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第2話「弟子入りの条件」

運命の出会いを果たした蒼真と市村鷹之助。

しかし、歌舞伎の世界は決して甘くない。

第2話では、鷹之助が蒼真を弟子として受け入れるかどうか、その条件が明らかになります。



「面白い」と言い残した鷹之助は、孤児院の玄関口へ戻ろうとした。

その背を、蒼真は思わず追いかけた。

「待ってください! ぼく……歌舞伎をやりたいんです!」


突然の言葉に、鷹之助は足を止め、振り返る。

「やりたい、か。坊主、歌舞伎ってのはな、遊びじゃない」

その眼差しは鋭く、蒼真は息を呑んだ。


「舞台に立てば、客が喜ぶか失望するかは、お前の責任だ。

稽古は毎日。朝も夜も関係ない。飯もろくに食えない時だってある」

言葉は重く、しかしどこか挑発的だった。


「それでもやるのか?」

鷹之助の問いに、蒼真は迷わず頷いた。

「やります。ぼくは、あの舞台に立ちたいんです」


鷹之助はしばし黙り、やがて口角を上げた。

「じゃあ、条件だ。明日から一週間、俺のところに来い。

掃除、洗濯、買い出し——舞台の外のことを全部やってもらう」


蒼真はきょとんとした。

「歌舞伎の稽古じゃないんですか?」

「弟子はまず、家のことができなきゃ話にならん」

それが歌舞伎の世界の常識だという。


孤児院の院長は渋い顔をしたが、「本人が望むなら」と送り出してくれた。

翌朝、蒼真はまだ夜が明けきらぬうちに孤児院を出た。

重たい雑巾と竹箒を手に、鷹之助の家の門を叩く。


「来たか。——さあ、花道は長いぞ」

その声は、厳しさとわずかな期待を含んでいた。

蒼真の弟子入り試練が、静かに始まった。

蒼真は弟子入りの第一歩を踏み出しましたが、それは歌舞伎の稽古ではなく、裏方の雑務からのスタートでした。

次回は、この一週間の試練が彼をどう変えていくのかを描きます。

花道は、まだまだ遠く長い道のりです。



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