一話 失う出会い(二年前)上
読んでくれた方、本当にありがとうございます!
その日僕は、初めてヒーローに会った。
その日はいつもと特に変わらなかった。暑い八月の日差しを浴びて、いつも通りに学校へ行き、授業=睡眠時間の個人的な法則を厳守し、馬鹿みたいな会話をして………
帰り、クラスメイトの白木に話しかけられた。
「横濱君って…、今日部活とかある?」
「え? …あるけど、」
「いや、何でもないの。じゃあね。また明日」
変な奴。
「遅くなっちゃったな」
道を走る。部活のミーティングと片付けに思いの外時間がかかってしまった。親に怒られる。
「…、よし」
時計を見て時間を確認する。この曲がり角を曲がれば家が見える。なんとか間に合いそうだ。
しかしなんだろう…、さっきから少し息が苦しいような…、
曲がり角を曲がる。
「…………」
燃えている。家が燃えている。それも一棟だけではない。我が家周辺一帯。爆発を起こしたかのように炎が燃え盛り、黒い煙がどこまでも上がり、火の粉が風に舞う。自分の制服にも火の粉が降りかかる。
「家…………」
わかる。間違いない。あの炎の、あの火事の、中心部は、
我が家。
「…………くっ!!」
足が勝手に動き、真っ直ぐ走り出す。両方の家が燃えていて、息苦しくなるが、構わず走る。兎に角走る。走る。走………
「あ…………」
る。
そこに見えたのは間違いなく我が家。つい昨日、いや、数時間前までいた最大の居場所。
そして火事の中心部。
「!」
中心部に、家の屋根に二人の男の姿が見える。あんな所に生身でいれるのは彼ら以外あり得ない。
「ヒーロー……」
超能力者のような人たちの総称。
そして彼らがこの火事の犯人。中には両親がいるはずなのに……
「っっやめろよ!!!」
悲しみと怒りとで涙が止まらないが、それでも叫んだ。
二人は一瞬こちらを見た。そして、
「!?」
一人が手から炎を出しつつ迷わず飛んで来た。
(発火系のヒーロー…!?)
すかさずもう一人のヒーローが奴を掴んで遠くに投げる。そして彼もそのまま追う。
「………!?」
唖然としているといきなり腹に衝撃が走った。みれば、腕が自分を囲っている。
「え?」
次の瞬間、視界が暗転し、僕は近所の空き地にいた。
「…は?」
誰が、何をした?
次回、
二話
失う出会い (二年前) 下