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トラック運転手と売り出し中のミュージシャンのあり得ない恋。読めば、あり得ない恋をしてみたくなるかも!?

時間は、深夜二時になろうとしている。とある国道を東へ向かう一台の大型トラック。時速は約七十キロだ。

(あ〜、ひと昔前までは、もっと早く走れたけどなぁ。)

運転しているのは、上杉宏。三十八歳。バツイチの独身。運転歴十三年の中堅。今日の行き先は東京の品川だ。彼は、そんなことを思いながら、エフエムの深夜放送をかけて、約二時間走らせたところで小休止しようと思い、コンビニに寄った。中に入ると、明け方にもかかわらず、若い女の子が本のコーナーで立ち読みしていた。他には、客はいない。彼は、タバコと缶コーヒーを買って、店を後にしてトラックへ戻ろうと歩きだしたら、立ち読みしていた女の子が声を掛けてきた。

「あの、すいません。どこまで行かれます?」

「えっ!?」

彼は、突然声を掛けられ顔中に「?」マークだらけだ。少しとまどいながらも答えた。

「あぁ、東京の品川だけど…」

「あぁ〜、良かったぁ〜。やっと、東京に行く人が見つかったぁ。お願いなんですけど乗せて貰えません?東京まで。」

それまで、緊張していた顔が笑顔になり、胸の前でお願いのポーズをして、聞いてきた。

「それは別に構わないけど、明日の朝になるけどいいかな?」

「全然オッケー!東京まで行ければいいから。」

彼女は、ニコニコしながら彼のトラックに乗り込んだ。(しかし、若い女の子がこんな時間にヒッチハイクか?)

彼は、そう思いながらまた、トラックを走らせ始めた。何かあると思い聞いてみた。

「どうしたの?まさか、家出とかじゃないよね!?」すると彼女は、

「違うよぉ。っていうか、私のこと分からない?」

「はぁぁ???」

「ホントに!?最近良くテレビに出てるけどなぁ〜」「ゴメン。この仕事してると見ること少ないから。」「そうかぁ。じゃあ、名前を言えば分かるかな!?カスミで分かる!?」

そう言われて、信号待ちで停まったので、差し込む外灯の明かりで顔を見てみた。

「えっ!ウソ!?本人?ホントに!?」

「そうだよぉ。何だぁ、知ってるじゃん。」

彼女はニコニコしていた。半年くらい前から、新人ミュージシャンとしてテレビに出て、徐々に人気が出始めて今ではかなり売れている。ビジュアルも良く、スタイルも悪くはない。今の服装は、Tシャツに革ジャン、ジーンズだ。髪は、伸ばせば胸の下まであると思うが、ポニーテールにしている。ラジオで、ツアーの最中と言ってたはずと思い聞いてみた。

「ツアー中じゃないの?確か昨夜、どこかでやってたでしょ?それが何でヒッチハイクしてるわけ?それも、こんな時間に。」

「そうなんだけどね。デビューして初めての休みらしい休みだし、色々あって内緒で抜け出して来たんだ。だから、今頃は大騒ぎかもね。」

言いながらニコニコしている。

「大丈夫!?後で、大問題じゃないの?」

「大丈夫よ。とりあえず今日は、完全に休みだからね。」

右手の親指を立てて、ニコニコしている。

「いや、まぁ、大丈夫ならいいけどさぁ。まぁ、俺は可愛い女の子と東京まで、ドライブ出来るから嬉しいけどね。トラックなのがチョットねぇ。」

「平気、平気。トラックとか乗ることないし。ワクワクするよ。あっ、名前聞いてないけど、教えて?」

「あぁ、宏だけど、みんなヒロって呼ぶから、ヒロでいいよ。」

「じゃあ、ヒロ!東京までレッツゴー!!」

笑顔で、手を突き上げていた。宏は、その可愛い笑顔を見ながら、とりあえず今の状況を楽しもうと思った。


斉藤行夫、三十三歳。カスミのマネージャーである。ライブ後にカスミが姿を消し、辺りを必死に探したが見つからず、携帯に何度も掛けるが電源が切られている。日付が変わろうとしている。

(あぁ、もう、どうしたらいいんだよ、全く!)

そう思いながら、いまだに控え室のソファーに横になっている。不意に携帯がなり、飛び起きた。

「もし、もし!カスミか!?」

「何をそんなに勢い込んでるんだ?何かあったのか?」

行夫は、思わず画面の番号を確かめずに出ていた。しまった!と思ったが遅い。相手は、事務所の社長、遠藤晃一だった。彼は、昔のグループサウンド流行の時代のあるグループのメンバーだった男だ。

「いや、あの、特に何も…」

「そんなはずないだろ。何があった?言ってみろ。」「…実は、ライブ後にカスミが姿を消してしまって…」

「何だと!?明後日は、ツアー最後の東京公演だぞ!早く捜し出せ!全く何を考えてるんだ、アイツわ!!」

「わかりました。それと、マスコミが何社か情報を得てます。申し訳ありません。」

「本当か!?分かった。マスコミの対応は、こっちでやる。とにかく早く捜し出せ!いいな!?」

電話を切った。しかし、足取りがつかめないまま時間が過ぎていくだけだった。社長の遠藤は、東京公演の簡単な打ち合わせをするために、掛けてきただけだった。なのに、この事態になっている。行夫が、怒鳴られるのは無理もない。ここ何年もこの事務所からは、スターが出ていないため、彼女に大きな期待をしているのである。人気も上がり、他人への人当たりも良く周囲の評判もいい。彼女がコケれば、この事務所も終わるぐらい彼女が、この事務所を今は支えている。行夫は、何度も掛けるが電源が切られている。

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