二十九話 戯れと本気
ほぼ一ヶ月ぶり。『龍と銃』投稿。
「は…は…はぁ…」
マレフィキウムの口から断片的に荒い息が漏れる。
(…目的はなんだ? なんでこんな面倒くさく非効率的な作戦で挑んで来た?)
ある程度のレベルの戦闘員六名を魔女の構成員のおおよその場所に放つ。内一名を追跡し、そこにいる構成員と戦闘する。
戦力の分断? しかしほとんどの戦闘員はそもそもまとまって動いてなかった。増援に駆け付けるのは戦闘が無くても遅れただろう。
他にも幾つか思いつくが、どれも本気が感じられないし、戦闘員が無駄死にだ。
となると、
(……遊び)
そもそも本気ではなかった。長期化する対立での悪戯だった。
しかし、一つ、異質。
面前の敵、『翼』という組織の『左翼』という派閥の長、杉護判治。
「…ふざけやがって…」
裏路地を出、小さな川に架かる橋の上で止まる。裏路地同士に挟まれていたり、そもそも小さかったりが原因なのか人は誰もいない。石でできた橋はヒビが入り、近くにはゴミの山や廃車しかない。当然、水質は最悪。
ビルの屋上から追跡していた杉護判治が降りてくる。地面に足を着ける。
同じ土俵に降りてくる。
「…………」
「…………」
持っていた銃を川に投げ捨てる。杉護は特に反応をしない。
コートの胸部、心臓が位置する所から取り出したのは果物ナイフ程の小さなナイフ。安物ではないが高級品というわけでもない。特別な機能はない。ただ切るために造られた『ただの』小さなナイフ。
(…強いて言うなら使い慣れていること位かしら…)
挑発的に目の前で軽く振る。
これが『魔女』の中でも上位に入る少女の『最強武器』。銃よりも爆弾よりも強いと判断したもの。
対して杉護も同じように銃を投げ捨てる。しかし彼は何かを取り出すわけではない。ただゆらり、と体の力を抜く。
「…君の推測は恐らく合っている」
杉護の口が動く。
「今回の策に噛んでいるのは『中央』…つまり『翼』の大ボスだ。だがな…、」
杉護の全身が石の様に硬く強張るのを見た。
「…私は決して『戯れ』では、ない」
それが引き金となり、銃を捨てた決戦が始まる。
☆
「…こっちか…」
僅かに残るマレフィキウムの『足跡』を辿る。
伊丹涼子、否、ウィッカはその『ストーカー』と言われる由縁となる能力を使用し、進む。
☆☆
ドッ!!
と音にならない何かを撒き散らし二つはぶつかる。
片やただのナイフ。片や革手袋に包まれたただの拳。
(な…ん、だ……と…)
マレフィキウムは思わず硬直する。
革手袋は当然切り口が入っている。問題はその奥。せめて紅い水には御目にかかれるだろうと思っていたが、実際には表皮をわずかに削っただけだった。
(鍛え方でどうにかなる物なのか!? それとも受け方の工夫…)
「両方だ」
胸の内を読まれたような回答とともに空いた左の拳が飛ぶ。
「くっ!」
後ろに回避行動をとってかわす。
(今、奴の反応が遅れた…? こちらの硬直が解けるのを待っていたかのようなタイミング…)
「…戯れじゃなかったんじゃないの?」
「…案ずるな。こちらも少々驚いていたところだ」
杉護の足が地面から離れる。
(……ここ!)
行動を読み、そこにナイフを切り込む。
「ジャスト!」
杉護のスーツに切り傷が付く。同時に鞭のようにしなやかな拳と脚が襲う。身を屈めて回避。
(本体にダメージは無し! にしてもこの身体能力…こいつもしかして)
「言っておくが、私はヒーローなどという存在ではない」
一つの仮定を消去された少女に今度は疑問文がとぶ。
「そういうお前こそ…何者だ」
「センス……才能よ」
自分で才能と自己評価を下すのはなんだか妙な感じだが、これ以外に評価できない。
「…そうか。…なら私も才能と呼べるものなのかな…。努力、に関しての」
(…やっぱり純粋に努力の賜物?)
未だ信じられないが、今は関係ない。
バネの様に跳ぶ脚に、鞭の様にしなやかに動く腕に鋼鉄の強度を持つ拳。その他全身を余すこと無く使いこなす。
(体勢を…!)
橋から離れようとする。
「おおぉ!!」
杉護が声をあげて拳を橋に振り下ろす。
「!!」
脆くなっていた橋が杉護のいる場所を中心に波紋状に崩れる。
「くぅ!」
後ろに跳び回避を試みるが不安定になった足場ではうまく跳べない。
ぐらり、と身体が傾く。
(ま、ず…)
一度橋の淵まで下がった杉護が跳ぶ。
石も鉄もお構いなしの拳が、鳩尾に食い込む。
登場人物紹介
NO.019
伊丹 涼子 (ウィッカ)
イタミリョウコ
♀
????
魔女、特別部隊02班捜査部隊
168
27
ストーキn…追尾
背後を取られること
二つの組織のボスを勤めるカリスマ。おばさんじゃないです。趣味は能力を利用した悪質な○○ー○ー。
NO.020
???? (ヴァルプルギス)
????
♀
蓄電倍出
魔女
160
15
ヒーロー、日本
お偉いさん
北欧生まれの密入国者。日本とヒーローに興味をもって来たが、どういうわけか自分もヒーローに。密入国がバレるとまずいので表に出ない魔女に籍を置いている。




