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第2章-19



 走り続ける俺は息が上がっていく。

 スタミナにはあまり自信がない俺にはとてもハードなランニングだった。


 あれ?こんなに遠かったっけ?行きはあんなに近かった気がしたのに。

 いつのまにかナナとの距離がこんなにあったのか……近いって思ってたけど、自分から遠くにいってたのかもしれない。

 そこまで離したつもりがなくても差が広がっていたのか……。



 ようやく待ち合わせである小屋の近くに着いた俺はいったん足を止めて、息を整えた。

 こんなに走ったのっていつ以来だ?

 あ、でもそんなに前でもないか。

 ナナがいつもどんどん前いっちゃうから追いつこうと走ってたっけ俺。

 あいつ見た目ギャルのくせしてかなりのゲーマーなんだよな。

 色々なことを思い出していると思わず笑いが込み上げてきた。

「くっ、ギャップありすぎだよ」

 短い間だったのにナナとはだいぶ前からの付き合いのように感じる。

 なんでだろう。

 ……やっぱり、ナナと狩ったり、装備品とかを買ってた時が一番楽しかったんだな。

 1人でのゲームはたしかに楽しい。

 だけど、やっぱ2人で通信したり、バトルしたり、一緒に楽しむ方がもっともっと楽しいんだよ。

 自分自身わかってたけど、でも怖かったんだ。

 ナナのためとかカッコつけてるけど、本当は……


 本当は自分が傷つくのが怖かったんだ。


 また殴られたり、ひどい目にあったりするのが嫌だった。

 それに本当はナナだって俺のことただの短期パートナーとしか思ってない。仕方なく組んでるんだ。ギャルでカースト上位のナナと俺が一緒にいると迷惑だって、そう勝手に思ってたんだ。

 でも、そんなのって間違ってる。

 俺は逃げてるだけなんだ。

 だから……向き合わなきゃいけない。

 例え俺が思ってたことを本人が本当にそう思っていたとしても、はっきりさせなきゃいけないんだ。

「だから……」

 俺はぼそっと言い、ナナのいると思われる小屋に行った。


「あ!」

 やはりナナは小屋の前に居た。

 もう何時間も経っているというのに、ナナはそこに居たのだ。

 急いで駆け寄ろうとしたが、ナナが1人だけじゃないことに気が付いた。

 俺は踏み出そうとした足を戻し、身を隠す。

 誰といるのかと、バレないように覗くと、そこには俺をぼこぼこにした長身の男子生徒がナナと会話をしていた。

 男子生徒はにやにやと楽しそうに話している。

「う……」

 俺は急に寒気に襲われた。胸が痛む。

 心の中で怖いっと叫んでいる。

 今すぐにでも逃げたいと思った。

「2人はグルだったのか?」「俺の悪口でもいってるのだろうか」「待ち合わせは俺をからかうため?」

 事実でもない悪い思い込みが俺の頭中を何度も過る。

「う……気持ち悪くなってきた……」

 吐き気まで襲ってくる。

 やっぱ俺とナナはあの男が言った通り、一緒にいちゃいけなかったんだ。

 俺は底辺のぼっち。方やナナはクラスのトップで友達もいて、男子からもモテて……。

「身の程をわきまえろって感じだよね……」

 思わず笑みが漏れる。

 全然嬉しくもないのに。

 本当は泣きたいのに。


 現実はゲームじゃないんだ。

 そんな上手くいくような甘い世界じゃない。

 だから、もういいや。

 俺は俺で一人でコツコツやればいいんだ。

 最初から決まってたことだし、わかってたことだし。

 そう思った俺はその場を後にするため、後ろに向き直る。

 一歩、一歩後ろに下がった。

 元来た道へ。

 俺には孤独がお似合いだよな。

 俺は必死に瞳からこぼれ落ちそうなものを抑えた。

 ちょっと気を許せば流れてしまう。

「早く行かないと」

 そう思い俺は走ろうとしたが、何を思ったのか後ろを振り向いてしまった。

 ナナの顔が最後に見たかったのかもしれない。

 正直、俺にもわからなかった。

 けど、そうしないといけない気がしたんだ。


「……あれ?」

 俺の気のせいなのかもしれない。

 だけど、俺にはナナが嫌そうに見えた。

 たしかに顔は笑顔だが、やや引きつっているようにも見える。

「……そういえば」

 俺はあることを思い出した。

 ナナは男の人が苦手ということ。

 理由は知らないが……かなり苦手らしい。

 もしかしたら、今、ナナはピンチなんじゃないか?

 ナナは本当は嫌がってるんじゃないか?

 いや、そもそもその情報が嘘かもしれない。俺の思い込みかもしれない。考えすぎかもしれない。


 だけど、今はそんなこと言ってる場合じゃない!

 もう逃げないって決めたんだ。

 例え恥ずかしい目に合うことになったとしても……見過ごせるわけがない!

 たった少しの間だけで、ただのゲームだけでも、俺のーー


 パートナーだから!



 俺はナナたちの方へ歩み寄る。

 どんどん前へ。

 するとナナたちの会話が耳に入って来た。

「もう一緒に行こうよぉ?ね?」

 男が女慣れしてるようにそう言う。

「ごめんなさい。あたし今、人を待ってるから」

 ナナが怖がりながらもそう言い返す。

 男との距離が近いこともあって、体が少し震えてるようにも見える。

「ん?お友達?それともこれ?」

 っと小指を立て、揺らす。

「どれも違う、かな……。その人は……あたしの……」

 ナナは苦笑いをすると、続けて言った。

「あたしの大切なパートナー、かな」

 ふわっとした笑みではっきりとナナは言った。

「えぇ!?」

 思わず俺は声を漏らす。

 それになんだか顔が熱くなってるような気がした。

「それって、まさか……」

 男がそう言いかけると、パッと横を見た。

 初めは驚いた様子だが、すぐにチッと舌打ちする音が聞こえる。

「なんでお前がここにいんだよ」

 男は明らかに表情が悪くなる。

 一気に不機嫌顏とかした。

「えっと、そ、それは」

 俺がその答えに戸惑っていると、俺の代わりにナナが答えた。

「あたしが呼んだから!」

「は?」

 ナナの言葉が聞き取れなかったのか、あり得ないっと言いたげな顔をする。

 すると、男は俺に向かって言う。

「お前さぁ、そんなにまたやられたいわけ?ふっ、ドMちゃん?」

 あざ笑い続ける。

「殴られたくなきゃ、とっとと失せろ。邪魔すんじゃねえよ。この底辺のカスが」

 わざとナナに聞かれないよう俺へこそこそと言う。

 こいつ……。

 さすがの俺も……頭に来ていた。

 それに、こんな俺のために我慢してここでずっと待っていたナナのためにも……俺は


 ここで引き下がる訳にはいかないッ!


 俺には考えがあった。

 それを実行……してやる!


 まず俺は笑顔で言ってやった。

「失せるのは君だよ……この小心者が」

 すると男は見る見るうちに顔を真っ赤にして(もちろん照れている訳ではない)、今にも掴みかかって来そうな勢いで怒鳴り散らした。

「てめえェ!ここSRRだからって調子に乗ってんじゃねえぞッ!」

「やっと表舞台に化けの皮が剥がれたな」

 俺は煽るように男に向かって言う。

 ビクビクとビビっているイメージであろう俺に馬鹿にされることは大層腹立たしいことだろう。

 クラスのボッチで、底辺で、顔も普通、運動も普通、勉強も普通、何も取り柄もない俺に下見される。

 こんな屈辱はないだろう。

 ましてやこいつ、何だかプライド高そうだし、それにちょっとナルシスト入ってるだろうから尚のことのはず。

 だったら、

「屑がぁ、調子に乗ってんじゃねえぞッ!」

 男は俺に向かって腰から片手剣を抜き、斬りかかって来た。

 俺はそれを剣で受け止め、跳ね返す。

「クソっ」

 怒り奮闘の男は俺に攻撃を防がれたお陰でさらに苛立ちが増しているようだ。

 ナナに関しては、何が何やらわかっていない。

 それもそうだよな。

「ちょ、ちょっとやめなさい!デュエル以外で攻撃をしたら……」

 そう、それが俺の目的だったんだ。

 お互いの承認の上でのみ行われるデュエルとは違い、普通にプレイヤーがプレイヤーを攻撃した場合。初撃で警告のオレンジ、二度目はレッドプレイヤーという証である赤へとカーソルが表示されてしまうのだ。

 つまり今、目の前で俺に斬りかかった彼のカーソルはオレンジになってしまった。

 赤は1週間街には入れなかったり、入れても施設が使えないという決まりがあったり、街でもキル可能になったり街それぞれでルールがある。

 だが、オレンジは2、3日でそれが解けるため、ここで止めれば苦労はしない。

「もうオレンジだし、引いてくれないか?」

 俺が男へ提案をする。これが俺の当初から予定していた作戦だ。

「…………」

 男は自分のカーソルがオレンジということに気づき、固まる。

「そうよ。もうここで引いて、お願い……」

 ナナは黙る男に対して続ける。

「これ以上やったら、赤になるよ。そしたら……」

「…………」

 すると男はニヤつく。

「危ない!」

 俺は慌ててナナの前に出る。

 すると、グサリとお腹に違和感を感じた。

「……お、お前……」

 俺の腹にはーー

 男の剣が突き刺さっていた。

 男の表情はついさっきまでイケメンフェイスではない。

 もはやその面影が消えている。

「うるせえんだよ。どうせオレンジになったんだ。レッドになろうが、変わんねえだろーが!」

 叫び散らす男に俺は足が竦みそうになる。

 こいつ……もう可笑しい。壊れている。

 怒りと成績、名誉。

 たかが学校のことであるが、されど学校。

 今俺らは学校で暮らし、学校で生活している。

 外の世界は卒業、またはHP全損しない限り出ることはない。

 つまり俺らの全てが今は学校なのだ。

 それが彼の頭を支配したのだろう。

 オレンジになってしまえば、周りの奴も教師も白い目で見てくるだろう。

 入学早々、オレンジとは何をやっているのかっと。クラスカーストももちろん下がる。

 それがコイツにとっては非常に嫌なことなのだろう。

 だから、

「絶対に生きて帰れると思うなよ……」

 息を荒くして男は続けて言う。

「絶対にゴミの分際でうぜえんだよ。顔も俺よりも不細工な癖して、ナナちゃんと話している……それがたまらなく気色悪いんだよ!」

 すると、ナナが割って入った。

「サクヤはゴミでも屑でもない!サクヤは少なくともアンタよりも強くて優しい。それにアンタよりはマシな顔してるわ!」

 その言葉は男が怖いにも関わらず、強くはっきりしていた。

 ルミの表情は真剣そのものだ。

「…………」

 すると男は黙って、だらっと身体を俯かせる。

 そして、

「クソがあああああああああ!」

 男は俺に向かって剣を突き刺して来た。男は頭に血が上って正気ではない様子だ。

 俺はそれを剣を使わず、爺さんとの特訓を思い出し右へ躱す。

「チッ」

 コイツはこの10日間。きっと遊んでろくにSRRもしっかり取り組んでいないだろう。

 友達とだらだらとくだらない話をして、女子に手を出し……

 そんな奴に

「俺が負ける訳がない!」

「うるせえええぇぇええええええ!」

 俺の剣と男の剣が金属の強い音を立てぶつかり合う。

 力の押し合いだ。

「俺はこの10日間、お前とは違って……どっかの誰かさんのお陰でずっとレベ上げしてたんだ。ずっと戦って……」

 俺はこの10日間を思い出し剣に力が加わる。

「ケッ、そんなつまらねえことやってるからいつまでも」

「つまらなくない!」

 俺は力強く否定し、剣で押し切る。

「物凄く楽しかった!口は悪いし、冷たいし、自分勝手だし、滅茶苦茶だす……でも、それでも……」


 楽しかったんだッ!


 敵を倒すたびにしたハイタッチ、いつもよりも奥に進んだあのドキドキ、貯めたゴールドで買った装備、レベルが上がった時のあの感動。

 その全てを俺はルミと共有して来たんだ。

「さっさとくたばれッ!」

 俺は右手に握る剣で相手が攻撃を繰り出す前に剣を突き出す。

「あ……」

 俺は男の剣を見事弾き飛ばすことに成功し、男は固まってしまう。

「あ……あ、……はっ」

 男の頭から大量の汗が流れる。

 焦り、恐怖。

 男からその2言葉が伺えるほど、彼は冷静を失っていた。

「……もう、諦めてくれないか?」

 俺は落ち着きのない男に告げた。

 男はその言葉を聞くと、ふぅ〜っと自分を落ち着かせ、顔を伏せながらこくりと頷く。

「……はぁ」

 俺も安心のため息を吐いたその時だった。

 スキルを発動する光が俺の瞳に映った。

「あ……」

 しまった……。

「この馬鹿が!そんな簡単に反省するわけねえだろーがッ!」

 男が吐き捨てて言うと、光る剣を俺へ向け突き刺す。

 俺と男の距離は近すぎて、避けられる距離じゃない。それに、気を緩めたせいで体がすぐに反応出来ない。


 終わった……。

どうも白川みつきです。


殴り書きして書き上げたので誤字や表現に可笑しな所があると思うので、指摘など感想お願いします!


そして、設定の大幅変更や文体やストーリー修正のため、第2章をもちまして完結させる予定です。

第1章、第2章の修正、第2章以降のお話(第3章)に関してはまた新たに連載として公表すると思います。

ですが、都合により公表が2017年4月とかなり遅れる予定ですので、どうかその日まで待っていて下さい。お願いします!


そして話が戻りますが、次回。第2章-20。第2章完結、そして『セカンド・ワールド・オンライン』一旦、完結です。

(第3章、第4章のプロットは出来ているので、まだまだネタは尽きていませんよ!!)


それではお楽しみに!


ではでは。

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