後
家に帰ったら、お父様とお母様、弟のデービットが出むかえてくれた。
「カーリン!心配したぞ」
「よりによって、聖女山に遊学するなんて」
「姉上、食べられなかった?」
「まあ、皆、善い人達でしたわ」
何でも、聖女山は戦闘聖女のカテゴリーの修道院だそうだ。
凶悪、凶暴と言うが、分からない。皆、善い人だ。
「それで、クルト殿との婚約は・・・どうする?」
「あ、お父様、クルト様の事、忘れていましたわ。解消でお願いします」
「そうか、決断をしてくれたか。まずは書面で伝えよう」
☆貴族学園
単位は聖女山の1年を入れてくれるそうだ。
留年はしなくてすむ。
しかし、学業はおくれているから頑張らなければ。
「よろしくお願いします」
「うむ。クラスを間違えないように」
お友達とサロンでお茶をしていたら、クルト様とその取り巻きがやってきた。
「おい、エーリカ?いや、カーリンだっけ?お前、何、勝手に婚約解消をしているのだ!親父に怒られちゃったじゃないか?
お前は形だけのお飾り妻として、家の事だけをしていればいいんだ。ミミーを愛妾に迎える計画だったんだぞ!」
「はあ」
呆れて、席を立つ。
「女は愛してくれる殿方のために着飾ります。どうして、愛してもくれない殿方の家にいきましょうか?」
「まあ、いい。既成事実を作る。俺のサロンに来い!」
「へへへ、クルト様、良い思いした後は私達にも」
最低な奴らだ。
「カーリン様、逃げましょう」
「いいえ」
「ヒヒヒヒ、こっち来いや」
「学園中で噂流してやるぞ」
「あさましや。畜生どもが夢の跡!」
バキ!ゴキ!
鉄扇でゴロツキ貴公子たちの腕や肩を叩いたら、骨が折れる音がした。
「「「ギャアアーーー」」」
私はナターシャ様のように手加減は出来ない。
クルトは狼狽し、後ずさったわ。壁で止ったわ。
「な、何だ。俺が好きじゃ無いのか?やめようぜ。なあ?」
私は両手を地面に平行に広げる。
こうすると、上体がブレない。
「王家令嬢大歩行!令嬢水鳥の舞!令嬢は媚びず。引かず。省みず!!」
スーとクルトの前まで進み。
「な、何だ。や、やめろ。父上に言いつけるぞ!」
【フン!ハー!】
肘打ちを食らわした。浅かったか。でも壁と肘に挟まれてダメージを負ったわ。
クルト様は悶絶して床に倒れた。
「ウグ、グハ、回復術士を・・・」
あら、血をはいているわ。
私はこんな奴のために悩み苦労していたのかしら。
今までの愛情が嘘のように憎しみに変わった。
ドゴ!
一回。腹につま先をめり込ませたら、もうだめだ。止らなくなった。
「オラ、オラ!これぐらいで根をあげてはなりませんわ!」
「や、やめて・・」
ドコ!ボゴ!ガキ!
「「「カーリン様!」」」
「カーリン嬢!口から血が出ている!」
王女殿下が間に入って無かった事にしてくれたわ。
向こうも男子たるもの婦女子に不覚を取ったとは言えないらしい。
無事に婚約は解消になり。クルト様の不貞が理由で多額の賠償金をもらったわ。
その後、私には沢山の釣書が殺到している。
「カーリン・・大変よ。クルト様が来たわ。また、婚約を結びたいですって、隠れていなさい」
「まあ、どうして」
何故、また来るのだろう。9割殺し状態、回復術士3人がかりでかろうじて生き残ったみたいだけど・・・
「いえ、お母様、行きます」
玄関でお父様と執事、弟が止めていたわ。
「カーリン!また、婚約を結ぼうぜ!」
「結びません」
「はあ、はあ、はあ、俺、蹴られて分かった。これが愛だ!」
はあ?
「あのときのカーリンの顔は、ゾォッとしてまるで汚物を見るような顔だった。俺を認識していた。俺を見てくれたぁーーーー俺は実存していたのだぁ!」
「知りません!」
「父上、これ、どういうこと?」
「デービット、カーリン、奥に行きなさい」
「「はい」」
お父様に任せた方が良いみたいだ。
「はあ、はあ、はあ、はあ、放置?放置か?これも良いぞ!」
「クルト殿、カーリンには釣書が殺到している。君の出番はないよ」
「ウホー、寝取られだぁーーーー」
「黙らんかい!ボケ!」
愛の反対は無関心。クルト様は私に無関心だったのが、裏返って、愛に変わったらしい。
何を言っても喜ぶから質が悪い。
また、無関心に戻ったから、クルト様には用がない限り話さないだろう。
と釣書の山に囲まれながら、聖女山の皆にお礼の手紙を書いた。
もう、クルト様に興味を持つことはないだろうと。
最後までお読み頂き有難うございました。