三話 失う出会い 上
「白木智子です。皆さん宜しく」
「し、……白木!!?」
ガタッ
と音を立てて椅子が落ちる。
「…宜しく」
こっちを見て白木は笑う。
「なんだお前ら知り合いかよー?」「ヒューヒュー」
「いや、知り合いというか…」
友人の冷やかしも頭に入ってこない。
ただひたすら、唖然。
二年前に別れたはずの友人改めヒーローは休み時間になると笑顔のまま僕の前に来た。
「……久しぶり…。元気にしていた?」
「ああ……、で、好い加減教えてくれ」
叔父は一切事情を話してはくれなかった。あれから両親は当然死亡。家屋も全焼で、僕は新しい学校に叔父の家から通っていた。
「うん…、あのね……」
あなたのお父さんとお母さんは立派なヒーローだったの。二人は組織をも形成したのよ。『タイルス』っていう、今最も栄えているヒーロー軍組織。聞いたことくらいあるでしょう?
実は…私もそこに所属しているの。知らなかった? ヒーロー軍組織はヒーローの力さえあれば誰でも入る事ができるの。そして正式に組織に入れば国からの保護を受けることができるの。…余談だったね。本題に戻すと、
あなたの両親は最強のヒーローだった。だから組織を作る事ができたし、たくさんの人に信頼されていた。
そんな二人にこどもができた。それがあなた。世間の反応はだいたい想像がつくでしょう? きっと素晴らしい力を持っているんだろう。
だからそれを憎む人も当然ながらいる。あなたが二年前に襲われたのもそう。
わかった? あなたが襲われた理由。
「納得できるかできないかは別として、理解はした。…、でも俺はヒーローの力なんて無いし、父さんも母さんもそんなこと何も言ってなかった…。職業は二人ともサラリーマンだって…」
「そう……、とりあえず、またしばらく一緒に過ごすだろうから、よろしくね」
白木とは、そこで別れた。
「……ふざけるなよ……」
学校帰り。
目の前を飛び交う火の粉。
燃え上がる火柱。
それは一度見たことのある景色。
目が眩む。
「……嘘だろ…」
二年前の悪夢が蘇った。