表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
8/36

第二章   その四

   第二章   その四




 赤と黒が戦っている。

 赤い爆発。黒い爆発。看板やなにやらを巻き込んだ、なかなか迷惑な戦いである。

 師匠から『敵を知れ』と教わったからルーペコなるものの戦いを観察しているのだが、あまりにも速くてわからないんだな、コレが・・・

 ルーラは小さくて炎と化しているし、ルーペコは速い上に夜と同化している。これでどうしろっていうのよ! 温厚なあたしでもしまいには怒るぞ!

「───って、愚痴ってもしょうがないか。当たって砕けろだ」


 ぺしっ!


「マミちゃんっ!?」

 あっさり砕け散るバカなあたし。遥か地上へと落ちて行った。

 じんじん痛む身体。まったく、女の身体をいいように痛めつけやがって、10倍にして返してやる───前になんとかしないとミートソースになっちゃうよ。

「か、風よ、纏えっ!」

 生み出され風を纏い、落下スピードを抑えた。

「バーバリ、きて!」

 あたしの呼び声に、先ほど吹き飛ばされたバーバリが地面すれすれで拾い上げ、アスファルトの上を滑るようにして着地した。

 ・・・た、助かった・・・

「なんだこいつ!?」

「空から落ちてきたわよっ!?」

「撮影か?!」

 生還したことに安堵していると、ざわざわする人の気配で我に返った。

 見渡せばそこは交差点のド真ん中。沢山の信号待ちをした人や車に囲まれていた。

「えーと、ごめんなさぁーいっ!」

 直ぐに起き上がり、バーバリで空へと逃げ出した。

 見られちゃったどうしょうとかは今は無視。奇蹟的にも離さなかったルーチャを構えて赤と黒の戦いへと突っ込んだ。

 赤と黒の爆発の間を縫うようにすり抜けてルーラをキャッチ。戦略的撤退をする。

「ルーラ大丈夫?」

「・・・なんとか・・・」

 という割に輝く深紅のドレスが焼けたように黒くなっていた。

「ルーペコに弱点はないの?」

「これといって───避けてっ!」

 叫ぶルーラに身体が勝手に反応し、黒い弾丸を回避した。

「この風でもダメージは与えられる?」

「纏っている邪気なら。でも大きいのはダメ! マミちゃんの命にかかわるから」

「りょ、了解。ルーチャなら効くのね?」

「刺して思いを込めればなお確実よ」

「了ー解」

 ルーチャを一振りして眼下で輝く街へと急降下した。



 ルーペコのスピードを殺すためにビルの間を飛んでいるのだが、なかなかどうして上手く飛べない。もう何十回と看板に激突しているよ。

 ・・・それ以上に通行人に目撃されているのが問題よね・・・

「明日の新聞になんて書かれることやら」

 もっとも考えたところで無意味。うち新聞のとってないし、テレビを見るほどゆとりある朝じゃないしね。

「もーっ! 落ち着いてないでなんとかしてっ!」

 なにをおっしゃるウサギさん。騒いで名案が出るなら幾らでも騒ぐよ。どこまでも冷静に。見えるものを見て感じられることを感じる。戦いは思考。そして集中。努力を信じろだ。

「ルーラ。このリルプルって邪気にしか効かないの?」

 ・・・まあ、看板に激突して平気なくらい丈夫なのはわかったけどさ・・・


「それはわたしが防いだからよ。まったくリルプルは鎧じゃないのよ」

 ・・・だったら最初から鎧を用意してよ。こんな危ないものを捕獲しようっていうならさ・・・

「といったところで無意味。今あるものでなんとかなるか」

 目の前に数十階建てのビルが現れた。

 なんのビルだか知らないけど、明かりが点いてなあから大丈夫!

「ちょっ、マ───」

 落ち着くといって頭の上に移動したルーラをつかみ、胸に抱えた。

「お願い風さん、守ってっ!」


 ───ガシャーン!


 窓ガラスに激突。脳が揺らぐくらいの衝撃に意識が飛びそうになる。

 ・・・もっと風の使い方を覚えないと死ぬぞ、あたし・・・

 飛び散るガラスに吹き飛ぶ事務用品を視界におさめながら給湯室のような場所の壁に激突。なんとか停止した。

「───マミちゃんっ!」

 ルーラの叫びとともにその場から右に撤退。さらに左。続いてジャンプ。本能のままに回避し、お互いの間が丁度合ったのか、黒い塊と対峙してしまった。

 たが、それも一瞬。努力はウソをつかない。


「───突風っ!」


 イメージした風に名前を付けて放った。

 すると不思議なことに放った風が強まり、黒い塊を覆う邪気が吹き飛ばされた。

「・・・こ、これが、ルーペコ・・・?」

 大きさは、とうか横幅は3メートル。球形にコウモリのような翼を生やし、幾十もの触手をくねらせた姿をしている。目なんてないのになぜか睨まれているかのような威圧を感じる。

 ・・・今日の夢に出てきそうだわ・・・

「これは邪気を吸い込んだ姿'ーーくるわっ!」

 おっと。気持ち悪がっている場合ではない。せっかく狭い場所に誘い込んだのだ、チャンスを無駄にするな、だ。

 ルーチャを構え、襲いくる触手を斬り落としてやる。

 さすが16歳。11歳の身体とは全然違う。腕力も瞬発力も段違いだ。


「太刀風!」


 ルーペコが怯んだところに左手刀を一閃。風の刃が片翼を斬り落とした。

 だが、けっこう威力を込めて放ったので半分以上意識が吹き飛んでしまった。

「・・・ぅおらっ! 気合いだ気合い! 女も男も最後は気合いだぁーっ!」

 ムチのように襲いくる触手を潜り抜け、ルーチャを両手つかんで思いっきり突き刺してやった。


「くきょおぉぉぉっ!」


 ルーペコが絶叫する。

「飛んでけ、気持ち悪いものぉおっっ!!」

 刺したところから大量に邪気が吹き出すが、がまんだ、がまん。がまんしろーっ!

 耐えることしばし。刺した感触が消失。支えがなくなり思わず前のりで倒れてしまった。

「いたたた。なんなのいったい?」

 ぶつけた鼻をさすりながら起き上がると、目の前にいる不思議生物と目が合った。

「・・・ルーペコ・・・?」

「ええ。これが本来の姿。聖霊界最速の鳥よ」

 体長2メートル弱。乳白色を主体とした身体にエメラルドの翼。色だけ見ればとても綺麗だけど、どうしてペンギンに4枚の翼を生やした生き物が生まれるの? 誰が創造したの? それとも環境がそうさせたの? ワケわからんぞ・・・

「ぴぷー」

 ルーペコが鳴いた。

 水色のつぶらな瞳があたしを見ている。

 ・・・かわいい・・・

 思うより速く身体が反応し、その柔らかくいい香りがする身体へと抱き付いた。

「あーもーこんちくしょうだよっ!」

 なんなの、この反則なまでにラブリーな生き物は!? かわいいったらありゃしないのよっ!!

「ちょっとマミちゃん! 早く捕獲しないと人がきちゃうわよ!」

 後ろ髪引かれる───いや、実際に髪を引かれて離された。

「ううっ。ゴメンね、ルーペコちゃん・・・」

 ピコピコハンマー・・・じゃなくて、シルリープを召喚する。

 ぴーとかぷーとか鳴いてすりよってくるルーペコちゃんの頬をなでなでしてあげながら脇腹をピコンと叩いた。

 

 ぷしゅうぅぅぅっ!


 そんな音をたてながらシルリープに吸い込まれた。

「どうなったワケ?」

「シルリープの中で完全に邪気を消すのよ。それより早くここから離れましょう」

「で、でも、どうするのよコレ? これじゃ犯罪者だよあたしたち!」

 捕獲するためとはいえ酷いことしちゃったよ。

「大丈夫よ。えい───」

 ルーラの両手から蛍火のようなものが沢山出ると、あら不思議。壊れたものが修復されて行くではありませんか。

 ・・・やれやれ。なんでもアリだな、魔法って・・・

「しかし、今回はなんとかなったけど、もっと魔法を覚えないといつか死ぬよ、あたし」

「そうね。そのほうが世間のためにもわたしのためにもいいかもね」

 どこかからパトカーのサイレンが聞こえてきた。

 ここは一言謝るのが筋でしょうけど、こんなこと説明できないしいっても信じてはくれないでしょうよ。壊したものは直したんで許してください!

「ふ~っ。こんなもんかしらね。さあ、帰りましょう」

「うん。帰ろう」

 まったく、今日は波乱の1日だったよ・・・



 





投稿して8回目。なかなか馴れません。

打ち込みだけで三時間はかかります。

それでも投稿しているという行為が楽しいです。

自己満足、そんな感じでやってます。



評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ