下校デートでも三次元の女に興味はない
ゆっくりしてってください。
「鳴宮 太一君おられますか?」
は?何教室まで押し寄せて来ちゃってんの?俺の優雅な幽霊部員生活を何邪魔しちゃってくれてんの?お前ゴーストバスターなの?
「すいません部長!今日ちょっと体調が優れないので帰ります」
「そうですか、それは丁度いい。なら今日は下校デートとやらのシミュレーションをしましょう」
何のためらいもなくそういうこと大っきい声で言わないで欲しいなぁ〜。大体の女子高生は耳に好都合音声変換機能がついてんだから。変な噂なんてすぐ広まっちゃうよ、きっとヤホーよりも早いんじゃないの?
「すいません、でも今日は本当に迷惑をかけてしまいそうなので、一人で帰ります」
「そんなに体調が悪いんですか?それは心配ですね、私が介抱しましょうか?」
なーんでそーなるかなぁ?本当こいつ俺のこと好きなんじゃないの?てか完全無欠な無表情で "心配ですね、介抱しましょうか?" とか言われても、社交辞令にしか聞こえなくて逆に傷つくわ。しかし、このままでは本当に噂では済まなくなる。今日のところは観念するか。
「おい、太一!先輩にここまで言わせちゃダメだろ?」
斎君マジでちったぁ空気読んで欲しいなぁ?いま、観念しようと思ってたところなんだぁ?お前は反抗期の子供を持つオカンか!?中2の時どんだけオカンに "いましようと思ってたとこなんだよ!" でいったことか?しかも、またそーゆーことゆーと女性陣勘違いしちゃうから。
「そうだな、じゃあ部長!ご迷惑お掛けします!」
この流れで言うとなんか卑猥に聞こえるのは俺だけだろうか?きっとAVの見過ぎだろう。
少しざわつかれながらも部長と一緒に帰路につく。ある程度人がいなくなったところで、
「何考えてんの?その超合金の下でどんなことが起こってんの?」
「超合金?さっきは後輩君を迎えに来る優しい先輩を演じてみました、テヘペロ☆」
びっくりしたぁ、なんでそのテヘペロだけめっちゃ表情豊かに可愛いさアピールしてくんの?キュンキュン通り越して心臓止まるかと思ったわ (驚愕)
「しかし、下校デートをシミュレートといっても何をすれば良いのか分かりません。基本、下校デートではなにをすれば良いのでしょか?」
「下校イベントと言えばいろんなお店に寄り道してキャッキャウフフが定番でしょうが!?」
「そうなのですか?」
「そうなのです!」
「では、少し前から気になっていたカラオケとやらをしてみませんか?」
「良かろう」
カラオケと言うのは実際アニソンしか知らないオタクにとっては本当に地獄のような時間でしかない。しかもそれがあまり上手くないときたら、それはもうマイクを使った拷問。あ、いまあらぬことを考えた奴はきっと俺と仲良くなれる。
二時間後、
「え?なんでお前演歌しか歌わないの?何回 "知らず知らず歩いて来" る気なの?」
「私は演歌が大好きなのです!」
「知んないけど。しかも、無表情でめっちゃこぶしとかきいてて口パク疑うわ!あんな無表情でどうやったら97点とかとれんの?意味不明だよ!」
「カラオケは好きな曲を自由に歌う場所だと聞いていたのですが?」
「基本的にはそうだよ?!でも、デートだよ?一人でたのしくなってどうすんの?どっちもが楽しくなるためにするもんでしょ、デートって」
やっべ、彼女いない歴=年齢のDTがデートについて熱く語っちゃったよ!お前にデートのなにがわかんだよ?
「鳴宮さん天才ですか?なるほどデートとはそういうものなのですね!」
こいつ恋愛の勉強する前に人としての勉強した方がいんじゃないか?そして無表情なのに心なしか笑っているように見えるのは俺だけなのだろうか?
ん?あれは誰だ?誰かがこっちに手を振っている。
「おーい、実!」
なんだ、部長の友達か。友達いるんだ。
「あ、千春。こんにちは」
「どうしたの実?そんな満面の笑みで?」
満面の笑み?いや、もろ無表情だけど?
「さっき、鳴宮君にデートの本質について教えてもらったのです」
「デートの本質?そんなこと語っちゃうようなチャラ男がなにしてんの?」
怖い怖い。そんな気なかったんです、言ってから自分でも後悔してます、反省もしてます、だからせめて命だけは。
「いえ、鳴宮君はチャラ男ではありません。世間一般で言うオタクであると思われます」
「1年4組の鳴宮 太一だ」
「へぇ?太一君?で、うちの実をどうしようっての?」
「ど、どうしようって?なにもしないけど?」
「本当にぃ?デートについて熱く語っちゃうような痛い子なのにぃ?」
「関係ないだろ?あと、そのことはあんまり引っ張るな。自分で言って後悔してるんだ」
あんまり詰め寄られると、、近い近いよ!あ、この人胸大っきいな。
「へぇ?彼女は?」
「いない」
本当に大っきいな、俺の予想はEかFだな。
「恋愛経験は?」
「ない」
くっ!もう少しよれば谷間がみえそうなのに!しかし、見えようとしたその時千春先輩は俺の顎をつかんで
「まぁ!!スケベなのは置いといて、キミなら大丈夫ね。手を出すような勇気も無さそうだし。下手なことしたら沈めるわよ?」
「随分と乱暴な顎クイだな。お手本見せてやろうか?」
「女にしたこともないくせに」
「男にもないわ」
強気で巨乳、なんとどストレートなツンデレキャラだ。きっと彼氏とかには甘えん坊さんなんだろうな。
「なににやけてんの気持ち悪い」
「もともとこういう顔だ。あといくら罵倒してもムダだぞ。こちとらオタクという人種なもんでその手の罵倒には慣れてんだよ」
「可哀想にっ!」
「そんな同情にもなっ!」
俺は先輩の手を振り払い身なりを整えた。
「自己紹介が遅れたわね。私は実の親友の高崎 千春よ。よろしく後輩君」
自分から人の親友を名乗る奴にロクな奴はいないソースはギャルゲーだ。