職


その中でも火や雷、水の魔法が得意


クリムゾンソードは魔法の中でも結構上の魔法だったはず



(唸り声・・・夜の草原ではナイトウルフが出たな)


ナイトウルフ

別名夜の騎士団

単体では行動せず、基本的に団体行動を取る

囲まれると面倒くさい

一匹噛まれると一気に噛まれる


しかし俺も魔法を見てじりじり下がっていく

どうやらこの剣はやばいとわかったらしい


しばらく見合いをしていたが逃げていった



「あくまさんすごいね。魔物が逃げていったよ」


そういわれると俺は剣を地面に刺して女の子の隣に座った

クリムゾンソードは持続時間が長い

まぁ火の呪文全般が長めだ

いい明かりになってくれた


この剣があれば寄ってくる者はいないだろう


その日まものが襲ってくることはなかった

モンスターはソードを警戒して近寄ってこなかったようだ




女の子の名前はマイシャというらしい

歳は10歳くらい

この木の下がお気に入りらしい

昼寝をしたら寝すぎたようだ


俺は今日起こったことを話した


ギルド間戦争のこと

扉をくぐって何もない草原に出たこと


マイシャは楽しそうに聞いてくれた

二人はそのまま寝てしまったらしい





小鳥のさえずりで目が覚めた





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