18 ソラリスの決意
ソラリスが戻ったのは昼も間近になる頃だった。ロゼの部屋にやってきたソラリスは居住まいを正した。
深い菫色の瞳をロゼへと向ける。なんと言ってよいのか分からぬロゼに、ソラリスはにこっと花が零れるような笑みを向けた。
ロゼはその優しい笑みに胸をつかれる。
「姉上……僕は1年間、レアルに行ってきます」
「そんな……1年もの間、ひとりで……?」
「はい。幸い、言葉は父上に習わせていただいてなんとかなります。必ずや、姉上に相応しいと認められる男になって戻ってきます」
その言葉にロゼは窮する。ソラリスがレアルに行くのは、自分のためなのか、と思って胸が塞がる思いがする。
「ソラリス、無理に行くことはないわ」
思わずそう言うと、ソラリスは首を振った。
「僕は姉上に釣り合うようになりたい。それには今のままではだめなのです」
ソラリスはじっとロゼを見つめる。深い深い菫色の瞳で。
「姉上、あなたが好きなのです」
「私は……」
「お返事は1年後、僕が帰ってからください」
「いつから……?」
ロゼは思わず聞き返す。
「いつから、私のこと、そんな風に思っていてくれたの?」
その言葉にソラリスが懐かしそうに目を細めた。そして少し照れたように笑う。
「たぶん……初めて会ったときから。姉上が僕に微笑んでくれた。僕を、一生懸命慰めてくれたときから。ずっと一緒だと言ってくれて、僕の異質な誰も受け入れてくれなかったこの顔を綺麗だと言ってくれたときから。ずっと、お慕いしていました」
ソラリスはそう言うと、ロゼの長い髪を一房取った。
「好きです……ロゼ」
そう言うと、そっと、その髪に口づけた。
ソラリスが立ち去ってしまった後、ロゼは動けずにいた。
従兄弟、義弟ではない、ひとりの異性なのだと意識すると、ドキドキと胸が高鳴って動けなくなったのだ。
(好きです……ロゼ)
その言葉は聞き慣れず、ロゼの心を震わせた。初めて異性から告白をされたのだと、改めて意識した。
口づけを落とされた髪を触る。胸の高鳴りはまだ当分止みそうにもなかった。