三十三話 敗②
人物と共に世界観が不安定に…
宙を舞う少女を見つめる。確か名前はマレフィキウム。当然本名ではないだろう。その名の意味を杉護は知らないが、どうせろくなものではないだろう。
(今はあんなに若い子もこうして過ごしているのか…)
そう思うと色々と感情がでてくるのだが、だからといって手を緩める程甘くはない。
いつからこうなってしまったのか。
今や目的すら見失いつつある日々に杉護は無言になる。
(…とりあえず彼女には悪いが、ここで離脱してもらおう)
落ちていく少女に照準を合わせ、跳ぶ。落下してくるであろう地点に立ち、握る拳に力を籠める。
(……さらば)
「ちょっっ……、待ったぁああーーーー!!」
慌てたような少女の声がし、マレフィキウムと杉護の間に壁が生まれる。
(…電気の、壁?)
その発生源を辿る杉護。電気は上へと向かい、途中、薄い鉄板のようなものを通って正面の廃ビルの屋上に。
「………」
屋上の淵すれすれに立つ人を見た。
「…ギリギリセーフっすかねー」
息が若干途切れている。その@、日本人ではなかった。
「…………!」
呼吸を整え、外国人の少女は屋上から何かをばら撒きながら飛び降りる。
「……はあっ!」
彼女の指十本から電撃が発生する。それらはばら撒かれた小さな球体のようなものを通過し、さらに連結し、複雑に絡み合って網のようになる。
「……」
一応当たらないように回避する杉護。そうしている間に少女は廃ビルの手前で倒れているマレフィキウムの前に着地する。
「…ヴァルプルギス、だな」
魔女の一人。詳しいことは知らないが見覚えがあった。まあ、一度見たら忘れられないが。
「それ以上近づくならこちらもそれなりの対応をさせてもらうっすよ」
語尾が少々気になるが流暢な日本語を話す外国人の彼女は体には汗が出ていたりと疲れが見えるが目は本気だった。
そして彼は気がついていた。
その場を離れる気配を察し、体を180°回転させ、銃を引き抜く。左手は銃を握ったままヴァルプルギスに、右手はもう一人の魔女に。
「…ウィッカ!」
躊躇わず引き金を引く。
(…消えた? いや…)
弾は当たらず、彼女の姿は見えない。が、以前争った時と同じだった。
上。
体を捻り、杉護の頭上を通過するウイッカ。着地と同時に引き金を引く。
「…!」
避けきれずに右の肘を貫かれる。
さらに迫るウィッカ。剣と剣が交わるように、銃口同士が重なる。
「…今回はあんたは目的じゃない。あんたもノーダメージじゃないんだ。一度退きあった方が賢明じゃ?」
「…今までそうやって何回勝敗がまともについてないと思ってるんだ」
銃をあっさりと捨て、杉護は本命の武器、拳を振るう。
「…話し合いはここまで」
杉護に背を向けて走る先は、
「バトンタッチ」
すれ違い様にヴァルプルギスの肩をポンと叩く。
「…へ?」
唖然とするヴァルプルギスを放置し、倒れているマレフィキウムを引っ張り一旦裏通りに消えるウィッカ。
「ちょっと! ウィッカ!?」
狼狽するヴァルプルギスだが、直ぐに諦めて杉護と向かい合う。
「…時間稼ぎは得意じゃないんっすけどねー…」
頭を搔きながら苦い顔をする。
「ま、死なない程度には抑えてくだっ、さい!!」
乾電池を複数束ねた物を取り出し、目の前に放る。
あとはいつも通り。
手から電撃が放出。乾電池を経由し、威力が何倍にも膨れ、槍と化した電撃は真っ直ぐ向かって来る杉護に直撃する。
「…………」
「ええー!? まじっすかーー!!?」
その電撃は杉護の振るう拳により一撃で四散する。
「ノーダメージ位は勘弁してほしかったっすね…」
杉護の拳を避けつつ顔面向けて足を繰り出す。
ビッ! っと顔面に届く前に足は限界まで伸びて止まる。
(…ズボンで来て良かったー…)
靴の裏がビリビリと音を立てる。
ズバチィ!!
靴底から電撃が噴き出す。靴に仕掛けをしていればこれ位余裕である。
しかし難なく避ける杉護。
再び間合いを取り合う二人。そこで、
「良し! もう十分っすよね!」
パン! と手を叩くヴァルプルギス。彼女は床を踏み、空中で回転して後ろに着…彼女の後ろに隠れていたウィッカが銃を撃つ。
「!!」
右肩を抑え、再び正面を向いた時、彼女らの姿は既に消えていた。
「…………」
後に残った物は、何もない。
登場人物紹介
NO.021
???? (サバト)
????
♀
????
魔女
109
4
ぬいぐるみ
特に無し
魔女所属の幼女。天真爛漫。
NO.022
???? (カニング)
????
♀
????
魔女
161
19
魚
サバトの保護者。つきっきりでいるのは能力の相性もある。メガネ。




