6 ピクニックへ行こう
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「ピクニックに行かない?」
「ピクニック……ですか?」
ロゼはソラリスをピクニックへ誘った。犬に襲われて自分が気を失ってしまったことを、ソラリスは気に病んでいるのか、元気がなかった。それを見かねて、ロゼはソラリスを誘ったのだ。
季節は初秋。穏やかな晴れ間が続いていて、ピクニック日和だ。
「お弁当はもう用意してもらってあるの。心配なら、護衛もお願いするから」
「……はい。お願いします」
ソラリスがほっとしたように頷く。やっぱり護衛がいないと不安だったんだな、とロゼは思った。ソラリスもきっと、あの犬の時には恐ろしい思いをしたに違いないから。
父の護衛にお願いすると、快く引き受けてくれた。侍女も何人かについてきてくれるようお願いした。
万全の態勢を整えて、ロゼとソラリスはピクニックへと向かった。
「姉上……大丈夫ですか?」
「大丈夫……」
ピクニックに選んだのはすぐ近場の山だった。その中腹まで登る予定だったのだが、ロゼは途中で息が上がってしまった。
ソラリスが心配そうにロゼの傍らにより、ロゼを支える。
「姉上、少し休みましょう?」
「ええ……ごめんなさい、ソラリス」
近くにあった岩場にロゼを座らせて、ソラリスも隣に座る。
ロゼはため息をついた。折角、ソラリスを楽しませたいと思ったのに、却って足手まといになってしまっている。登りやすいと聞いた山なのに、12歳のロゼにとってはまだ、厳しかったらしい。
「姉上、お水をどうぞ」
ソラリスが革袋を出して、ロゼに渡してくれる。ロゼは礼を言って、それを受け取った。
飲むと、乾いた喉が潤いとても美味しかった。
「ソラリスも、どうぞ」
革袋を渡すと、ソラリスは、一瞬迷ったような顔をして、結局、首を振った。
「僕は大丈夫です」
「そう……? 飲んでおいた方が良いんじゃない?」
「いえ、本当に大丈夫です……」
ソラリスは、なぜか視線を逸らした。あまり強要しても良くないわね、とロゼは革袋を侍女に渡す。
「見て、ソラリス。景色が綺麗ね」
「本当ですね」
ソラリスが目を細めた。まだ中腹にも至っていないというのに、眼下には紅葉に染まった森林が見えた。
しばらく休んでまた歩き出す。隣を歩いていたソラリスが、そっとロゼに手を出した。
ああ、心配してくれているんだなと嬉しくなって、ロゼはその手を取り、甘えることにした。
ソラリスの手は少し自分よりも大きくて、ひんやりと心地良かった。