六話 失う出会い
「……っ、はぁ、はあ」
地面に寝転ぶ。熱い。身体中がボロボロに焼けている。
「………」
相手は最早微動だにしない。身体中から噴き出している血がその理由を語っている。
相討ち。
完全なる互角であった。結果、両者動く事すらでになくなっていた。
(……無事、着いたかな)
消えゆく意識の中、考えていたのはとある少年。今回の目的。
「弘星…」
頬から一筋水が滴り、
彼女は動かなくなった。
「横濱…、弘星さんですね?」
女性が話しかけて来る。
白木を置いて逃げてきた。今、自分が逃げるより、白木の無事を気にする僕がいた。
「はい…」
「白木から聞いたかと思いますが、我々と来てください」
「待ってください。あの……白木は…」
「彼女の事でしたら今増援が向かっています」
「そうですか…」
思わず胸を撫で下ろし、車に乗り込んだ。
「…というわけでして、いったんあなたの身柄は我ら『タイルス』が保護させてもらいます。あなたには今から本社にきてもらいます」
車の往来がほとんどない道を走る。先程の戦闘のせいか、ヒーローとしての力を使ったせいか、疲れが溜まっている。
『ザザ…こちら増援班。白木智子を保護。深刻なダメージ』
繋がりが悪い無線が車内に流れる。
『現在、生死不明』
「………え?」
耳を疑う。
生死不明って、生きているかシンデイルカ。僕を守ったせいで……
「横濱君!? おい!」
声が遠ざかる。
自分のせいで白木を…
「どうだ?」
「疲れも溜まっていたみたいだしな…。軽いショック症状みたいなのはあるが、大丈夫だろう」
もう一人、後部座席にいた女性が横濱弘星の額に手を当てて応える。
「…じゃあ今のうちに、頼む」
「わかった……
横濱弘星の中の白木智子の記憶を消すのね」
彼女は手を優しく横濱の額に当てる。手が優しい色に包まれる。
横濱が一瞬苦しそうな顔をしたのち、彼女はそっと手を放す。
「はい…、完了」
車は道路をひたすら走る。目的地に向かう為。
月は綺麗に輝いていて、
ここから全てが始まった。
とりあえず序章終わって、次回からは一章。しかしその前に、序章のストーリーの肉付けを終わらします。