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第2章-11


ナナさんの表情を見て俺は驚いた。

「ど、どうしたの?顔色悪いけど」

ナナさんの額には汗が、それになんだか呼吸も荒い。

「べ、別に大丈夫だから。気にしないで」

「いや、でも大丈夫じゃないよ」

と俺が心配でナナさんに近づくと大声で否定された。

「大丈夫だって言ってるでしょ!」

どこからどう見たっていつもとはまったく違う。

それはたかが出会って3日目でしかない俺でさえわかることだ。

「さすがの俺だって、今ナナさんが大丈夫じゃないってことぐらいわかるよ?わかるのに」

とまで言うとナナさんの強い口調に阻まれた。

「わかるならむしろほっといてよ……」

そう言い、崩れてしまった。泣いてはいないとは思うが、膝を抱いてその場に座っている。

「な、ナナさん?」

俺がゆっくりとナナさんに近づくとぼそりと呟いた。

「教室……今、誰もいないと思うから、ついて来て……」

とだけ言うと顔を下げたままゆっくりと立ち上がり、自分たちの教室へと入っていった。

俺も黙って教室に入る。するとナナさんは教室の入り口近くにある椅子に腰をかけた。

えっと、俺も座っていいんだよな?っと少し迷ったがナナさんの隣の席へと座る。

「……アタシ、ね……」



***



「あ、アタシね。実はお姉ちゃんがいたの」

小学1年生のナナはよく男子からのいじめを受けていて、それにひどく悩まされていたのだ。

(なんであたしにいつも悪口言うんだろう。何もしてないのに……)

いつもいつもナナはそんなこと思っては涙をぽろぽろと流していた。

そんなナナさんを3つ上の姉が見て、慰めたり、守ってあげたりと、妹思いのいい姉だった。

「そんなお姉ちゃんのことがアタシも好きだったの」

「そうなんだ。いいお姉さんだね」

だが、ある日。

両親とのドライブ中に交通事故が起きた。

父親が運転する車が高速道路で他の車にぶつけられ、その時点で父親の意識はなくなってしまったせいで車が止まらない。

その時、姉はナナを守る為にナナさんに覆い被さり、抱きしめ続けていた。

強くしっかりと。絶対に離さないように。

「それで、お姉ちゃんのお陰なのかアタシは怪我一つしなかったの」

「そ、そうなんだ!」

と出来るだけの明るさを出してサクヤは相槌を打つ。

だが、話はまだ続く。

高速道路での曲がった道というのは後ろの車には見えづらい場合があり、そこで運転する人にはまさか前に止まってる車があるとは思わない。それに知るわけもなく。

速度も下げることはない。むしろ高速道路なんだから上がっていく。

「それで……」

さっきよりもナナの声のトーンがかなり下がる。

そして、後ろを走るトラックがナナの乗る車に激突してしまったのだ。

お姉さんは頭を強くぶつけ亡くなってしまった。

それだけではなく、重症を負った両親もその後病院で亡くなってしまった。

白い病院内の椅子に黙って座るナナがその事を一回で全て知らされた時。あまりのショックで涙さえも流れず、その場で意識をなくしたそうだ。

「アタシね。そのこと知った時はほんと頭の中真っ白になった……何もなくなっちゃったような気がしたわ」

「そ、それはそうなるよ。泣かなかっただけでも強いよ。ナナさん」

「違う。泣けなかったのよ。弱いから泣かなかったの。泣くとその事実を認めることになりそうで」

大切な家族であり、そして自分をずっと守ってくれた姉を失ったナナさんはひどいショックを受けた。

(あたし……一人じゃ生きていけないよ。……なんであたしだけ残したの?)

ナナがそこで味わったのは残った者の悲しさ、孤独さだった。

「一応、入院してたアタシは近所に住んでるお母さんの方のおばあちゃんに引き取られたの」

「そ、そっか」

サクヤの声のトーンもナナの話を聞くたびに下がっていく。そのせいでさっきから曖昧な相槌が続いている。

「それで同じ小学校にいつものように登校する日がはじまっちゃったの」

(学校に行けば、嫌なこと忘れられるかな……)

そんな思いでナナは学校に通う決心を決めていたのだ。

だが、いややはりと言うべきなのか現実はそう甘くはなかった。

ショックから立ち直れない状態であったのにも関わらず、男子のいじめは終わらなかった。

(うぅ……うぅ……)

そして、また前のように泣かされていた。

前と変わらない。だが、前と違うのはもう慰めたり、守ってくれる姉がいないということだ。

転校したいと思ったことは何度もあったが幼いながら祖母に気を使い一切口にはしなかった。

転校のこと、もちろんいじめのことも。

「さすがにそれでもいじめる男子無神経すぎるだろ!」

思わずサクヤが拳を強く握り、怒った。

「なんでアンタが熱くなってんのよ」

思わず笑ってしまうナナにサクヤはキョトンとした顔になった。

「まぁ知らなかった男子もいるし、子供ってそういうものじゃない」

と言ってはいるが、当時のナナは尋常じゃなく嫌で仕方なかった。


そんなナナさんの唯一の生きがいがゲームになっていた。

おばあちゃんがナナさんに元気付けさせるために買ったRPG。

それにナナさんはハマった。しかもどっぷりと。

それからナナさんはゲーム自体にハマっていった。これまたどっぷりと。

学校が嫌いでも、両親がいなくても、大好きな姉がいなくても

(……大丈夫。アタシにはゲームがある)

もはやナナにはゲームが鎮痛剤のようなモノへと変化していったのであった。

そして、小学校卒業。

いじめはもちろん収まらないまま卒業を終えたナナは私立中学の女子校へと入学し、男子から距離を置いたのであった。


この男子からのいじめと家族を失ったショックが混ざり合い。ナナは……

「アタシ男性恐怖症になっちゃったの」



***



「そ、そうだったんだ」

俺はそれぐらいしか言えなかった。まったく情けない。もっとなんか言えることがあるはずなのに。


……俺はこんな自分の弱さが嫌いだ。



こんにちは!

白川みつきです!

お約束通り、今日中にまた更新しましたよ!


っというのは置いといて、

今回はナナさんの過去に触れさせていただきました!

次回からラストスパート!

第2章 最後の山場にご期待ください!


ではでは!


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