序章
王道、それでいて面白おかしく!が目標です。
どこで脱線して、どんな横道にそれていくか分かりませんが、楽しんでいただければ幸いです。
「ホムンクルス体、鼓動を開始」
「魂の定着、確認しました」
耳に飛び込んでくる、いくつもの声。
忙しそうな足音。
雑多な機械音。
ごちゃごちゃ、煩い。
人がせっかく、イイ気分で眠ってたのに。
小さく舌打ちした、そのとき。
俺の眠りを邪魔した雑音が、風に吹かれて蝋燭の火がふっと消えるように、一瞬にして途切れた。
「聞こえますか?レイゼントールさま」
水を打ったような静寂の中から、俺を呼ぶ声が響く。
水の中から音を聞いているかのように、それはくぐもって聞こえた。
重たい瞼を面倒ながら開く。
実際、俺は緑色に透き通った液体の中にいた。
どうやら背の高い透明な円形の柱中に緑の液体が満たされ、俺はその中にいるらしい。
そして、その向こうから、白衣の集団が、こちらを注視していた。
「…何か用?」
思いっきり迷惑そうに言ってやる。
一瞬、妙な沈黙があった後。
「や…やったー!!!」
「目覚めた!!ついに目覚められたぞおぉぉぉぉ!!!!」
「よっしゃあぁぁぁっ!!!!」
たった5文字の俺の一言がそんなにありがたかったのか。
白衣の人間たちは雄たけびを上げ、手にしていたバインダーや試験管(大事だろうに)を投げ捨てて、万歳したり、抱き合ったり、なにやら勝手に狂喜乱舞を始めた。
そんな喧騒の中にあって、一人だけ冷静なヤツがいた。
そいつはにっこりと俺に微笑むと、膝を折って胸に手を当て、礼儀正しく礼をした。
「復活おめでとうございます、魔王様」