始まりの日
2027年世界で初めて日本で初めて発売されたVRMMORPG『Life's first adventure』
発売元の会社は『Leitfaden(案内人:ドイツ語)』という無名の会社、
しかし初のVRMMORPGということでサービス開始前から一部で話題に。
実際にサービスが開始されると、
『その広大なマップ』
『組み合わせ次第で幾万とも言える職業』
そしてなにより『冒険者側と魔物側』に分かれて争うというわかりやすい世界の覇権の取り合い。
サービス開始からしばらくは英雄側(冒険者側のこと、第一線で戦っているものたちを英雄とネットの中では呼んでいた)の圧倒的な有利、
それは魔物側は英雄より初めから不利であったからであった。
魔物側の人間は街が使えない。
魔物側でも魔物と友好的というわけではない。同種族でなければ魔物にとっては敵。
小さな町なら落とせばいいが、大都市はそうはいかない。
しかし冒険に必要な道具は大都市の方が品が多く種類も多い。
魔物の側には小さな集落しかない。
その程度では薬草程度しかないのである。
そのため魔物側スタートするのは難しい。
そんな中を俺は魔族軍(ギルドの敵対組織。ギルドも魔族軍のどちらもプレイヤーの集まり)『救世軍』立ち上げ。
その前まではギルド『セイバー』で新人ながら副長まで上り詰めた。
最初は友人に誘われて冒険者として始めていた。友人がその『セイバー』というギルドの中で騎士団長をしていた。そのためレベルも割と直ぐに上がって行き、暇で時間もあったおかげで副長まで上り詰めつことができた。
副長になったその日、俺は初めて対人戦を経験した。
ギルドでも久しぶりの、俺にとっては初めてのギルド対魔族軍の対人戦。
そこで見た戦力差に。
俺は戦慄した。
相手は魔族軍でも新参者ではあった。
が…しかしギルドの圧倒的なまでの優位、対人のギルド間戦争とは思えないほど。
まるでNPC
まるでAI
…いやまだNPCやAIなどのほうがましかも知れない。
『Life's first adventure』では対人戦の他にフィールド戦闘やダンジョンがある。
フィールドは最初のスタート位置から遠くなればなるほど強くなっていくモンスター。ダンジョンも同じ。
それがこのゲームの特徴の広大なマップと相まって今までにない難易度となっていた。
日本でも屈指のギルド『セイバー』でさえ全滅するほど。
その基準で言えばまだNPCやAIのほうがましだった。
フィールドを進めば考えられないほどの強い魔物がウジャウジャいるのである。
どうしてここまでの差が付いたのかは全くわからなかった。
もしかしたら人には『異形となりて同族を撃つ』というまだまだ抵抗があったのかもしれない。
俺も最初は、『俺を見てくる人間の視線』『相手が死ぬ瞬間の顔』『本気で怯える無力な村人AI』それらに耐えられなかった。
確かに相手にした魔族軍も大して強い奴らの集まりではなかったと思う。
ギルド側の強さのランキングでは中の下程かも知れない。しかしその哀れにも蹂躙された魔族軍はランキングでは上の下ほどの位置に属する上位の魔族軍だった
しかしそれでもギルド間戦争は普通のフィールド戦闘と変わらなかった。
そんな光景を見ていられなかった。
俺、佐々木信はその時大学生だった。すごく時間を持て余していたのは事実。
だからこそ無駄と言える正義感が働いたのかもしれない。
そのあとすぐに魔族側に転生した。
あの日チャットで怒られることもなく大笑いされたのは今でも忘れられない。
大笑いされたあとで言われた「楽しそうだから俺もやろう」というあの言葉には驚かされた。
友人も長く一緒にやっていたパーティメンバーがいろいろ理由で引退したため大手ギルドになったとは言え残る理由もなかったらしい。
転生でははじめは選べない高位の種族に転生できる以外にメリットはない。
しかし技や呪文などは失う。レベルのもちろんだ。
魔族側の序盤のレベ上げは冒険者側の倍以上とも言われている。職によっては10倍とも。
そのため普通ならしない。
なにしろレベルを上げるには冒険者を狩らなきゃいけなかったかなら。PVPだよ
だがしかし俺はギルドやフレンドの全てを捨てて転生した。
そして魔族軍『救世軍』立ち上げた。
なぜNO.1まで上り詰めれたのか今でもわからない。
たまたま同じように考えてた同士がギルド内にいて。
たまたま高レベルの魔族と知り合い。
そんなたまたまの積み重ね。
しかしそれでもここまで来た。ランキングNo.1ギルドまで成長した『セイバー』と戦う日が。
頂上決戦。魔族軍優勢。ここまできたら勝つ。
そのとき軍の本部を置くテント内に一人入ってくる。
…報告係だ。
「報告。今しがた戦闘隊長のマルマルーニさんから敵の長を討ち取ったとの報告」
「それを運営が確認。…勝利です!!」
報告係からも報告は我が軍の勝利。その瞬間軍の全員に経験値とボーナスアイテムが配布された。
「やったぞ!勝利だ!」
「世界NO。1だぞ!」
「すげぇ!かなりいいアイテム配布されたぞ!」
「軍団長はなに配布された?軍団長なんだからかなりいいアイテムだろ」
「軍団長の表情固まってやがる(笑)相当だぞこれ!」
俺は何も言えずにいた。勝利が確定しアイテム配布された瞬間目の前に扉が現れたのだ。
反応からすると自分にしか見えていない。
「…扉だ。目の前に扉がある。」
すると一斉に笑い出す
「何言ってんだよ。嬉しすぎて視界にバグ起きたか?」
「どこにあるんだよ。視界バグだろ」
しかし次の俺の一言で全員の表情が変わる
「…もしかして未だメール上の存在の運営と接触できるとか?」
その一言に皆反応する。
「それあるぞ!」
「羨ましいな!」
「いや!ありえないだろ!」
「でも頂上決戦で魔族軍買ったの初めてだろあるかもしんないぞ!」
「いってこいよ!」
「存分に魔族側の溜まってた文句行ってこい!」
「いってこいよ!」
俺はその友人の一言で決心し
「行ってくる」と言いその門をくぐった。
そして門の先で見たのは
テントも俺の軍もなく
ただただ広がる草原
一つ言えるのはここが決戦場の草原ということ
「…何が起きた?」
俺は全てを失ったかもしれない。