四話 失う出会い 中
「………………」
学校の屋上から遠く、煙が上がるのを見る。二年前、横濱が逃げた叔父の家。
「さて…、」
制服から動きやすい服に着替えた白木は、装備を確認する。準備は万端。
「………行くか」
今夜が命を掛けた大勝負。
風が吹いた次の瞬間、彼女は消えた。
「………………」
両親に続いて叔父も失った。その悲しみが遂に限界を超えた。
「ああああああああああああああああああ!!!!!!!」
遠くに見える人影。おそらく二年前と同じ奴。多分能力は火。
右手の拳を握り締める。そのまま、奴を倒すつもりで拳を振るう。
かろうじて残る理性が重荷だ。
当然、届かないはずだった。
今までは。
今度は真っ直ぐグレーの、エネルギー波の塊のようなものが奴に直撃する。
「!??」
一番驚いた自分。この力……
「ヒーロー?」
そう思えると、なんだかずっと前からそんな気がしてきた。
心なしか落ち着く。
もう一度拳を握り締める。
奴を…、今この場で…
「倒す!!」
都合が良いかもしれないが、勝手に頭の中に、力の使い方が浮かぶ。
足に力を溜める。足がグレーの波のようなものに包まれる。
おそらくこれはエネルギー。思いの強さによってパワーが変わる。
何故だろう。全てが理解できて、納得できる。
そしてもう一つ。ヒーローが戦う最たる理由は、己の正義心の為。今目の前の放火魔は紛れもなく俺にとっての悪。だから倒す。
地面を一回蹴る。それだけで、一気に勢いがついて前に跳ぶ。相手も同じ。
すれ違いざまの攻撃。
炎と、エネルギー玉と。
ぶつかり合い、消滅する。
まだ、終わらない。
素早く体制を立て直して、拳を振るう。
飛ぶエネルギー波。
向こうもまけじと炎を飛ばすが、こっちの方が少し早い。
相手が吹き飛ぶのが見えた。
まだだ。
まだ。
再び足に力を籠める。
「そこまで」
目の前に人が現れる。
白木だった。