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4歩目は倉庫

 上にあげた扉を通り、暗い部屋に入る。


 リュエール、キャローレ、エストレアが入口近くの壁やテーブルにある水晶玉に魔法で明かりを着けて行く。

 暗いのに、的確に点けられるのは、何度もここに来ているからだろう。

 ランプやロウソクでないのは、窓のない密閉された館だからだろうか。


 「それくらいで大丈夫よ」

 ティアが、テーブルにある小さな水晶柱に触れなから、呪文を唱える。

 「オールライト」

 呪文に反応するように、天井から細い鎖に下げられた幾つもの水晶玉が光りだす。

 魔力型の電球のような照明装置だ。


 暗い時には分からなかったが、入ってすぐ、扉の左右に宝石の飾りが付いた石柱立っていた、館の中央には、三方を壁で囲まれ、二重の線に文字が書かれ、その線の中に五芒星の描かれた魔法陣と、階段のある丸い台座が2つ、台座の間に水晶柱が立っている、正面から見ると、台座、水晶、台座となり、その後ろに魔法陣が設置されている形だ。

 工房というので、鍛冶屋の様な雰囲気を思い浮かべていたが、とてもシンプルな作りだ。


 左右の壁には、何体もの鎧や石像が飾られ、その手前には剣、盾、槍など種類ごとに棚に収納されている。

 「これが、親父が付与の能力で作った武具ですか」

 近くにあった、レイピアを手に取る。

 鞘には、炎付与☆と記載されたメタルプレートが小さな鎖で付けてある。

 「はい、ここにある武具は大地様が、すでに何らかの魔法を付与された物です」

 鞘から抜き、突いたり、振ったりするが何も起きない。

 (接触タイプの魔法?)

 何も起きない事に、俺が不思議そうな顔をしていると。

 「それは、自身の魔力を注がんと、発動しないタイプだな」

 デセールが俺が手にしたレイピアの横にあった、氷付与☆のプレートのついたショートレイピアを掴む。

 「このプレートの、付与の後に☆が付いているのは、使用者の魔力が必要なタイプだ、見ていろ」

 デセールがショートレイピアで数度素振りをすると、切っ先が通った空間の水分が凍り結晶となってキラキラと落ちてくる。

 「片山殿は、まだ魔力を何かに注ぐ方法を知らないから発動しないのだ、まあ、生活魔法の基礎だから簡単に覚えられるはずだがな」

 鞘に戻した、レイピアを元の場所に戻す。

 「なるほど、でも、これで武具の持ち出しは出来るんですね」

 デセールは残念そうな顔をしながら首を振る。

 「いや、この中で使えても持ち出せないのだ、見ていてくれ」

 そう言うと、ショートレイピアを持って、入口に向かう。

 すると、扉の両脇にある石柱が光り、付いている宝石から稲妻が走る。

 「これなのだよ、このプレートを外さずに持ち出そうとすると、電撃に撃たれる、それを我慢しても超重力、石化、炎と発動し、無理して突破しても瀕死の状態だ、もし持ち出せたとしても、このプレートが付いていると外では、大地殿しか知らない呪文を唱えないと魔法が発動しないのだ」

 スーパーや大手書店などにある、万引き防止装置の超強化版といったところだろう。

 炎だけなら、強行突破出来るだろうが、電撃と超重力で動きを止められ、石化されながら炎で焼かれるのは想像したくない、そんなリスクを犯して持ち出しても発動しないなら普通の武具と同じなのだから。

 「そのプレートを外す方法を見つけないと、駄目って事ですね、魔法で外す事は出来ないのですか?」

 「解錠の魔法は効きませんでした、アイテム破壊系の魔法ならと思ったのですが、鎖ではなく武具が壊れてしまうので、魔法を反射させるような魔法が入っていると思われます」

 ティアが説明してくれ、デセールは、黙って頷いていた。


 「ちょっと見て回っていいですか?」

 5人が見守る中、鎧や盾、スクロール、指輪等見て歩く。

 どれも素晴らしい武具なのだろうが、何かイライラするような違和感がある。

 (なんだろう、何か違う、これじゃない)


 一通り、武具を見て歩いた後、館の中央にある魔法陣の前に立つ。

 「この魔法陣は、何ですか?」

 すると、ティアが歩み寄り、説明を始める。

 「魔法の付与とは、基本的には自分の使える魔法を何かに付ける事ですが、大地様は生活魔法以外は

使用出来なかったので、最初は昔作られたスクロールから魔法を移動させる形で付与をしていたのですが、魔法を貯める銀水晶を利用することで、魔法使いや神官が使う魔法を水晶に閉じ込め、それを付与する方法を考えつきました、その時に作られた装置です」

 ティアが右側の丸い台座に上がり、聖杖をかざすポーズをとる。

「こちらから、そちらの水晶に向かって魔法を放つと、水晶がそれを吸収します」

 「そして、その水晶から、魔法陣に置いた物に付与しているようでした」

 (なるほど•••もう少し調べて解除のヒントを探すしかないか)

 俺は、台座の上に居た、ティアが階段から降りるのに手を貸し、一度皆が居る入口の方へ向かう。

 「‘もう少し詳しくは調べないと、ヒントは見つかりそうにないですね、どうしますか」

 ティアとデセールが、話合う。

 「片山様には、もう少しヒントを探して頂こうと思います、とりあえず、ここが開いた事を、私は神官長へ、デセール様は両制公様と国王陛下のもとに伝えに参ります、その際、国王陛下との拝謁はいつが良いか両制公様に確認してきて頂きます」

 「リュエールとエストレアはここに残って、片山様のお手伝いをお願い、キャローレが居るとお話で作業の邪魔になってしまうかもしれないので、私と一緒に来て下さい」

 リュエールとエストレアは、胸に左手を当て少し膝を曲げる。

 キャローレは、 泣きそうな顔をしながら、何度もこちらを振り返り、ティアとデセールの後ろをついて出て行く。

 

 残された3人•••

「さて、何処から調べるか•••」

 先程、電撃を放っていた石柱の横にあるテーブルの上にある数冊の豪華な装飾の本が目に止まった。

 「あの本はなんですか?」

 リュエールが本を開く。

 「武具の貸し出し帳のようですね、武具の名前と借りたと思われる方の御名前があります」

 ノートに名前を書く事で、封印を外していた?

 名前を書く事で、相手を貧乏にする貧乏神ノートなら漫画で読んだ事あるが•••物は試しだな。

 俺は、近くにあった、杖を手にして。

 「リュエールさん、その本に俺の名前と、この杖を書いて下さい」

 杖のプレートを見せながら、入口を再確認する。

 両脇の石柱と入る時には分からなかったが、天井に水晶玉がある、光っていないところを見ると、他の照明用の水晶玉とは違うようだ。

 「片山様、出来ました」

 リュエールの合図で入口に近づく。

 「二人とも、天井の水晶をよく見てい下さい、何か魔法的な反応があるかもしれないので」

 2人は、頷き、胸の前で両手を合わせこちらを見ている。

 さっき、デセールがショートレイピアを持って立った所に近づく、まだ、反応はない。

 さらに一歩、もう一歩と近づいた時、〈バチ〉と音を立て稲妻が走り出す。

 さらに一歩、もう一歩•••

 「片山様!」

 足を出しかけた瞬間、リュエールの声と、俺の服の裾を掴むエストレア。

 〈ブゥーン〉と唸るような音を立て、天井の水晶が、緑色に光り出す。

 目には見えないが、目の前に何かある、手にしている杖の先で、そっと突いてみる、次の瞬間。

 「うわっ」

 杖の先に、見えない力士でも乗ったのかと思うほど、重くなる、持ち上げるなんて無理だ。

 俺は、杖を引きずりながら、引っ張り出す。

 「これが超重力、先端でこれだと、体が入ったら動けないどころか、圧死するぞ」

 見ると、涙目でこちらを見ているリュエールと、服を掴んだままのエストレアが無表情で立っている。

 「リュエールさん、ありがとう、エストレアさんもありがとう、素早いんですね」

 すると、今まで全くの無口だったエストレアが口を開く。

 「バカ」

 小さな声だか、しっかり聞こえる、鈴のような美しい声だ。


 突然のバカ発言に、俺は目を丸くした。

 俺の、そんな反応を無視するように、エストレアは、リュエールの隣に戻って行く。


 確かに、危険な行動ではあったが、発動と見せかけて、記載された人が通る時に解除するタイプもあり得ると思ったのだ。


 それにしても、いきなりストレートに「バカ」は少しこたえる。

 

 俺は、杖を手に2人も所に戻る。

 「軽率でした、すみません」

 2人に頭を下げる。

 「いえ、ご無事で良かったです」

 リュエールは涙をハンカチで拭いながら。

 「バカ」

 エストレアは、無表情で呟く。


 「もう少し、細かい所から調べてましょうか」


 俺は、自分のいた世界で参考になる物はないか思い浮かべながら、テーブル横の椅子に腰掛けた。


 

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