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二人が再会!?そして…

宏は、カスミを拾って東京に行ってから、約一ヶ月ぶりに品川へ向かって、トラックを走らせていた。東京が近付くにつれて、カスミのことを思い出していた。彼女は、あの時の騒ぎが影響していない様で、テレビやラジオに出ていた。デビューして初のアルバムを製作中らしい。カスミの方から連絡は、一度もないし、勿論、宏の方からもしていない。たまたま、拾って乗せたのが、自分なだけであっただけと、思っていたからだった。それに、忘れていると思っていたからだった。夢か幻だったのだろうと、改めて宏は思っていた。ふいに、携帯が鳴った。時間は、夜中の一時を少し回ったところだった。宏は、運転中だったため、番号を見ずに出てしまい、少し緊張しながら言った。

「もし、もし。」

「ヒロぉ。誰かわかるかなぁ?」

「えっ!?」

「えっ、じゃないでしょう。忘れたの?カスミだよぉ。」

「ウソ!?ホントに!?」「ホントだよぉ。で、何してるの?」

「何って、運転中だけど…品川に向かってる…どうしたの?」

「東京に来るんだぁ。ヤッタァ〜!実はさぁ、明日、一ヶ月ぶりに休みくれたんだけどさぁ、予定が何もなくて何しようかと思ってたんだよね。それで、ヒロのことを思い出して、何してるかと思って、電話してみたんだけどね。迷惑だった?」

「いや、迷惑なわけないし。むしろ、嬉しいし、ビックリだよ。こんなオジサン、覚えてくれてて。」

「大丈夫。オジサンじゃないよ。で、明日少し時間作れないかなぁ?」

「いや、まぁ、帰りの荷物が泊まって次の日だから、荷物を降ろしたら、大丈夫だけど。」

「じゃあ、決まりだね。品川の何処に行くの?」

「あぁ、品川埠頭だけど、何で?」

「だったら、明日十時に行くからね。品川埠頭の交番の近くで待ってるから。」「えぇ!?ホントかよぉ。大丈夫?フライデーとかされたら、どうするの?」

「大丈夫だって。心配ないって。」「ホントかよぉ…」

「ホントだって。もし、その時は、彼氏です!って、言うからさ。」

「…」

「こらっ!ヒロぉ!黙るなぁ!」

「いや、だって、返事に困るでしょ!?」

「まぁ、とにかく明日十時に行くからね。埠頭の交番の近くで、待ってるから。じゃあ、おやすみぃ。気を付けてね。」

「あぁ、おやすみ。」

宏は、突然のカスミからの電話で、眠気も吹っ飛んでしまった。宏の方は、勿論忘れていないが、カスミの方も覚えていてくれたことに、嬉しくて一人でニヤニヤしていた。しかも、偶然ではなく、約束して会えるのだ。宏は、ハンドルを握りながらまだ、ニヤニヤしていた。


宏は、仕事を終わらせてから、待ち合わせ場所へ向かった。向かいながら、からかわれてないか、夢じゃないかと、あれこれ考えていた。宏は、わざと五分ほど遅れて行った。信じられないでいたからだった。カスミは、来ていた。宏が近付くと、

「ヒロ!遅いぞ!!女の子を待たすなぁ!」

「ゴメン、ゴメン。待ったかな?いつ来た?」

「約束の十分前。」

カスミは、言いながら膨れっ面のままだ。わざと、膨れっ面をしている。その証拠に、口元は笑っている。宏が分かりやすい様に、乗せて貰った時と同じ服装だった。宏のサングラスをして。

「早かったね。」

「そうかな。普通だよ。だって、ヒロに早く会いたかったからさ。」

「嬉しいこと言うねぇ。本気にするだろ、このオジサン。」

「ヒロぉ、自分で思ってるほどオジサンじゃないよ。全然、私のストライクゾーンだよ。」

「ホントかよぉ!?」

「ホントだってば。だから、会いたいと思って連絡したんじゃない。ヒロは、連絡してくれないしさぁ。正直、あれからヒロのこと度々、思い出してたから顔が見たくなったのよ。」

「そりゃ、嬉しいなぁ。ありがと。こっちから、連絡するのは、さすがにためらってね…」

「そっか。それより、今日は何時までいいの?色々、行きたい所があるんだけど…」

「明日の朝、横浜に行けばいいから、遅くまで大丈夫だけど…カスミちゃんは、大丈夫なの?」

「ヤッタァ!!じゃあ、引っ張り回そう!私は、大丈夫だから。」

カスミは、とびきりの笑顔になり、宏の腕を組んで引っ張る様にして、歩き始めた。

「おい、おい、大丈夫かよ?」

「平気、平気、ほら早く行くよ!」

渋谷、六本木、青山、新宿を、カスミに引っ張られる様に歩いたが、宏は、恋人同士みたいだなぁと、思っていた。品川に帰る途中で、適当なレストランに入った。宏は、それなりの所に入ろうと思っていたが、カスミが、気取らない店でいいからと言って、カスミから入って行った。

「しかし、信じられないなぁ。あのカスミちゃんが、目の前にいるこの状況は、有り得んな。」

「そう?別に気にしなくていいんじゃない。私、普通の女の子だよ。」

「そりゃ、そうだけど周りは、そうみないからなぁ。」

「まぁね。でも、普通の女の子ですぅ。」

カスミは言いながら、ニコニコしている。欲しかった物が買えたから、機嫌がいい。

「ねぇ、ヒロぉ。これからどうするの?トラックで寝るの?」

「そうだな。トラックしか寝床がないからね。今、何時かな?」

宏は、時計を見ながら言った。

「ヒロぉ。あのさ、まだ大丈夫なら、もう一ヶ所行きたい所があるんだけど…付き合ってくれないかなぁ。」

「えっ!?まだ、どこか行くの?」

「うん。」

カスミは言いながら、ニコッと笑った。宏は、カスミの勢いに押されて品川のシティホテルにいた。カスミは、シャワーを浴びている。宏は、嬉しい反面戸惑っていた。なにせ、一回り以上年下の女の子でしかも今、大人気の女の子だ。世間に知れたら、大変な事になる。大丈夫だろうか?宏は、あれこれ考えていた。カスミが、バスタオル一枚で出て来た。

「ヒロぉ、いいよぉ。シャワー。」

ニコニコしている。

「おい、おい。カスミちゃん、何か着たら?男がいるのに…」

「いいじゃない。まだ、着る気がないし、厚いからさ。」

イタズラっぽく笑っている。

「そんな困らせるような事言って…とりあえず、シャワー浴びてくるから、何か着てなよ。」

「はぁい。」

カスミは、ペロッと舌を出した。宏は、シャワーを浴びてバスローブを羽織り、部屋に入るとカスミはまだ、バスタオル一枚でいた。「何やってんの!?風邪ひくよぉ、カスミちゃん。」「大丈夫だってば。エアコンの温度調節してあるし。それに、身体が冷えたらヒロに暖めて貰うから。」

そう言いながら、ソファから立ち上がり、ベッドの端に座ってから、宏を見た。その顔は、オトナの女の表情になっていた。「あのさ、私、今日一日ヒロとデートしてわかったんだけどさ、ヒロのこと好きだよ、やっぱり…だから、勇気を出して私の方から、ホテルに誘ったんだけど…ヒロ、私じゃダメかな?」カスミは、そう言ってうつむいた。

「いや、ダメじゃないよ。俺がお願いしたいぐらいだよ。けどさぁ、ホントに俺でいいのかな?」

「もちろん、いいよ。私を、ヒロの彼女にしてくれる?」

カスミは、宏を見ながら言った。宏は、カスミの様に座り言った。

「もちろん。俺の方こそよろしくね。」

宏は、カスミを見て微笑みながら言った。そして、軽く口づけをした。二人は、ベッドに入った。宏は、年下の女の子を抱くことに、年甲斐もなくドキドキしていた。

「ヒロぉ、ドキドキしてない?」

「うん、してる。分かった?」

「うん…」

宏の胸の上で、言った。二人は、その夜初めて一つになった。

宏は、横浜に向かうため、早めに起きタバコを吹かしながら、コーヒーを飲んでいた。昨夜のことを思い出しながら。

「ヒロぉ、もう行くの?」

「あっ、起こした?ゴメンね。そろそろ用意して、向かわないとね。」

宏は、着替えながら言った。

「ねぇ、ヒロぉ。私の彼氏だからね。」

カスミは、ベッドの中から顔だけ出して言った。

「あぁ、俺の彼女だ。」

宏は、微笑みながら言った。カスミは、ニコニコしていた。宏は、カスミのところに行き唇を合わせた。

「じゃあ、そろそろ行くから。」

「うん。気を付けてね。ヒロぉ。」

宏は、まだ暗い朝の中仕事に向かった。

カスミは、宏が出て行った後、昨夜のことを思い出しながら、幸せな気分に浸っていた。宏のことを更に、好きになっていた。優しく、女の子に気配りも忘れない。それに、今までの男は色々聞いて来たが、宏は聞いて来なかった。カスミは、今までの男がそうだったため、宏に昨夜聞いてみた。

「ねぇ、ヒロぉ。昔のこととか聞かないね?」

「えっ!?あぁ、別に過去は、過去だから気にしないけど…誰しも、言いたくないこともあるだろうし、聞いたところで過去だからね。」

「そっか。」

「そうだよ。昔のことは、話したい時に話せばいいんじゃない。まぁ、人並みの人生経験はあると思うから、少々のことでは驚かないけど。それに、今、目の前にいるカスミちゃんが…好きなんだけど…ダメかな?」

宏は、最後の方は小声になっていたので、聞き取れていないだろうと思っていた。

「えっ!?私が何?」

カスミは、わざと聞こえない振りをした。そんな事を思い返しながら、身支度をしてホテルを後にした。宏のサングラスをかけて。

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