トラック野郎に恋して…
またまた、久し振りの投稿になってしまいました。楽しみにしていた方も、そうじゃない方も、初めて読む方も、お待たせしました。間隔が開かないように、連載投稿しますのでよろしくお願いします。内容も佳境になっています。
宏は、この前と同じ様に先にホテルを出た。カスミに口づけをして。カスミの方も幸せな気分に浸っていた。でも、一つだけ違うところがあった。
“今回の事が知られて色々と言われるようならもういい。ヒロのそばに行く。ヒロは、生活面を心配してるみたいだけど、それなりの貯えはある。ヒロと一緒にいたい!!”
そう心に決めた事が唯一、この前とは違っていた。カスミは、タクシーを拾いマンションまで帰った。
案の定、マンションには社長の遠藤がいた。カスミが、部屋に入るなり遠藤は言った。
「カスミ!!どこに行ってたんだ!?誰と一緒だったんだ!?」
と、まくし立てた。
「どこでもいいでしょ!!ちゃんと帰って来たんだし。」
「当たり前だ!!」
「じゃあ、そんなに怒鳴ることないでしょ!」
「マスコミに、目を付けられているんだぞ!少しは、考えろ!」
「別に構わないわよ。私は、気にしてないから。」
「とにかく!!あまり心配をかけるな!!いいな!?分かったな!?」
「はぁい、分かりましたぁ!」
カスミの声を背にして、遠藤は帰って行った。とりつくしまもない、半ば呆れ顔で。
カスミは、ミサキに電話した。いつものバーで、カウンターに並んで二人は座っていた。
「何よぉ、話って?恋の話しかなぁ?カスミ。」
言いながら、カスミの顔を覗き込む。
「まぁね、それもあるけどね…」
「何!?他にも何かあるの?」
「…うん。」
「何よぉ?」
「昨日さ、久し振りにアノ人に逢ったの。それで決めたの。昨日の事で色々とあるようなら、彼のところに行くって。」
「はぁ!?何言ってるの!?今のカスミがそんな事出来るわけないじゃない!もう少し、冷静になりなよ!」
「私は、冷静になって考えて決めたの。」
「でもさぁ、カスミが行かなくても、彼に来て貰ったらどうなの?」
「もちろん、それも考えたわよ。私がまだマイナーなら、それもいいけどさ。これだけ、売れてきたら逆に彼に迷惑かけてしまうと思うのよ。」
「それは、そうだけどさぁ…それぐらいは、その人も分かってるでしょ?有名人を、彼女に持つならさぁ。」
「それは、彼も分かってる。でも、私は芸能人のカスミとしてじゃなく、普通の一人の女の子として付き合ってるのよ。」
「それも、分かるけどさぁ…」
「とにかく、バレたらの話しなんだけどね。」
カスミは、苦笑いした。ミサキがイタズラっぽく笑いながら、言った。
「バレるに決まってんじゃん…マスコミに、目、付けられてんのに…」
「やっぱり、すぐバレるかなぁ?」
「…はぁ。あんたって人は…」
「何よぉ?」
「…せっかく、売れて来てこれからなのにさ…」
「…正直、売れて来て嬉しいわよ。でも、有名になって来たら、色々と不自由になってきたし、何よりも、曲づくりを前みたいに自由に出来ないのよ。私は、有名になる事は、どうでもいい。好きな曲を好きなように、ストリートの時みたいに歌えればいいのよ。」
「…そうかぁ。じゃあ、カスミは決めてるんだ。」
「…そうね。」
「…はぁ。仕方がないわね。私は、カスミのことを応援するからね。あんたって、結構頑固だからね。」
ミサキが、苦笑いした。カスミもつられて苦笑いした。
「ありがとね。」
「何言ってんの。長い付き合いじゃないの。」
ミサキは、カスミの肩を叩きながら言った。
「そうね…」
「何かあったら、連絡ちょうだいね。」
「うん。」
二人は、カスミの話が終わると、次は、ミサキのグチのメドレーだった。
宏は、東京から帰って仕事が無かったため、出発することはなく、昼過ぎに部屋に帰っていた。
“俺はどうしたら…カスミの気持ちは嬉しい。でも、彼女の可能性を潰していいものか?しかし、カスミがあそこまで決心しているなら、カスミの気持ちに応えるのが…”
宏は、考えていた。香と15時に会う約束をした。
宏と香は、喫茶店で向かい合っていた。
「急にどうしたの?」
「…ん、あぁ、実はさぁ…」
宏が言い終わらないうちに香が、
「見当は付くわよ。あの娘のことでしょ?何かあったみたいね、ヒロ。」
香は、ニヤッと笑った。
「…バレバレやな。」
宏も苦笑いした。
「当たり前でしょ。長い付き合いなんだから。で、どうしたの?」
「…ん、あのさ…」
宏は、次の言葉が出てこない。
「…あのさ、ヒロ。思ってることは、はっきり言わなきゃダメよ。優しいのは分かるけど、それがヒロの欠点になることもあるのよ。別に、驚かないから。」
「あぁ…」
「で、どうしたの?」
言って香は、カフェオレを一口飲んだ。宏もつられるようにコーヒーを一口飲んだ。
「あのさ、この前、東京行ったときに、あの娘に逢ったんだ。」
「…それで?」
「やっぱり、彼女のことが好きだって分かったから…」
「…だから?」
「だから、ゴメン!!香!!この前の返事は、なかったことにしてくれ!!ホント、ゴメン!!」
宏は、テーブルに両手をついて頭を下げた。香の顔をまともに見れなかったし、本当に悪いことをしたと思ったからだ。
「…全く、ヒロは変わらないわね。そんな事は、初めから分かってたわよ。」
香は、苦笑いした。
「えっ!?」
「えっじゃないわよ。ヒロと何年の付き合いになると思ってんのよ。」
また、香は苦笑いした。
「いや、まぁなぁ…」
「いいわよ。なかったことにしてあげるわよ。正直、ショックだけど…」
香は寂しそうに笑った。
「…ゴメン!香…」
「…もういいわよ、ヒロ。別に、今までの関係が壊れるわけじゃないから。でも、ヒロのことを片想いしててもいいわよね?」
「あぁ、いいよ。」
「相談には、いつでものるからさ。」
「分かった、ありがとう。」
宏は、うつむいた。ホントに悪かったなぁと思っていた。香は、そんな宏を見てまた、苦笑いした。
「それで、彼女は何て言ってるの?」
「また騒ぎになった時には、来るって言ってる。」
「マジで!?芸能界ヤメて!?来てどうするのよ!?」
香の目が点になっている。顔中に、?マークだ
「歌は自分の好きなように歌えればいいから、芸能界には未練はないらしいけどね。」
「へぇ…でも、住むところとかはどうするのよ?ヒロと一緒に住むの?」
「…そう言ってたね。」
「そうなんだぁ…ヒロ、仕事はどうするのよ?今のままじゃダメでしょ。」
「だよなぁ…やっぱりなぁ…」
「当然!まぁ、今から色々考えてもしょうがないんだけどね。」
いつの間にか、香も自分の事の様に話している。
「そうだな。その時は、連絡していいかな?」
「当たり前じゃない。いいわよ。」
香は、いつもの笑顔だった。