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二人の仲に波風を周囲が起こして…

宏と会ってから二日後、カスミが事務所へ行くと、社長の遠藤に呼ばれた。

「何ですか?社長。」

「何ですか?じゃないだろう!何だ、これは!?どういうことだ!?」

遠藤が机の上に投げつけたのは、今週発売の写真週刊誌だった。そこには、品川のレストランで、宏と食事をしている時のものが載っていた。

「あっ!やっぱり、やられたか…」

「やっぱりじゃないだろう!カスミ!どういうことだ!?誰なんだ、この男は!?説明しろ!?」

「…」

「何故、黙ってる!?説明しろ!」

「…私の今一番大切な人、としか言えません。」

「…あのな、カスミ。それじゃ説明になってないだろ?誰なんだ?業界の人間なのか?」

「いえ、違います。一般の人です。」

「…そうか。いいか、カスミ。今が大切な時なんだぞ。人気も出始めて、クリーンなイメージできてるんだぞ。」

「それが、どうしたんですか?私も、一人の女です。恋愛も人並みにする。不倫とかしてる訳じゃないんだから、文句を言われる筋合いは、ないと思いますけど…」

「そういう事を言ってるんじゃない!今の自分の立場と状況を、少しは考えて行動しろ!って、言ってるんだ!」

「じゃあ、恋愛するなって言うの!?」

「はっきり言えば、そういう事だ。…別れろ。」

「いや。別れない。」

「別れろ。」

「別れない。」

二人は、三十分近く押し問答していたが、カスミの仕事に向かう時間が来たため、結局、結論は出なかった。カスミは、事務所を出るとすぐに、宏に電話した。

「もし、もし。」

「あっ、ヒロぉ。カスミだけど…今、大丈夫?」

「あぁ、大丈夫だよ。どうしたぁ?カスミちゃん。」

「ヒロぉ、ゴメン!この前レストランで食事した時に、写真撮られてた。次の発売の写真週刊誌に載るみたい…」

「えっ!?ホントに!?やっぱり、撮られてたかぁ…」

「ホント、ゴメン!社長には、ヒロのこと詳しく言わなかったから。ヒロのことが、知られることは絶対に無いから安心して。」「こっちは、大丈夫だけど、カスミちゃんの方は、大丈夫じゃないだろ?」

「まぁね。さっきも社長と言いあいしてた。別れろって言うから、別れないって言ってやった。」

「おい、おい、大丈夫かぁ?ホントに…」

「大丈夫だって。ヒロぉ、ホント、ゴメンね。」

「いや、俺の方は大丈夫だから、気にしなくていいから。」

「うん…ねぇ、ヒロぉ。マスコミに聞かれた時には、はっきり言ってもいいかな?ヒロとのこと…」

「…それは、カスミちゃんにまかせるよ。」

「…うん、分かった。」

「また、何かあったら連絡して。」「分かった。連絡するね。」

カスミは、電話を切ると、ファーストアルバムのピーアールのため、ラジオ局に向かった。そこで、待ち構えていたのは、案の定記者やレポーター達だった。矢継ぎ早に、質問を浴びせられたが、唯一答えたのは、「お付き合いしているのは事実です。今の私にとって、一番大切な人です。」

と、はっきり力強く言った。

写真週刊誌の発売当日の夜、幼なじみのミサキといつものバーのカウンターにいた。ミサキが呼び出したのだった。「私、ビックリしたわよ、カスミ。写真を見た時もだけど、テレビを見た時は、もっと驚いたわ。あんたから、何も聞いてなかったからさぁ。あれだけはっきり言って、大丈夫?」

「大丈夫じゃないよ。今朝も社長と言い合いしたから。」

「別れろって言われたんでしょ。」

「…うん。」

「でも、カスミは別れたくないって。」

「何がダメなの?私も普通の女の子だよ。恋愛ぐらいするわよ。不倫とか略奪愛じゃないのよ。」

「まぁ、そりゃそうなんだけどね。」「けど、何?」

「今、どんな男だろうと近付けたくないわけよ、社長は。それを許してもしものことがあったら、会社が危なくなるからね。」

「もしものこと?何、それ?」

「わからない?カスミ。写真を撮られるのは勿論だけど、子供とか出来たらどうするのよ。デビューして今までクリーンなイメージで来てるんだからさ。それが、崩れるのが恐いのよ。それに、子供が出来ればあんたのことだから、産むって言うだろうしね。」

「何言ってんのよ。そんな事全然考えてないわよ。今はただ、好きになった彼を失いたくないのよ。それが、心の支えなの。彼がいるから、何とかなるって思えるの。でないと、プレッシャーに押しつぶされそうよ。」

「プレッシャーは、感じてるんだ。」

「当たり前じゃない。私がダメになれば事務所もダメになるとか、しょっちゅう言われるんだから。」

「そんなに!?まぁ、私はカスミの味方だから、何かあったら連絡してよ。」

「うん、わかった。ありがと、ミサキ。」

「長い付き合いじゃない、力になれるならなるからさ。で、どんな感じの男なのよ?」

「えっ。んー、そうだなぁ…やっぱり、話すのやめた。ミサキ、ワイドショー好きのおばさん顔になってるわよ。」

「誰がオバサンだって、カスミ!」

ミサキがカスミの腕を軽く叩いた。

「痛いわね。もう少し、騒ぎが収まったら紹介するからさ。」

「わかったわよ。絶対だぞ、カスミ。」

「わかったって。」

二人は、その後しばらくお互いの仕事の事や、昔話に花を咲かせた。

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