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三次元の女に興味はない  作者: これでいいのか?
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入学式だからって三次元の女に興味はない

ゆっくりしていってください

 桜舞い、ほのかにあたたかい日差しが差し込む今日、俺はこの私立雅ヶ丘高校に入学する。

 高校生といえば青春、恋、リア充というイメージが絶えない。学校終わり、可愛い彼女と帰り道色々な店に寄り道しながら帰る。そんな妄想をした時期が俺にもありました。たがそれは妄想で幻想であることなど俺にはもうわかっているのだ。確かに俺の周りの奴らは今日この入学式という雰囲気にす酔って騒いでいるが、俺は違う。そう俺はオタクなのだ。しかも自己評価ができていないような痛い奴らとは違う。世間から見た自分の評価も十分にわかっているのだ。女子からすれば男子が読む漫画は少年漫画、腕が伸びたり、バスケしてたりする漫画だと思っていることも。ライトノベルというだけで目には見えない一線が引かれることも。高校に入ったからと言って女子が変わるわけではない。つまりは俺に青春など待っていないのだ。裏切られるなら期待しないほうがいい。俺は俺の好きなように灰色の青春を謳歌するのだ。

「おい今日入学式だぞ?もうちょっといい顔しろよ?」

 そういってもう女の子に囲まれているこのイケメンは幼馴染の"藤原斎"だ。こいつは小さいころからとにかく女にもてる。確かに悪い奴ではない。しかしもてすぎるのだ。世の中は結局顔なのかと思わせるほどのルックス。そしてそのルックスを裏切ることのない頭脳。英国紳士顔負けの性格。とにかくこいつは完璧すぎるのだ。これまで何度女子にラブレターを託されたことか。俺このまま日本郵政に就職しちゃうんじゃないの?

 そんなこんなで俺は入学式という、高校生活が始まるという事実に何の感情も抱いていないのだ。

「お前はわかってないんだ、俺がこの先どんな生活を送るか」

 まあ俺にはアニメがある、漫画がある、ゲームがある。

「どんなって、このさきの高校生活を思い浮かべるだけで楽しみで仕方ないだろ?」

 こいつこれを天然で言ってのけるからたちが悪い。だがオタクは器が大きいのだ。俺は知っている、ギャルゲーのイケメンはみんなにやさしいが、彼女は作らないのだ。

「俺とお前じゃ次元が違うな」

「そんなにすごいことすんのか?」

 こいつ。

「あぁ、すごいさ。現実とは思えないほどに」

「へぇ、昔からお前はすごい奴だと思ってたけどそこまですごい奴だとは思わなかったよ」

 ときどきこいつの笑顔が俺を嘲笑っているようで、死にたくなる。

 まぁ、世の中不公平に出来てる事なんてとっくのとうに分かってる。ゆとり教育が失敗したのは「みんなに平等な個性の尊重」という矛盾を抱えていたからだ。個性を尊重するという教育ほど残酷で能力主義的なものはない。個性というのは言わば才能だ。

 人は持ってるものを使う他ないのだ。例えそれがどんなに役に立たないものでも。


「おい藤原、部活は何入るか決めたのか?」

「俺か?俺はサッカーだよ。ずっとやってるし高校でも続けるよ」

 この高校は必ず何か部活に入らなければならない。しかし、俺は部活に入って他の奴らと馴れ合うつもりなんてさらさらない。

 何か楽そうで幽霊部員になれそうな部活はないだろうか?

 俺は運動は出来ない。マネージャーもする気はない。だからグラウンドには用はないのだ!

 文化部棟を歩き回り楽そうな部活を探す。途中吹奏楽部に出くわし、やー何あの人気持ちわるーいっていう目でこっちを見ながら

「やー何あの人気持ちわるーい」

 て本当に言われたけど全然落ち込んでなんかない。

 なんで文化部の中では吹奏楽部が一番でかいツラするんだろうな?なんかあいつら楽器弾くことによって自分がちょっと有能なんだと勘違いしてないか?いや、いまdisってんのは別に悪口言われたのとは全く関係ない。


 そんなこんなで適当に歩いていたらだいぶ奥まできてしまった。そしてそこにあったの "恋愛シミュレーション部" というオタクとしては見逃すわけにはいかない名前の部活があった。


「たのもーう!恋愛シミュレーション部というのはここか!その名を冠しているからにはそれなりの実力があるのだろうな!」

 やばい、オタクの血が騒ぐぜ!え?てか、部員一人?

「なにを頼まれているのかいささか理解しかねます。かつ、何の実力を問われているのかもわかりません。仮に恋愛についての能力を聞かれているのであれば、ここは恋愛のシミュレーションをして本当の恋愛に備えるための場所なのでそれ相応の実力かと思われます」

 なんだ?この女めっちゃ無表情。鉄仮面超えて超合金だよ。そんな淡々と説明されても……言葉に温度なさ過ぎて凍えるわ。かつ、その端正な顔立ちがマネキンみたいでより怖い。

「ゲームしないならなにをするってんだ?」

「だから言っています。恋愛経験が少ない人が集い、その少ない恋愛経験を補うためにシミュレーションを行い、本当の恋愛をするときに備えるのです」

「それ自分で言ってて悲しくならないのか?」

「全く、素晴らしき向上心だと思います」

 ほんとに表情がピクリとも動かないから冗談で言ってんのか本気なのかわからんな。どこぞのケツみたいな名前のAIのほうがよっぽど抑揚つけてしゃべるぞ。

「部員は?まさかお前一人か?」

「はい」

「じゃあ普段どうやってシミュレーションしてんだよ?」

「一人で二役します。見せましょうか?」

「いやいいこっちまで恥ずかしくなりそうだ」

 しかし、これは丁度いいかもしれん。部員は一人、活動内容は意味不明だがだからこそ幽霊部員になってもしれっと適当にやり過ごせそうだな。

「よしいいだろうこの部活に入ってやろう!」

「それは良かった、ではそこの入部届けにサインお願いします」

 都合のいい部活が見つかってよかった。これで俺のオタクライフは守られる。


 ……かと思われた、しかし現実はそう甘くわなかった。次の日の放課後、俺は悠々自適に幽霊部員を満喫しようと即座に帰路についた。しかしそのハッピーライフも一瞬にしてあの女に砕かれた。


 ホームルームが終わり、俺は事前にまとめておいた荷物をもって帰ろうとしていた。その時、ホームルーム終了のチャイムがなり終わるか終わらないかぐらいのタイミングで勢いよく教室の後ろのドアが開いた。

「失礼します。2年7組の堅岡 実です!鳴宮 太一君おられますか?」



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