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第1章-12

更新遅れて申し訳ありません。


今朝。

俺は悲鳴を上げそうになる口を何とか抑えた。

たしかに昨日はお互い逆方向、つまり俺は右を向き、ユウは左を向いて向かい合うのは背中だけだったはず。

だが俺が目を覚まして一番最初に見えてしまった光景はユウの頬や唇。しかも顔が近い。

間近にある寝顔がめちゃくちゃ可愛いのだが、俺に観賞してるほどの余裕はなかった。

起きて早々ドキドキしてしまった俺は、ゆっくりとユウを起こさないようにベッドから出る。

「……もう……これこれいじょう……たたかえまふぇん」

とユウの寝言にふっと笑い、洗面所で顔を洗いに行った。

時刻は7時。

顔を洗い終えた俺がベッドを見ると、まだぐっすりと気持ちよさそうに眠るユウの姿があった。

昨日は暗くてよく見えなかったが、ユウの子供っぽいパジャマと小柄な体格がジャストミートして、感動するほど似合っている。それに、つっつきたくなるようなぷっくらとした頬が俺を誘惑して来てしまう。

小動物大好きな俺的には耐え難いが、さすがにハラスメント的な何かがありそうなので耐え。俺は起こして申し訳ない気持ちと、惜しい気持ちでユウを起こした。



身支度を済ました俺らは部屋を出て、装備と持ち物の確認をした後に村の北に出た。

その後はあっさりとしていて、作業は簡単。

狩場まで着いた俺らは、クエストで聞いた通りのゴールド稼ぎの効率が良いとされるモンスターをどがすか狩る。

こんな楽園にいたら億万長者だあ!っと思ったが、狩ってくうちにここのモンスターのリポップ率が悪いことに気づいた。

つまり最初にモンスターがたくさんいるが、全て倒してもそのモンスターたちが最初の数になるまで次に現れるのは、悪魔で俺の予測だが、数週間以上待たなければならないようだ。

だから、全体を通した効率を考えるとあまり良くないが、今日だけ使うのであればかなり効率がいいだろう。

「どんどんいくぞユウ」

「はい!」


俺らは借金分のゴールドを稼ぎ終えた後も、時間の許す限り狩場で暴れ回った。

俺らの息がかなりよく合うようになり、戦闘は楽に済み、終いにはハイタッチなんかもして、始めより距離が縮まったなっと思う。

今さらだが、モンスターたちにとって、敵が滅多に来ない楽園であったのに、いきなり来られて狩られるという非道な行為 (もはやどっちがモンスターかわからない)に何だか申し訳ない気持ちに俺は少しばかりなった。

そんな気持ちもあってか残りのモンスターを狩るのを止めて、帰宅をすることを俺は提案する。

「そろそろ街に戻らないと間に合わなくなるから帰ろう」

すると、ユウが何かを考えるように一瞬固まったが、すぐに受け答えた。

「そ、そうですね……帰りましょうか」

そう言ったユウの表情がどこか寂しさを感じた気がしたのは思い込みだろうか?と考えつつも、帰路についた。


帰り道ではたわいのない会話をして少し盛り上がった。いつもの狩場や武器の話。スキルの話。学校の授業のことなど、話尽くした。

行く時には長く感じられた道が短く思うほど会話が弾んでいた。それに、ユウの表情には笑顔が度々表れるようになっいて、そんな眩しい笑顔につられて俺も久々に笑っていた。



帰り道では敵との遭遇が少なく、居ても1匹や二匹の集団と少なめで、全てユウが軽くなぎ払っていった。

「そういえばユウの剣捌きすごいよな。やっぱ剣道と感覚似てるもんなの?」

「そ、そんなことないですよー!」

慌てるように手と首を同時に振るユウの表情がどこか嬉しいそうに見える。

少し早歩きをしてゴッホんと咳をして、俺の疑問に答えてくれた。

「……剣道とはやっぱり違うんですけど、場面場面で剣道の技が役に立つことはありますね。でもやっぱり、モンスターとの戦闘量が今の私に繋がってると思います」

明るい表情で俺の顔を覗き込むとユウは続けた。

「こういう時はこうするっていうセオリーが少なからずあると思うんですよね。も、もちろん私以外のプレイヤーさんもそうだと思うんですが……」

「なるほど…………たしかにな」

ユウの話に思い当たりが色々とあり、俺は深く納得していた。

「そ、そ、そういえばっ」

ユウが何かを言おうとした瞬間、見慣れているイノシシさんが3匹が現れた。止む終えず話を中断すると同時に腰に仕舞ってある剣を抜く。

俺の合図と共に俺らは敵に斬りかかった。



街に戻り、俺は自分の稼いだゴールドの半分と昨日の狩りで入手したレアアイテムをユウに渡してあげた。

トレード申請の途中、やっぱ申し訳ないと言って拒んでいたユウだったが、俺の気合の説得によって何とか承諾してくれた。

日は沈み、暗くなった夜空には三日月型の月が照らしている。

月明かりと一緒に夜風が当たり少し肌寒い。本当は風なんて吹いてもいないのに、脳の感覚が知らせていることに不思議だと思う。

このデータによってVRMMO開発が進んでいると聞いた時は驚きを隠せなかったもんだ。

っとまあ、そんなことはどうでもいい。

現在の時刻は午後7時。夕食を食べに帰ってきた冒険者たちが街を賑わらしていた。

「俺の契約はここまで、だね」

少し頬を緩めて言うと、またもあの寂しげな顔を見せたが、すぐにユウはいつもの表情で感謝の言葉を言ってくれた。

「そ、そう……ですね……ありがとうございました」

俺が「じゃあ」と言って後ろを向こうとした時、不意にユウが質問を投げかけた。

「また……また会えますか?」


「あぁ、きっとね」



***



年上の剣士とパーティーを解消した次の翌朝。

筋肉痛になった体を無理やりに起こしたユウは朝食を宿で取ると、身支度を済ませた。

オールヴィーンの街には鍛冶職や道具屋を営むプレイヤーがせっせと準備をしている中、ユウは朝から大変だなーっと関心していた。宿屋の二階の窓から眺め、顔を上げる。そこに広がる空が曇り気味だった。

(サクヤさん、今頃何してるかな〜?)

ふとサクヤのこと思い出してしまい顔が少し熱くなるのを感じ、ユウは今日は暑いからだと心の中で言い訳をした。

(結局、サクヤさんが何者なのかよくわからなかったな…………でもいっか)

また会えたら聞けばいいやっと呟き、階段を降りる。

そんな少女の表情はどこか明るく、希望に満ちているようだった。



メッセージには、8時にオールヴィーンの隣にある霧雲の森とだけ書かれていた。

「あれ?」

朝早いせいか、それともこの時間はすでに遅い方なのかプレイヤーの姿が見当たらないことにユウは少し意外に思った。

(えっと……)

はっとしたユウはメニュー画面を開き時刻を確認し、遅刻になってしまうと思い慌てて街を出た。

借金を先延ばしにした挙句に遅刻というのはさすがに不味いと思い早歩き。

筋肉痛で白い太ももが痛むが気にせず突き進む。

そして、歩き続けて10分か15分で霧雲の森に着いた。

このSRRでは森と街しかないため森の区別が付きにくい。そのため、ユウはメニュー画面を開くまではここが霧雲の森の入り口だとはわからなかった。

多少の違いを学校側は出してるつもりなのだろうが、全然わからないのが生徒の意見だ。

(えっと、どこにいるんだろ?)

きょろきょろとユウが辺りを見渡していると後ろから低い声がした。

「よおう、久しぶりだな」

その声の主はユウとの取り引き相手であるゴリゴだった。

本名でないのはたしかだが、本名は知らない。それどころかクラスや歳などの詳しい情報を何一つユウは知らなかった。

そもそもゴリゴとの出会いは武器屋でユウが憂鬱な表情で眺めていたとき、いきなり声をかけた人によって知り合ったのだ。

「もしお金が必要ならこの人の元を訪ねるといい」それだけを言い残して。

怪しいし、危険な匂いもしたが、その時のユウにはそんなことを考える余裕はなかった。

「そ、そうですね」

てっきり怒り狂ってるのかと思ったが今目の前にいる男が落ち着いていていることにユウは不自然さを感じた。

「金はもちろん用意出来たんだろうな?」

ニヤリと気色の悪い笑みを浮かべ、ゴリゴは尋ねる。

それにユウはこくりと頷く。

するとゴリゴは大柄な体格に似合わない手際でメニューウィンドウを開き鈴の音を鳴らすと、ユウの目の前にトレードの画面表示がされた。

昨夜聞いたトレード用効果音よりも暗い音色に聞こえたの気のせいだろうかとユウは一瞬思ったが、すぐに借金分の金額を押す。

YESを押し、向こうの承諾待ちになったところでゴリゴの口が開いた。

「ありゃ〜?これじゃあ足りねえなぁ〜」

わざとらしい口ぶりにユウの表情が固くなる。

「どうゆう意味ですか?」

「どーゆー意味も何も足りねえもんは足りねえんだよお!」

さっきより強い口調で言うゴリゴの表情にはあの気味の悪い笑みがまだ残っている。

「延長料金と延長時の利息で10万は超えるなあ〜」

明らかにおかしい金額にユウの表情が最初に増して曇っていく。

「10万なんて金額払えるわけないじゃないですか!そんな金額はおかしいです!」

自分でも驚く声の大きさでゴリゴに立ち向かう。

「いいからよお、さっさと持ってる金と持ち物全部置いてけッ」

もはやチンピラか不良のような要求に怒りよりも恐れを感じたユウは後ろに一歩下がる。

「それにてめえ、レアアイテムも持ってるんだろ?」

不敵な笑みで尋ねるゴリゴにユウは動揺を隠せない。

「な、なんでそれを?」

(このことを知ってるのは私とサクヤだけのはず……)

変な胸騒ぎがユウを襲う。胸がズキズキと嫌な感じがした。

「んなこたあーどぉーでもいいんだよお!さっさと出せよッ!」

身の危険を感じたユウは後ろに向かって走り逃げようとしたその時だった。

「おっとお嬢ちゃんここを通すわけにはいけないな〜」

だが、逃げることはできなかった。

金髪頭や青髪ロン毛などのチャラい容姿の男たちがユウの後ろに現れると、右からも左からも次々と現れた。

気付いたときにはユウの周りを男たちが円のように囲んでいた。人数は7、8人。

それだけではない。ユウが驚いたのは、男たちの頭上に赤いカーソルが付いていたからだ。

赤いカーソルすなわち、レッドプレイヤー。

人殺しまたはグリーンプレイヤーを攻撃したことがあるという証拠がそこには表示されていた。

「!」

ユウの足は震え上がり動こうととしない。

怖いという感情が体の動作を妨げている。

(動いて、動いて、動いて!動いてッ!)

何度心の中で叫んでも足は鉛のように動こうとせず震え続ける。

その震えが足から体へと広がり、全身がこのSRRでは存在しない状態異常、麻痺のように動かない。

ユウはアイテムも全て置いてこうとと考えたが、すぐにその案は頭を振り消えた。

ここでアイテムや武器を置いていってしまえば、わざわざゴールドを借金した意味がなくなる。それにアイテムを置いて生かしてくれる保証もない。

つまり、どちらにせよ相手の思うツボだとユウは勘付いたのだ。

思考まではまだ麻痺してないお陰で、ユウは戦う決心を決める。

(こんな、こんなところで、死にたくないっ)

震える手で腰にある片手用剣を抜くとユウを取り囲む男たちは笑い出した。

「そんなに震えて、戦えるのかぁ?」

「大丈夫かぁ〜?」

ゴリゴの隣の男が言う通り、ユウの震えは先ほどよりも増して剣を持つ手が右左右左へと小刻みに揺れる。

これでは戦うことすらできない。

モンスターとのたくさんの戦闘経験はこんな場合には使い物にならないことをひどく痛感したユウの表情は今にも泣き出しそうだった。

(学校……やめたくない。受験勉強あんなに頑張ったのに……それに叶えたい夢だってあるのに……それに)

剣を握る力が徐々になくなっていく。目の前も涙で歪んで見えてくる。

現在の社会問題とまでなっているこの学園の存在。

ゲームで争う、戦う、戦闘力を上げるために学習する。それはこの学園だからこそ認められていることだ。

それにこの学園の理事は色々な企業や大学と繋がっている、あるいは所持してるためにこの学園を卒業すれば推薦などで入ることができる。

だが、外の学校からするとあまりいい目では見てくれない。

そのため、編入を断る学校もあればある一定の学力がなければ入れてくれない。

紅葉学園のSRR制度は卒業できた者に栄誉を讃える。だが、卒業できなければ、何も残らず。世間からは高校生活をゲームに費やしただけとしか見てくれないのだ。

この学園に入るということはそのリスクを承知の上でのことでもある。

その事実があるからこそ生徒は生き残ること、成績上位を目指すことに必死なのだ。


ユウが剣を落としかけると同時に、目の前にいるゴリゴが走り迫って来た。

「おらあぁあああッ!」

初撃を受け止めようとするがユウの反応が遅く、体に直接ゴリゴの斧攻撃を食らってしまう。

HPゲージが一気に5/3になった。

(もうダメかも……しれない)

ユウが諦めかけたそのとき。

後ろから足音が聞こえてきた。

少しずつ、その足音が近づくのがわかる。

その音に反応したゴリゴは攻撃を止め、一歩下がり音がするユウの後ろに目を細めて見る。

霧のせいでよく見えないらしく、周りの男たちも目を細めた。

その音がどんどん近くなり、徐々に足音の主であるシルエットが明らかになった。

その足音の正体はサクヤだ。

まさかこんな形で会えるとは思っていなかったユウは驚きと嬉しさが混じり合う感情が湧き上がった。

(さ、サクヤさん⁉︎)

抑えていた涙がまたもや流れそうになる。

「あー……あんたかぁ〜」

ゴリゴが安心する大げさな動作を見せると、サクヤを歓迎するように手招きした。

ユウの表情はまたも曇っていく。

(う、そ、うそ……?)

唖然と立ち尽くすユウを素通りしたサクヤは、まるでユウが眼中にないかのようにゴリゴの元へ近づく。

「いやぁ〜、あんたのお陰でいい獲物が釣れたよ〜」

ゴリゴの言葉にサクヤは落ち着いた声で答える。

「そうか、そりゃあ良かった」

そのサクヤの言葉にユウは一瞬で凍りつく。

取り払われそうになっていた不安がまた戻り、得られそうになった安心が全て吹き飛んだ瞬間だった。

(……ど、どうして、そうして?)

なぜ?どうして?そんな言葉が頭の中で飛び交い、ユウを混乱させる。

「そ、そんな……う、嘘ですよね?サクヤさん?」

ユウの瞳には涙の粒が今にも溢れそうで、声を詰まらせている。

だが、その答えはひどく冷たいものだった。

「これが現実だ……人はすぐに裏切る。だから。簡単に人を信用してはいけないんだ」

サクヤの瞳には光が失っていて暗く冷たい。

そんな闇剣士の顔を見つめ、ユウはわずかであったサクヤとの冒険が頭を過ぎった。

一緒にモンスターを倒したり、アイテムをゲットしたり、たわいのない話をしたり、一緒に寝たり。

あの言葉や笑顔が全部嘘だったとはユウにはどうしても思えなかった。

すると森の奥からまた人影が……。

「あんたはもしかして……」

サクヤがそう尋ねると、長めの髪を右左と綺麗に分けているメガネをかけたインテリ風の男は、右頬を引きつらせ、にやりと笑いサクヤの質問に答えた。

「僕はギルド ブラッディー・デビルの幹部を務めてるFだ。今回は君のお陰だ。礼を言うよ」

礼儀正しくそう言うとサクヤに向かって右手を差し伸べる。その手を握ったサクヤは「ああ」とだけ言うと一歩下がった。

(……さ、サクヤさん)

その時のユウは何もできずただ立ち尽くすだけだった。

「それではこの獲物をさっさと狩ってしまいましょうか」

ゴリゴよりも不敵な微笑みで指を指す。

その指示を聞いたサクヤが一歩下がる。

ユウを囲む男たちが武器構え、ニヤニヤ笑う。

「すぐに殺すなよ?」

ゴリゴが言うと周りが「それゴリゴさんが言います?」と言いケケっと笑う。

ゴリゴがサーベルを引き抜き、剣を構えた。

それに伴い、「クイックチェンジ」と呟き手首を二度振る動作をすると右手が光出す。

その光が収まるとサクヤの利き手である右手に剣が出現した。

血のような黒寄りの赤色で全体が染まっていて、シンプルに見える刃の部分に細かいデザインがあり、片手用剣にしては細長め。それに細剣や長剣のようで、見た目が少し重さを感じさせる剣だ。

急に現れた剣を見るや否や、周りの男たちの顔が驚きへと変わっていく。

「⁉︎……そ、その剣は!」

周りのレッドが一同に驚く。

「血みたいな紅色の剣……あれって紅の(くれないのつるぎ)⁉︎」

「ってことは、こいつレッドキラーのサクヤ⁉︎」

次々と気付かれていくサクヤの正体にレッドたちの顔色が青くなっていく。

そんな顔を眺めながら不敵に笑う。

その顔はレッドたちより悪役のような表情だった。

「降参するなら、別にキルしないけど?」

サクヤはワザとらしく両手広げ、挑発染みた態度で言うと、案の定レッドたちの怒りを買った。

「ナメんじゃねえぞ!」

頭に血が上ったゴリゴを制すように未だ落ち着いているFがメガネを抑えながらこう言った。

「この状況わかってそんなことを言ってるのかい? 降参するのは君の方だろ?」

サクヤは今、四方八方のレッドたちに囲まれている。例えレッドキラーの異名を持つ剣士であっても内心「……この状況はさすがにきついな」っと思ってしまうぐらいのものだ。

だが、ここでサクヤに身を引くことは絶対にできない。

「その余裕。今すぐに消してやるよ、お前の存在ごとな」

一息ついたサクヤはキリっと表情を変貌させた。

(もう逃げるわけには……いかないんだッ!)

利き手に剣を構えまず前進してゴリゴに攻撃をすると見せたサクヤは、後ろに急方向転換する。

後ろにいたレッドたちはフェイントに引っかかったようで、少し力を緩めていた。

その隙を透かさず突くサクヤは、剣を左から右へ水平方向に(なぎはらう)。すると敵のHPは一瞬で3/2減った。

「な、なんだ。あの攻撃力」

攻撃を受けた男たちは自分の残りHPに唖然として立ち尽くしている。

その後ろでユウもサクヤの攻撃力に驚きを隠せない。

(サクヤさん、頑張って)

ユウは眼をぎゅっと(瞑って)祈るように胸の前で手を合わせる。

何もできない自分に情けなく、悔しい気持ちも募らせながら。

「ナメんなあぁああ!」

サクヤの水平斬りで4人の内唯一防御に成功したレッドが飛びかかった。

このSRRでは防御をしてもダメージをどうしても食らうようになっているため、飛びかかった男のHPが既に4/1は減っている。

「ッ!」

サクヤは男の剣を自分の剣で防ぐと、少しHPが削られた音がしたが、気にせず剣を引いて、男に向けて斬り飛ばした。

(これで4人あと4人くらいか……)

「隙だらけだあぁああ!」

「それはお前だよっと」

背中から来た敵のサーベルを右ステップで避け、そのまま踊るように回転して突き刺す。

(これで4人)

休む暇もなく、両サイドからレッドたちの刃物が襲いかかる。

「……しまった」

サクヤは両サイドの敵に集中し過ぎて、正面からのゴリゴが斬りかかって来るのに気づかなかった。

「終わりだぁぁああ!」

気色の悪い笑みでゴリゴが飛びかかる。

絵的には最悪だ。

「伊達にレッドキラーって呼ばれてねえよッ!」

サクヤは素早く剣を規定モーション通りに動かし、スキルを発動させる。

3連撃【スライドブレイク】。

効果自体はSRR内のスキルのため、3回の攻撃力が高いだけだが、その攻撃力がかなり強い。

「はあぁぁああ!」

右、左、そして正面に素早いスキルが発動され、敵のHPが4/1に減った。

「今から動いた奴は残りHPを0にする」

ユウがハッと気づいた頃にはF以外のレッドたちのHPが黄色や赤になっていた。

(す、すごい!剣も強いけどそれよりサクヤさんの剣技がすごい!)

さっきまでの威勢がなくなったレッドたちは両手を挙げ、武器を落とした。

だがまだ諦めない者が一人、いた。

「ふざけるなよ……俺はこんな所で捕まってたまるか!」

それは持ち前の冷静さを失ったFの叫びだった。

「ようやく本性を現したな」

サクヤは小馬鹿にするように口元をニヤリとさせる。

「所詮、お前の強さは武器だけ、つまり攻撃力のみ強化されているが、HPと防御力は低いまま」

「ほほ〜」

全て当たってるので感心するサクヤ。

「そんな奴に俺が殺られるハズない!」

自己への戒めを兼ねた断言に周りのレッドたちが呻きまた戦いに参加すると思ったサクヤだが、予想外にも戦おうと武器を拾い上げる者は誰一人いなかった。むしろ何かに気づいたような表情を浮かべるのみだった。

「来いよ?」

「ふざけるなァアッ!」

サクヤの手招きにキレたFは左腰から両手剣を抜き、走り迫って来た。

早速Fの2連続両手剣スキルがたて続けに繰り出される。すぐにそれをサクヤは単発スキルで防いだ。

スキルとスキルのぶつかり合いが、激しい振動と大音量の効果音をフィールドに鳴り響かせる。

(両手剣スキルは一撃のダメージが大きいけど、その分の消費MPと次のスキルを発動するのに時間が(掛かる)。その隙を突く!)

「はぁッ!」

だが、Fの盾によってサクヤの攻撃は防がれた。

「ふっ」

Fが笑みを漏らした。チャンスはサクヤの元からFへ移る。

Fがガラ空きの右上半身に狙いを定め、剣を突き出す。

「まだだッ!」

サクヤは盾に阻まれた剣を引き、目の真上というギリギリの角度でFの刃を(かわす)。

「な……⁉︎」

「終わりだ」

低い声と共にFのHPがガクっと下がり一桁まで落ちる。

「な、なぜそこまでの技術があるんだ!」

サクヤはユウを一瞬見ると、Fに答えた。

「経験だよ。今まで何百回もの対人戦をしてきた。その経験のお陰で次に何が来るか体が反応していくんだ」

「な……」

「習慣みたいなものだよ」

「もういいだろ?んじゃ、はっ!」

サクヤが剣を持ち上げるとFは慌てて悲鳴のように叫ぶ。

「あ、あ、ゆ、許してくれ!僕がやろうとしたんじゃない!上からの命令だったんだ!僕じゃない!」

醜く足掻くFにサクヤの冷たい瞳が光る。

「……その上って、誰なんだ?幹部のあんたならわかるんじゃないのか?」

剣を首に寄せて問い質す。

「本名は知らないし、会ったこともない。だが、僕のように別名がある」

「……」

サクヤは言えっと目だけで訴える。

「SCPだ」

「SCP?」

「何の意味だか僕にはわからないが嘘はついてない!本当だ!」

すると後ろから大勢の人が徐々に近づく足音が聞こえた。

「おっと、そろそろ来そうだな」

そう言うとサクヤはFから離れる。

「もうすぐここに俺が呼んだ生徒会と風紀委員面々の奴ら【聖守軍】が来る。後の始末はそいつらがしてくれるだろうな」

とFらに言うとクソっと言いたげな表情をしたが、抵抗する気はないようだ。

(聖守軍……)

聖守軍とは学校側が取り締まらないSRR内のキルやルール違反を束ねており、GM(ゲームマスター)代わりのような仕事をしている。

サクヤがそれを告げると、ユウの元へ近づいた。

「……ごめん。怖い思いさせて」

サクヤの表情は暗く、申し訳なさそうにしている。

(サクヤさん……)

ユウはサクヤの下を向く顔を見つめ、強張った表情を和らげ、笑顔で言う。

「怖かったですけど……サクヤさんがやっぱり良い人で安心しました」

「途中本当に悪い人だと思っちゃってましたけどね、えへへ」と笑うユウにサクヤの表情はまだ暗いまま。

そして、足音がさっきよりも近くに聞こえる。

「俺は別に良い人なんかじゃないよ。君を犠牲にして、危ない目に合わせた。最低だ」

ユウは優しい笑みを浮かべたまま、首を横に振る。

「違います。だって、ゴールドを貯めるのを手伝ってくれたし、サクヤさんは、色々な大切なことを教えてくれましたよ」

「そ、それは」

サクヤが言葉を詰まらせているとユウが続ける。

「だから、ありがとうございます!」

ユウは会って一番の笑顔で頭を下げた。

「いや、こちらこそ、ありがと」

サクヤは言われて慣れてためか少し頬を染めて返事すると、ユウの後ろに目をやる。

「そろそろ行くよ」

「あ、あの、サク……」

「そういえば」

ユウは何かを言おうとしたが、サクヤがそれに気づかず遮ってしまった。

「ユウは1年生だろ?」

前を向いているサクヤの背中にユウが「?……はい」と首を傾げて返事する。

「誤解しているみたいだから言うけど、俺も1年生だから」

と顔を斜め後ろに向け、ニッと笑うとそのまま霧に溶けていなくなった。

ユウは口を押さえようとしたが、間に合わず思わず叫んだ。

「えぇぇ〜〜〜〜〜〜!⁉︎」


呆気にとられたユウであったが、すぐに気を取り直して、見えなくなったヒーローの背に向かって小声で呟いた。

「また……会えますよね」



7/15

こんばんは(?)いや、おはようございますですかね、どうも 白川みつきです!


更新大変遅れましてすいません。

やっと完成したので本日更新いたしました!


第1章ついに完結いたしました!

一区切りがつき、嬉しい限りです!しっかりとした章を完結させる自体初めてだったので、とても嬉しいのと同時に不安もあります。

皆さんに面白いと思うような作品が書けてるのかな?など考えるだけで胃が痛いです。(汗)


次の第2章に関してですが、サクヤの過去(入学当初)から書き始めようと思っています。

第1章での謎が徐々に明かされていくのでお楽しみに!


次回の更新は申し訳ありませんが、不定期とさせていただきます。

とある賞に向け、頑張って集中して書きたいので、こちらの更新が遅くなるかもしれません。

ですが、週1程度には書きたいと思ってるので、Twitterや活動報告の確認お願いします!


それとですね……お気に入り13件!

ありがとうございます‼︎

それにPV3000突破‼︎

非常に嬉しいです!


目標の2万PV&100P(ポイント)に向けてこれからも頑張っていきたいと思います!


それと、感想を24時間待ってます!!


ではでは!


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