アウトオブあーかい部! 〜部室棟 乙女の干物 集まりて 怠惰を極め 綴るは実績 電子の海へ あゝあーかい部〜 29話 マイルーム
ここは県内でも有名な部活動強豪校、私立 池図女学院。
そんな学院の会議室、現場……いや、部室棟の片隅で日々事件は起こる。
あーかい部に所属するうら若き乙女の干物達は、今日も活動実績を作るべく、部室に集い小説投稿サイトという名の電子の海へ日常を垂れ流すのであった……。
『アウトオブあーかい部!』は、そんなあーかい部のみんなの活動記録外のお話……。
ここは県内でも有名な部活動強豪校、私立 池図女学院。
そんな学院の会議室、現場……いや、部室棟の片隅で日々事件は起こる。
あーかい部に所属するうら若き乙女の干物達は、今日も活動実績を作るべく、部室に集い小説投稿サイトという名の電子の海へ日常を垂れ流すのであった……。
『アウトオブあーかい部!』は、そんなあーかい部のみんなの活動記録外のお話……。
池図女学院部室棟、あーかい部部室。
……ではなくきはだの部屋。
「さて……。」
きはだは机の上にスマホを立て掛け、4分割された画面の左上に映った自分を見つめ、腕を組み待機していた。
『ちゃんと聞こえているか……?』
スマホの画面の右上にひいろが映り込んだ。
「ばっちりだよぉひいろちゃん♪」
『あ!きはださん♪お邪魔してます♪』
そしてひいろの隣で無邪気な笑顔を見せ手を振るみどり先輩も映り込んだ。
「やあやあみどり先輩、ほんとに仲良しなんだねぇ?」
『すみません、みなさんのお部屋が見られると思ったらいてもたってもいられず……///』
時は祝日の午前9時。
今日の部活はきはだ主催で、ビデオチャットを使ってのお部屋の抜き打ちチェックをすることになっている。
「いいんだよぉみどり先輩。むしろ家事できる人は1人でも多い方がありがたいからねぇ。」
『家事できるなんてそんな……///』
『みどりさんの家はいつも綺麗に片付けられているからな。』
『そ、それは毎日お客を呼ぶからで、お家柄といいますか……///』
「おーけーだ諸君。みどり先輩は『お客を呼べるか』の基準でビシバシ苦言を言ってくれたまえ。」
『きはだは何目線なんだ……。』
「部費でさすまたを買う者を屠る人。」
『カードゲームみたいな肩書きだな……。』
『でもカッコよくないですか!?』
「流石みどり先輩、わかってるねぇ。」
『わからないワタシがおかしいのか……!?』
3人で雑談していると画面の左下が明点し、あさぎが映り込んだ。
『映ってる?』
『あさぎさんこんばんは♪』
『あれ?みどり先ぱ……ほんとに仲良しなんですね。』
『まあな♪』
「食い気味だねぇ……。」
『あの〜、』
「どうしたみどり先輩よ。」
『あさぎさんの後ろ、頭らしきものが……。っていうかお姉様、ですよね?』
『あら、もう見つかっちゃったか〜。』
あさぎの後ろでしゃがんでいたモーラが立ち上がり画面に映り込んだ。
『こんばんはお姉様♪』
『やっほー!みどりちゃん、今日は一緒にすみ姉を嘲笑おうぜ☆』
『はい♪』
因みにみどり先輩はモーラをお姉様、モーラは白ちゃんをすみ姉と呼んでいる。
『なかなか大所帯になってきたな……。』
『いやいやだってすみ姉の部屋が見られるチャンスなんだよ?あたしが参加しないわけないよね……!?』
『お姉様、白久先生のお部屋行ったことないんですか?』
『「来てもいいけど足置いてってね」なんて言うんだもん。無理無理。』
「こわぁ……。」
『で、あとはその白ちゃん先生だけなんだけど……、』
画面に映っている全員の視線が画面の右下、『sound only』と表示された真っ暗な画面に吸い込まれた。
『さっきからドタバタと、何してるんだ白ちゃんは……。』
『会話にも入ってきませんね。』
「チッ。往生際の悪いヤツめぇ……。」
『起きてからずっと部屋の片付けしてるのかあ……。』
『おーーいすみ姉!!みんな待ってるぞーー!?』
モーラが叫ぶと、学生4人はうるさそうに耳を塞いで縮こまった。
『うっさいわね!……っていうかなんでアンタがいんのよ!?』
『sound only』になっていた白ちゃんの声がした。
「ネタはあがっているんだよ白ちゃん、さっさとカメラをオンにしたまえ。」
『はいはい……、』
白ちゃんがしぶしぶな声で了承すると、画面の右下は明点……したはずが真っ暗のままだった。
『白ちゃん?』
『白久先生?』
『あっっれえええ?おかしいわね〜?カメラの調子が悪いみたい……って、みどりちゃんもいるの?』
『どうも。』
『なんか大所帯になってます。』
『あたしもいるぞ♪』
『アンタは帰りなさい。』
『すみ姉がカメラに着けたシール剥がしたら考える。』
『ししし、シール!?……な、なんのことかしらねー?』
「白ちゃんまさか……、」
『流石に往生際悪すぎだろう……。』
『白ちゃん先生……。』
『う、うるさいわねえ!?だったらモーラも部屋見せなさいよ!?』
『あたしの部屋?別にいーよ。』
あさぎとモーラが写っていた画面が揺れると、2人はお隣、モーラの部屋へと移動した。
『あさぎカメラよろしくぅ♪』
『はいはい。』
2人が廊下を進むと、モーラの部屋が画面に映し出された。
『ジャーンッ♪ここがあたしの部屋だよ!』
『うわぁ……!ここがお姉様のお部屋なんですね!?』
「ふむ。よく片付けられているねぇ?」
『うわぁムカつく。』
『すみ姉うるさい。』
『あさぎがよく来るからか?』
『甘いねえひいろ。お部屋にポロポロと食べカスなんて落として放置してみ?』
『……なるほど。確かに虫でたら嫌だもんな。』
『そうそう、ここに来たての時もさあ?前の入居者がズボラな生活してたせいか虫が出て、カップ焼きそばに付いてた激辛ソース炊いたっけ……。』
『炊くな。』
「撃退できたのぉ?」
『あたぼうよ!アレから1回もでてないぜ☆』
『さすがお姉様です♪』
『それは「さすが」なのか……?』
『まあなんだかんだモーラ姉と2人で散らかしては掃除してるからね。』
「うむ。机の上も綺麗に整頓されてるし、ものの床置きも無し。そこらじゅうにウェットティッシュが生えてるし清潔感も文句なしじゃ♪」
『きはだは誰目線なの……。』
「部費でさすまたを買う者を屠る人。」
『おい。』
『カードゲームの肩書きみたいでカッコいいですよね!?』
『え?うん……?』
『じゃああさぎの部屋戻ろっか。』
『モーラ姉カメラよろしく。』
『はいはーい♪』
また画面が揺れて2人があさぎの部屋へと戻って行った。
『んじゃ、こっからはあさぎのお部屋紹介だよ!』
『モーラ姉、その前に……!』
『うへぇ……。』
画面の中であさぎが玄関に置いてあった蚊取り線香に火をつけると、まるで消毒でもするかのようにモーラに煙を浴びせた。
『あの……何を?』
『みどり先輩は知りませんでしたっけ。奴らの息の根を止めてるところです♪』
「あさぎちゃん、めちゃくちゃ蚊に狙われるからねぇ。」
『夏が近いですもんね。』
『甘いですよみどり先輩。奴らは年中現れるんですから。』
『あさぎの部屋に入るたび燻製になるのマジ勘弁……。』
ようやく2人があさぎの部屋に戻ってきた。
『えぇぇ……。』
2人が部屋に入るなり、あさぎとモーラの画面に映り込んだ大量の段ボール箱を見て困惑するみどり先輩の声。
「嘘みたいだろ?これ全部蚊取り線香の箱なんだぜ?」
『確かに「蚊取り線香」って書いてありますけど……えぇぇ……。』
『私の部屋に入ってきた奴らは1匹たりとも生きて帰しませんので。』
『すごい執念だな……。』
「蚊取り線香に目を引かれるけど、それなりにお掃除されているようだねぇあさぎちゃん?」
『まあね。』
「布団をずらして掛けてベッドの下を隠しているのが気になるけど……この際は不問にしよう。」
『さすがきはださん!なんでもお見通しなんですね♪』
『小姑かよ……。』
「今回のメインディッシュはあさぎちゃんじゃないからねぇ……。」
『じゃあ次誰の部屋見んの?』
『はい!次ひいろさんのお部屋にしましょう……!』
『みどりちゃん、随分積極的だね?』
『自分の部屋じゃないからな……。』
『1人だけ安全圏だもんなあ。』
『みなさん家来たことありましたよね?』
「うむ。実に整頓されたお部屋であったぞみどり先輩。」
『えへへ///』
『……ほら、さっさと映すぞ。みどりさん、カメラを頼む。』
『もしかしてひいろ妬いてる?』
『うるさい……ッ!///』
『はいはい♪』
ひいろとみどり先輩の画面が揺れると、ゆっくりとひいろの部屋を見渡すように画面が動いた。
『ワタ
『ひいろさんのお部屋は和室なんですよ♪』
『そんな誇るような
『押し入れを開けると、
『みどりさんッッ!?///』
押し入れを開け放とうとするみどり先輩を画面の向こうでひいろが必死に止めた。
「いいぞぉ、いけいけみどり先輩!」
『いいぞ〜みどりちゃん。』
『みどり先輩頑張れ〜。』
『ワタシの味方いないのかっ!?』
「観念したまえひいろちゃん。」
『嫌だっ!?アレだけは絶対
『どうしてもダメ……ですか?///』
『…………、』
『お願いです、ひいろさん……///』
『……………………、ぁぁぁああもう!しょうがないなあ!!///』
ひいろが勢いよく押し入れの戸を開け放った。
『みどりちゃん、やるぅ〜。』
『えへへ///……とくと見よっ、これが私とひいろさんのお揃い枕ですっ!』
押入れの中にはピンクとミント色の可愛いお揃いの枕が入っていた。
『殺してくれ……///』
『ま、まあ……、仲良しで良いじゃん……。』
「ひいろちゃんどっち使ってるのぉ?」
『ひいろさんはミント色です♪』
『ひゅ〜♪みどりちゃん、お熱いねえ〜!』
「ものも散らかっていないし、あさぎちゃんと違って押入れの中も綺麗に整頓されていている……いいね。」
『うち押入れじゃないんだけど。』
『ベッドの下見る〜?』
『やめてモーラ姉……!///』
『お?なんだあさぎ、エッチな本でも隠しているのか?』
『隠してないけど散らかってるから見せない。』
「自白しよったなあさぎちゃん。」
『じゃあ、あとはきはだとすみ姉だけど……、』
「どれ、きはだちゃんが絶望を見せてやろう。」
きはだの画面が揺れ、部屋を見渡すようにカメラが回った。
『さすがきはださんっ!ベッドのお布団もシワひとつありません……!?』
『ホテル……?』
「にゃはは、もっと褒めてくれても良いんだよぉ?」
きはだは勝ち誇りながら部屋の1箇所1箇所をズームして周った。
『カーテンレールなんてわざわざ見せなくても……。』
『流石のあたしもここまではやんないな〜。』
『そんな!?ベッドの下なんて……!?///』
『みどり先輩、目ぇ塞げてないですよ?』
『見事に何にもないな。』
「にゃはは!きはだちゃんのお部屋ならベッドの下で就寝すらできようぞ……!」
『上で寝ようよ……。』
「と言うわけであとは……そこのサウンドオンリー!」
みんなのスマホの右下はいまだに『sound only』の画面がドタバタと物音を立てていた。
『おーい白ちゃん先生?』
『まだ片付けしてるのか……。』
『すみ姉、往生際悪過ぎでしょ……。』
『白久先生ー?』
『はぁ……はぁ……。待たせたわね……。』
『sound only』の画面が切り替わり肩で息をする白ちゃんが映り込んだ。
「辞世の舞は終わったかい白ちゃん?」
『フッフッフ……、この綺麗に片付けられたお部屋を見てもそれが言えるのかしらねえ……!』
白ちゃんが画面から捌けると、シワひとつないベッドと、ピッチリと閉められた壁面収納が映り込んだ。
『どうよ!?あまりの綺麗さに声も
『すみ姉、ベッドの下。』
『……。どうよ!?あまりの綺麗さに
『そのベッドの下のもっこりはなんだ。』
『さすがひいろ。』
『卑猥だとでも言いたいのか!?///』
『あさぎさんのベッドの比じゃないですね……。』
白ちゃんのベッドには不自然なほどに布団がずらして掛けられており、手前に1人は寝られそうな出っ張りができていた。
「そのお布団、取ってもらおうか?」
『嫌よ。』
白ちゃんが再び画面に映り込んだとき、足元からレジ袋のようなガサッという音が入り込んだ。
『「ガサ」……?』
『足元に何か隠してないか?』
『い、いやあ別に何も!?』
「そうだよねぇ。こんなに綺麗な白ちゃんのお部屋なんだもん。Gが映り込んでるのは気のせいだよねぇ
『ぎゃぁぁあああ!!??』
白ちゃんが飛び上がった衝撃でスマホが机から落下した。
『どこっ!?どこっ!?』
『『『『……。』』』』
白ちゃんは床に落下したスマホのカメラが、スマホを置いていた机の下に押し込まれていたゴミ袋の山を映し出しているのにも構わずドタバタと部屋を駆けずり回っていた。
「ごめん気のせいだったぁ♪」
『きはだちゃん……!?』
「ねぇねぇところでこのゴミ袋の山、何ぃ?」
『 』
「……ふだんからお掃除しようね?」
『……はい。』
この日以降、白ちゃんは定期的にお部屋のお掃除をするようになった……
……とか、なっていないとか。




