39 求婚
話があるのです、とソラリスは真剣な面持ちでロゼに伝えた。
ラファティが来た翌日、ソラリスはロゼと庭を散歩していた。どちらからともなく、自然と手を繋いだ。ロゼの手の温もりを感じながら、ソラリスは歩みを止めて話を切り出した。ひらひらと桜の花びらが舞い落ちる。
「ロゼ、大切な話があるんです」
「大切な話って何?」
ロゼが小首を傾げて尋ねる。ソラリスは真剣な面持ちを崩さず、ロゼに言葉を紡いだ。
「ロゼ、僕と一緒にレアルへ来てくれませんか?」
「え……?」
「僕はレアルで官吏になりたいのです。でもロゼと離れたくもない。お願いです、僕と結婚してください。そして一緒にレアルへ来てください」
「私がレアルへ……?」
急な申し出にロゼは困惑する。アルーアを離れることなど考えたこともなかった。レアルはロゼにとって遥か遠い異国だ。そこで暮らしている自分が想像もつかない。
かと言って、ソラリスと離れるのももう嫌だった。
ロゼは、逡巡して言い淀む。そしておずおずとソラリスに尋ねた。
「どうしてレアルへ行きたいの……?」
「レアルで良くしていただいたのもありますが、今、レアルは高位の官吏がとても少ないのです。僕で力になれるのなら、天主様やフィン様のお役に立ちたいのです」
だけど、とソラリスは言葉を繋げる。
「ロゼとも、もう離れたくありません。僕の我儘だと言うことは承知しています。それでも、一緒にレアルへついてきて欲しいんです」
深い菫色の瞳に必死の色が浮かんだ。ソラリスは言い募る。
「ロゼと一緒に生きていきたいんです。僕と結婚して、レアルへ一緒についてきてください」
「私もソラリスと、一緒にいたい。だけど……」
ロゼは言葉を切り、そして躊躇いがちに続けた。
「……いきなりの話で……。少し、考えさせて……」
ソラリスの瞳が傷ついたように揺れた。その様を見ていられなくて、ロゼは、そっと目を伏せる。
ふたりの間を、桜の花びらが静かに無数に舞い落ちていった。




