14話 千人切
増量。
ギルド『峨々たる山脈』のAランク以下
Dランク200ランク150Bランク50A25総員425名
峨々たる山脈の名物『千人切』はアプスで唯一職でSになれる手段。
アプス国民にも大人気のイベント。
ルールは簡単相手の殲滅。四回戦合計千人をひたすら切り続ける。
一回戦D200 C50
二回戦D100 C150
二回戦D50 C150 B 50
四回戦D25 C150 B 50 A 25
コロシアムには回復結界が張ってあり、結界内では死ぬことはない。
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開始時間は日が昇り次第。「早くないか?」と思ったがルールを知って唖然とした。
まさかの一日で千人切。考えられない。
「まさか私の夫がこれをやることになるなんて・・・私心配です・・・」
ルールはあのあと帰ってきてからラサニアに聞いた。
あの師匠の何考えてるんだよ。完全に剣術しか教えてないだろう。
レベルも師匠との一対一でしか上がっていない。
ダンジョンだからモンスターが襲ってきたが避けるか、受け流すことしか許されなかった。
「まだ師匠には剣術しか教わっていなかったんだがなぁ・・・」
場が凍りつく。ラサニア、ガラン、ダレイ、マイシャその全員が唖然としている。
「アバド。村で暮らしてた私でも少し聞いたことがある」
「千人切では気を纏うのではなく、気の放出という一段上の攻撃が基本なの。剣術と気だけは・・・」
マイシャだ。懐かしきマイシャだ。
アプスに来るまでは俺にべったりだったのにアプスに来てからラサニアのせいで声さえ聞いた覚えがない。
「いやぁ・・・情けないことに魔力に慣れすぎちゃって気はまだ・・・」
いざとなったら裏世界で『造成魔法』と『防御魔法』を使って高防御の装備を作ればいいかなと思っている。裏世界でなら出来そうな気がする。
「まさか気の防御ではなく、回避と受け流しで千人切をしようというのですか!?」
ガランさんが驚いてるのってすごいよな。でも俺もおかしいと思う。
「残念ながらそういうことになりますね。師匠には今度あったら文句言ってやりますよ」
千人切を文句で済ませるってどうよ?でも師匠にはあと一歩及ばないからそれしかできない。
「旦那様はお師匠さんとどれくらい打ち合えるのですか?」
「気無しなら互角よりちょっと下、気を使われると流石に」
「それは気を使ってない剣聖とほぼ互角ということですか?さすがは私の夫!それなら千人切も可能かもしれません!」
「そんなにすごいことなのか・・・」
元が最強クラスだったから最初から師匠の動きは目では追えた。それでも傷を追わせるのに一週間半・・・まぁ剣術の基本などもろもろの事を覚えるのにかかった期間だ。あとはひたすら色々な剣で師匠と打ち合い。最後の日には一度勝ったのは絶対秘密。
(まぁそのあと気を使われてボコボコだったけど)
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`おはようございます`
見慣れた文字。音声付き。
「ルシフ、明日起きるまでに装備を一新したいから手伝ってくれ。あと音声のみで」
今は裏に来ている。やはり裏の方がルシフの手助けもあっていいものができると思う。
「分かりました。街に工房を発見しましたので移動しましょう。」
俺はもちろん、ルシフでさえこの街に何があるかわかっていない。俺がいない日中は街の散策をさせている。どうやら街ほど大きさがあると黒もやが色々な事が出来るようになるらしい。
「これは・・・」
自分が佐々木信だった頃にいた世界でさえ見たことがない。
あの世界の知識はどこか遠くの国という知識では存在する。
目の前にあるのは魔法と科学の融合させた腰ほどの四角い機械。
正面には手を差し込むであろう穴。上にはカメラのレンズのようなもの。
「おぉ・・・この世の主・・・このようなところに・・・」
「明日は千人切らなきゃいけなくてね。それで新しい装備が必要なんだ」
「・・・ですが・・・表では・・・ロストテクノロジーです・・・」
工場長には口はない。空に浮いている両手が工場長だ。
裏にはこのような存在もたくさんいる。その多くはもともと裏世界にいたものではない。
なんとか裏までたどり着き、主となれず裏に飲み込まれていったもの。
そのような存在が街が出来た時に一緒に再誕した。
意識のみの誕生。その時に一番大切な部位が一緒に発現する。
しかしこの世界では口がなくても・・・途切れはするが発言できる。
「気の操作がイマイチでね。今の表では防御魔法は『本』がなきゃ俺には発動できないんだ。」
「・・・私がいた頃は・・・魔法士はなんでも出来ましたが・・・今ほど一つ一つは強くありません」
「でも専門過ぎても不便だよ」
「アバド様。そろそろ本題の方に・・・」
ルシフに怒られた。ちなみにルシフがなぜ一部分もなかったかというと、役目の他に裏へのゲートを作った時に自分のほぼ全てを使い切ったかららしい。
そのゲートは今もどこかのダンジョンの最下層に存在しているらしい。
普通ならそこを通ってくるらしいが、俺の場合表の世界からはじき出されるような形で来たらしい。
そのため表と裏にアバドのみの特殊な道ができているそうだ。
「そうだな。あと呼びづらいから名前つけるか」
「アバド様、よろしいのですか?」
もともと裏にいたものには名前などは必要ない。あっても名誉なこと程度。
しかし表から裏へ来たものは少し違う。表から来たものに名前を付けるを裏世界に散っていたその者の全てが再び集まる。つまり名前を付けると復活するのである。
謀反などの心配はない。なぜなら名前の剥奪の可能だからだ。
しかし復活者同士での争いが起きる可能性がある。それはたいへん面倒くさい。
「優秀な鍛冶職は必要さ」
「・・・いいのですか・・・私などに・・・」
「じゃあリチェレイかな」
特に意味はない。
手が光る。きっとこの光が止んだら全身が戻っているのだろう。
「ありがとうございます!」
そこには変化なく両手が浮いているだけ。
「あれ?・・・名前つけてもそれってことはもともと手だけ?」
「いえ。全身に戻ることも可能だたのですが、それよりもっと手が欲しかったので増殖を可能にしました」
「そんなこともできるんだ・・・」
ルシフの次だったから未だ全容は解明されていない。
裏世界未だ謎は多い。
「防具は高位の防御魔法を魔力を流すだけで発動可能なものを。出来るだけ魔力消費はなしでな。
剣は魔力の操作で伸縮自在なものを二本。・・・あと槍を一本。自由に作ってくれ」
「防御魔法は何を使えば。あとそれ以外の細かなことは自由でいいですかな?」
「『ブック』。防御魔法はこれを参考に。あとは自由にやってくれ。どれくらいでできる」
「本体はこの機械ですぐできますが、仕上げがありますから・・・」
「今日中は可能か?」
「今日中というとアバド様が帰るまでですか・・・まぁ手はいっぱいありますから仕上げてみせますよ」
「頼もしいな」
「ルシフ。試したいことがある帰るぞ。リチェレイ俺の家はわかるな出来次第届けろ」
「了解しました」「ガッテン承知」
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「ではルシフ。接続による二種同時発動を開始する。」
「はい。」
『ブック』
呼び出したのは攻撃魔法と創生魔法。
『作成:クリムゾンソード』
作成は本来魔力を持たないものしか作成できない。しかしクリムゾンソードは魔力の剣。
目の前に一本の剣が出てくる。
「成功か。だがこれでは両手が塞がるな。」
「アバド様。私のサポートがあれば表でも可能です。」
「しかし召喚が必要だろう・・・」
「いいえ。私は意識をアバド様のなかに入れることでサポートを可能にします。
リレェレイの『副手』の使用により攻撃のサポートと『ブック』による多重魔法の補佐も可能です」
「すごいな。だがしかしネックは魔力か・・・」
「裏の魔力を利用してはどうでしょう?最大を越えることは出来ませんが、常に魔力を消費しても大丈夫です。」
「武器を作りながら程度なら問題ないか。」
「アバドさん!出来上がり!」
元気な両手が入ってきた後ろには武器と防具を持ってきている。
「早かったな。」
「はい!この『副手』が実に便利でね!」
まずは双剣用の二本。見た目はただの鉄の棒。
魔力消費を最小限に抑えてある。
刃を作るときと刃こぼれや切れ味が落ちたときの修理時以外で魔力消費はない。
次は防具。赤のロングコート。
防御魔法の他にうちポケットが四次元空間になっているらしい。動きを邪魔しないようコートに伸縮自在の魔法をかけてあるらしい。防御魔法の効果は結界による敵意の遮断。
槍には軽量化と伸縮自在。そして補助知能がついている。
こちらは気での操作になっている。
補助にはその辺にいた黒もやを突っ込んだらしい。
黒もやは攻撃魔法が得意だったらしく刃の切れ味が自然と上がる。
「槍はプレゼント用にだと思いましてね」
「ようわかったな」
「他にも隠し機能がたくさん付いてまっせ!しかも自動成長付き!」
自動成長。流石に本職の作るものには敵わなさそうだ。
「アバド様。そろそろお目覚めの時間です。」
「手伝いありがとう。ルシフ行くぞ!」
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まだ日が上る前。
アプス国民のほとんどがコロシアムに向かっていた。
あるものは無名の者の活躍を見に。またあるものは師匠の名を知りその弟子の実力を確かめに。
しかしほとんどのものは無名のくせにSへ挑んだ愚か者を笑いに。
「あなた・・・気をつけて下さいね・・・」
「準備は全てに完了している。なんの問題もない。」
ラサニアに心配させないよう戦わないとな。ダレイさんの二の舞に相手をしたくない。
「アバちん調子はどうだい?」
「ラクさん、全て準備完了です。千人斬り殺してやりますよ」
「はははっ。絶対にアバちんには負けないよ」
「そういえば約束の槍です。」
そう言って一本のやりを渡す。
「おぉ気になってたけど俺のなんだ。いいのかい、戦う前に渡して。」
「問題ないですよ」
「まっ俺が出る最終戦まで負けんなよ」
「じゃあそろそろなんでいきます」
アバドはコロシアムに入っていく。ラクティは渡されたやりを見る。
かなり小さい。お遊びで作った感じの槍。しかし明らかにアーティファクト。
軽く気を流してみる。かなり高い気との適合率。相当の切れ味だろう。
だがこの長さが残念もう少し長ければ・・・
そう思ったとき槍が理想の長さになる。逆に短くも出来た。
こんなアーティファクト国宝級だ。それにこの槍には何かが宿っている。
・・・こんなものを軽く渡せるあいつは何者なんだ。
コロシアムは超満員。既に250人は準備完了。
「行くぞ。相棒」
‘殲滅開始です‘
観客はそのものが出てきた瞬間ガッカリした。普通なら感じる気を全く感じない。
これでは話にならない。ギルドがなぜこんなのの挑戦を許したのだろう。
まず一人突っ込んでいく。この程度なら簡単にはやれると考えたのだろう。気が使えるようでもないのに武器も持ってない。
これで終わるだろうとほとんどは考えた。
しかし突っ込んでいった男は真っ二つにされていた。
挑戦者の手には謎の剣。鉄の棒から刃が出ているが明らかに先程まで唯の鉄の棒だった。
「さあ!楽しもうか!」
挑戦者が叫んだ。
その後は信じられない展開となった。相手は一人防具は赤いロングコートのみ。防御力があるとは思えない。
なのに攻撃が当たらない。ひたすら避けられ、流される。
そして着々と人数が減っていく。信じられないことに相手の腰にはもう一本鉄の棒がぶら下がっている。
午前の部
第一回戦、第二回戦
500人全員が一本の剣に切り捨てられた。
観客はなにも言えなかった。すぐに終わるだろうと思っていたのに、一つの傷もつかずに500人が切り捨てられた。
明らか余裕をのこしながら。
三回戦が始まる。三回戦は一つの壁でありここからが本番。
Bランクはそう簡単にはやられない。
CDでは時間稼ぎ程度にしかならない。 その間にアバドというなのあいつを観察する。
気は使っていない。しかし魔法の気配はする。
特にあの剣。恐ろしいほどの切れ味。下手な防具では紙と変わらない。
剣の腕も流石は『剣聖』の弟子。Aランク以上の腕だろう。
問題は剣が一本でないこと。まだ本気ではないだろう。
それを含めても、三回戦はこられないだろう。
「流石に三回戦からは少し本気でいくか。」
もう一本を抜く。
「特別に魔力も変換して使ってやるよ」
片方が火の剣、もう片方が雷の剣となる。
こいつ・・・本物かもしれない。本物の強者かもしれない。
「楽しませてくれよ!」
アバドの本気。Bでは止められなかった。
「くそぉ・・・一撃当たれば・・・」
無傷の三回戦突破。
コロシアムはわいていた。期待していなかったのに冒険者でもトップクラスの活躍。
しかし来賓席ではこれは大変な騒動だった。
「まさかウェポンマスターが弟子をとるとは」
「奴はどこの所属だ!バランスが崩れるぞ!」
「ウェポンマスターの弟子にしてはおかしくないか?」
「片手剣と双剣だげではないはず・・・」
「あやつ気を使っていないぞ!」
突然現れた所属不明の男。現在のバランスを崩しかねない。
今すぐにでも問い詰めたい。しかし四回戦は始まった。
(どうする相棒)
‘Aランク以上は『副手』を使ったほうがいいでしょう‘
(いっそのこと『ブック』も使用してパーティとシャレこもうか)
‘それもいいでしょう‘
「よし!特別に全身全霊をかけてお前らと戦ってやるよ!」
『副手』
『ブック:創生魔法:火、雷、水剣各種』
その光景はコロシアムの全員が信じられなかった。
空中に無数の手が浮いている。魔物ではない。幻覚でもなさそうだ。
そして色々な剣が現れる。もしもそれが頭上だったらほとんどのメンバーがやられていただろう。
その現れた剣の全てが唯の魔法の剣ではなく、アーティファクト級の出来の剣だった。
BCはすぐにやられた。Aランクでも残り10人、しかし精鋭その中にはラクティもいる。
‘残った十人とはアバド様自らの戦闘が必要かと‘
「そうか。まず誰から行こうか。」
残っているメンバーの中にあの時のギルドの門番がいた。
「よし!お前!名前を聞いていなかったな」
「デコイだよ」
デコイは斧を使っていた。
まずはデコイから攻撃。おもいっきり縦に切りつけてきた。俺はそれを難なく避けた。
当たった地面が吹き飛び俺もその衝撃はで体勢を崩す。
「もらった!」
デコイはその隙を見逃さず攻撃。全てを込めた全力の攻撃。
コロシアムの全員がこれで終わったと確信する。
しかしその攻撃でアバドは傷一つつかなかった。
「おぉこれはいい!」
アバド自体も一瞬諦めた。がしかし特製のロングコートが守り切った。
「なかなか楽しかったぞ。」
デコイにもうこれ以上の手は残されていない。しかしそう簡単にやられるわけにも行かない。
相手は気を使っていない。そんな相手に負けるわけにはいかなかった。
アバドからの攻撃を受け切れれば、その間に誰かが攻撃してくれるかも知れない。
しかしアバドの双剣はいとも容易くダレイを切り裂いた。
もしもデコイが受けきってたとしても助けには誰も来なかっただろう。
ルシフが操る『副手』はアバドが自らの戦闘を始めた瞬間最後のふるいをかけた。
その結果ラクティを除く8人はすでにやられていた。
「アバちん・・・えげつない強さだね」
「ラクさんこそ最後の一人じゃないですか。Aランク最強ですよ」
「それはアバちんのおかげさ・・・恐ろしい程切れるね。これ。」
「それはよかった。・・・そろそろ決着と行きましょう!」
「せめて傷ひとつつけてやるよ!」
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「あれがハーンの弟子か・・・」
「ハーンも美味しいところを持っていった。あれはもともと最強であろう」
「まさか本物のアバドが戦っているところを見ることになるとはな」
「しかし私と会った時とは少し違いますかな?」
「まさか!あれ以上だと!ダラムよそんな冗談はよせ」
「しかし彼は高位の悪魔で魔法使いだったのですよ。王よ。」
「あれは・・・剣士ではないか!・・・」
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アバドはラクティに近づけないでいた。完全な防戦一方。
伸縮自在のその槍はアバドを苦しめていた。
「流石だな。装備で差がなければ俺はAランク程度の人間なのかもしれないな」
「恐ろしいこと言うな。お前の周りのその手、相当優秀だろう。どうせその数が限界じゃないんだろう」
「そこは秘密だ。だがしかしすごく優秀であるとは言っておこう」
「だがどうする?アバちんがくれた装備のおかげで攻めきれていないじゃないか」
「そうだな。ラクさんには俺が上げた装備をうまく扱ってくれたお礼として・・・『ブック』」
そういって『幻覚魔法』と『攻撃魔法』の本を取り出す。幻覚魔法は『古魔法』で呪術師に飲み込まれた魔法のひとつ。
『神雷』
「嘘だろう・・・アバちん何者だよ・・・」
空が割れる。その先には巨大な手。その手から雷が落とされる。
ラクティは抗うことなく炭となった。
試合が終わり、コロシアムの入口でさっき炭になったラクティが待っていた。
「おいおいアバちんさっきのあれは何だったんだい?」
「あれは幻覚と雷魔法の複合さ。やり方は秘密な。」
俺はそう言って待っている人のもとへ向かった。
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「あなた~~~!!!心配しました!!!最後のであなたも炭になるかと」
「アバド!封印される前みたいでかっこよかった!」
「まずはガランさんの喫茶店に戻ろう」
そう言っていつものように喫茶店へ向かう。
明日も5時投稿です




