85_ゼネラル・エレクトロニクス秘匿戦②
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久し振りの用語解説
・ニューラルネット
インターネットやGPSを含む通信のSF版。宇宙を行き交う艦船は冗長で通信を行う必要がある。通信しない場合は宇宙で迷子になっても誰も助けてくれない
オプシディアン・ハーベスターズからΑΩを受け取り、ガリアン星系を後にするラビットⅡ。二社の証人としてカリナナを預けられた俺たちパイロット組とハイデマリーは、ラビットⅡの作戦室で今後の動きについて確認していた。
「アレハンドロ男爵の話によると、オルフェオンに到達したG.E部隊はハイパーレーンを利用してオプシディアン・ハーベスターズの本拠地星系外縁部に到達、現在は少ない艦艇を更に分けて行動を開始したらしい。その裏付けとして、基地の反応が幾つか消失している。ここだ」
床に表示された星系図、そこに×印が幾つか付け足される。
外縁部から中心に向けて一直線に侵攻している姿が見てとれるが、進行速度が想定以上に速い。これは主力部隊がブラックメタルへ退避しているため抵抗らしい抵抗がないのも理由だろうが……
「この侵攻速度、目的は破壊だけだと思う。施設の占領を考えているなら、短時間でこれだけの侵攻ペースを維持出来るとは思えない」
「このままオプシディアン・ハーベスターズの中心部まで到達しても、そこはもぬけの殻なんだよね? 大丈夫かな、関係ない人たちも沢山いるんだろうけど……」
元々が軍に所属していたからか淡々と意見を述べるリタと、傭兵とはいえ感性が市民に近いエリーに頷き返す。
「推測でしかないが、主力部隊どころか守備隊すらいないこと、自動迎撃設備の稼働率が低いことが理由だろうな。
とは言っても、星系中心に向かえば一般市民も増えていく。流石のG.Eも無関係な市民に銃口を向けるような真似は出来ないだろうし、ここから先の侵攻速度は落ちると思うぞ」
無関係な人間を虐殺すれば帝国軍も黙っていられなくなる、エリーの心配するようなことは万が一にも起きないだろう。G.Eとしても帝国との真っ向勝負は避けたいはずだ。
「だと良いけど。マリー、一番近くて一番早くバレンシアと繋がるスターゲートはどこ?」
「ガリアン星系から離れた位置の貴族領、丁度この辺りやな。ガリアン発のハイパーレーンで5星系先、オプシディアン・ハーベスターズ本拠地から見て4星系先の貴族領、ブラントン星系や。
えーと待ってな、ニューラルネットから情報探しとるさかい……あったあった。貴族連所属のブラントン伯爵が治める星系で、帝国からスターゲートを預けられたオルフェオン銀河系の要衝の一つ。
ほー、流石は伯爵領。オルフェオンでも有数の経済圏を築いとるみたいやな。マークしとくで」
ブラントン星系のスターゲートがピンでとめられ、星域図に更にマークが入る。
「G.Eはオルフェオン星系に繋がるスターゲート以外、このブラントン星系からも来ていると判断すべきだろうな。当然、このブラントン星系のスターゲート周辺にもG.Eの網が敷かれていると考えるべきだ。
ハイデマリー、安全な航路はないのか?」
「安全に行くとしたら、ウチらがやって来たオルフェオンのスターゲートとかやな。到着まで結構日数必要やけど、オルフェオン銀河の首都でドンパチやるアホはおらんやろ。
けどここから近いとなると、やっぱりブラントン星系になるな。この辺り一帯の物流を賄うってなると、どうしてもスターゲートは大き目の貴族領に置きたくなるんやろ」
「うげ~最悪じゃん。じゃあ敵中に突っ込むかもしれないってこと? そんなのいちいち相手にしてらんないよ、他に選択肢あるならそっちにしない?」
「ウチかて本当ならそうしたい所なんやけど……」
カリナナへと視線を向けるハイデマリー。
「オプシディアン・ハーベスターズの抵抗が少ないことはG.Eも気付いているはずなのです。なら、次に目が向けられるのはブラックメタル鉱業連合になるです。そうなるとG.E艦隊がやって来て、オプシディアン・ハーベスターズの駐留艦隊共々撃破されてしまうのです」
「要は時間がないっちゅーこっちゃ。
ぶっちゃけΑΩ受け取った今、何も知らんふりしてオルフェオン星系に向かうのも手やけど「絶対に許さないのです」ってことで、カリナナを預けられたってわけ」
フンス、と息を吐いているカリナナ。ここで自分が制圧されることを考えていない辺りが甘いと言うか、送り出したブラックメタルの信頼の表れなのか判断に悩むところだ。
「てなわけでりーさん、こんな時どうしたらええ?」
「え、私?」
「オキたんがな、こういう特殊部隊の作戦についてはりーさんが一番詳しいやろって」
「ふぅん? オキタ、私を認めてくれてるんだ」
「当たり前だろ。実際、俺は人間相手は専門外だ」
面白い、とでも言いたげなリタ。目は笑っていないのに口元をニヤリと変形させる不気味さといえば、綺麗な顔立ちなのに近づきたくなくなる程だ。
リタからすれば嫌な思い出かもしれないが、対人戦経験において、共和国特殊部隊にいたリタの右に出る奴がラビットにいない。ゴリゴリの特殊部隊だったリタの知見は、俺たちにとって貴重な情報源だ。
「ボクはボクは~?」
「お前は論外」
「ひっど!? オッキーだって同じようなもんじゃん!」
「俺は元中隊長だぞ? 最低限の指揮は出来るんだよ」
お前は部隊の指揮も出来ない、飛んで行って斬るか撃つしか出来ないだろ。俺と比べても、たぶんお前の方が脳筋だと思う。
「リタ、頼んだ。今回はお前が頼りだ」
「……まず、ハイパーレーンでブラントン星系の中枢近くまで行く。ここからだと2日もあれば着くけど、その間はオプシディアン・ハーベスターズが完全制圧されないことを願うしかない」
カリナナは何か言いたげだが、リタが一睨みしたら口を噤んだ。はやる気持ちが焦りを生んでいるのだろうが、物理的な距離だけはどうにもならない。
「問題はその後。私が向こうの立場なら何重にも網を張る。
方法は幾つか。単純な物だと物量にモノを言わせて艦船を配置したり、索敵を得意とする電子戦機を配置したりする。別に電子戦機じゃなくても、傭兵を雇って配置するだけでも数は揃えられる。
後は宇宙に散りばめられているニューラルネット通信衛星をハッキングして通信記録から位置を特定する方法もあるけど、これは管理する帝国にバレた時のリスクが高い」
「じゃあ索敵専門の傭兵を雇ってるのかな? オルフェオンに渡って来た艦艇の数はまだ少ないだろうし、頭数を揃えるならそれが一番手っ取り早いと思うんだけど」
「その線は薄いと思う。前提として、今回の一件はG.Eのブラックオプス。傭兵を雇うことは外部に作戦を知られることにも繋がるから、この方法は除外していい」
「じゃあ帝国お得意の人海戦術か? 時間が経てばG.Eの艦艇数も増えていくだろうし、網を張ることも出来るようになるだろ」
「その線も薄い。G.Eの目的はオプシディアン・ハーベスターズ及びその関係者の抹殺。であるなら、数が揃わない初期行動において、その殆どはオプシディアン・ハーベスターズの攻略に向けられる。
目的がはっきりしているぶん、戦力は第一目標に集中することが常套手段。目標以外に人海戦術を取るだけの余裕は、現時点では無いと私は考えてる」
なるほど、それもそうか。戦力の逐次投入は褒められた方法じゃないが、擬装艦を投入するにも時間は掛かる。向こうは迅速かつ最短で目的を達成したいだろうが、逆に言えば目的を達成するまで戦力を投入し続ければいい。
つまり、時間経過は俺たちにとって不利にしかなり得ないのか。
「……ねえ、もしかして本当に分からない?」
怪訝な目で見てくるリタ。凄い残念そうな表情を浮かべているが、他の方法が浮かんでこない。俺たちは互いに視線で何か思い付くか確認し合うが、エリーもハイデマリーも首を横に振っている。
そんな中、カリナナだけがおずおずと手を挙げた。
「えっと、間違ってたらごめんなさいなのですが……」
「大丈夫。意見が出るだけそこの3人よりはマシ」
ひでーな。
「えっと、索敵ドローンを散布して敵の位置を探るのです。ドローンとの通信はニューラルネットの通信衛星を使えば届くので、私達を見つけ次第指定宙域までワープすれば、直ぐにでも戦闘が始められるのです……あってますか?」
は? ドローンだって?
AI任せのあんな役立たずな物を使ってどうするって―――
「うん、大丈夫。あってるから」
「……マジで?」
「大マジ。と言うか、やっぱりオキタの頭は対人じゃなくて、対ヴォイドに思考を占領されてるんだね」
驚く俺にリタは溜息を吐いているが、役立たずの代名詞ことドローンだぞ?
確かに人が操縦するより動きが良いものは多いし、思考能力も合理の塊みたいなものだ。でも制御権を乗っ取られたりした場合のリスクは高いし、俺はあまり信用していない。
「どうせドローンは寄生されるから無意味だって判断したんだろうけど、今回私達が相手をするのはヴォイドじゃない。寄生能力を持たない対人相手なら十二分に有効な手段」
言われて気付く。あれだけ対人だって前振りをしていたにもかかわらず、俺の思考はヴォイドを念頭に考えていた。
「ああ……ったく、そろそろ職業病も抜けて来たと思ったんだがな。どうも対ヴォイド戦が頭に来るんだよ」
「オッキーはある意味仕方ないんじゃない? 3年間ほぼ無休で戦い続けてたんだし」
「さん、3年間ほぼ無休!? どんなブラックな環境にいたのですか!?」
分かりやすく狼狽えているカリナナ。やっぱそういう反応になるよな。あの環境、辺境とはいえ今思うとどう考えてもおかしいよな。
「でもリタ、ハッキングで乗っ取られるリスクは残っているんじゃないのか?」
ドローン否定派って訳じゃない。この世界ならトンデモ技術のドローンだって多いんだろうが、どうしてもアナログな手段に安心感を求めてしまう。
「量子電脳をハッキングするのはそう簡単に出来ることじゃない。むしろ、共和国軍だとドローンによる作戦が推奨されてる。
今まで有人が当たり前だった戦術はもう廃れ始めている。戦場で一番コストパフォーマンスが高いのは帝国の有人兵器に頼った物量戦より、人的資源の少ない共和国が提唱する無人兵器による物量戦に移りつつある」
「けどさ、ドローンってそんな凄い物なの? 帝国がAI技術を封印したから、その手の技術って伸びてない認識なんだけど」
俺もそこが気になっている。そもそも帝国はAIに頼らない手法を好んでいるし、技術開発の殆どをAIが担っていたからか、今の技術開発は停滞しているとクレアも言っていた。
「いや、りーさんの言うことには一理あるで」
そうやって疑問に思っていた所で、考え込むように顎に指を添えたハイデマリーが呟いた。
「結構前にシズと一緒に帝国のセントラルネットワークに潜ったんやけど、その手の技術は表に出んだけで研究自体は進められとるみたいやった。
その中に興味深い単語が幾つかあってな。量子共鳴意識体とか虚数通信傍受システムとか、想像は付くけど全貌が見えん奴ばっかやったからよー覚えとるわ」
「マリー、それは共和国スパイが持ち帰った一部の人間しか知らない先端技術。流石、シズみたいな完全なアンドロイドを作るだけのことはある。電子戦もお手の物だね」
「いやいや褒めてる場合か。ハイデマリー、お前よく今も生きていられるな。見てみろ、カリナナなんて耳塞いで目まで瞑ったぞ」
どう考えても知ってはいけない情報のオンパレードだ。クラウン司令にハッキングがバレたから最近はやってないと信じているが、この雇い主は暇を見つけたらどこからか情報ぶっこ抜いてるんじゃないかと疑うくらいには信用がない。
「せっかくだしカリナナも聞いときなよ。ここじゃないと聞けない話ばっかだよ?」
「止めるのです、そんな危険な情報なんていらないのです! ああっ! 耳から手をどけないで欲しいのです! 私はまだ死にたくないのです!」
止めて差し上げろ、カリナナの奴そろそろガチ泣きするぞ。
「じゃありーさん。G.Eが索敵ドローン……いや、艦載機戦力にも無人兵器を使って来るとして、どんな技術が使われとる奴やと思う?」
「想定する技術レベルは?」
「現時点での最高レベルで」
「分かった」
ハイデマリーの注文に少し考え込むリタ。
「量子電脳は間違いない。これは複雑な環境での即時判断や人間の感情模倣を可能にするために必要不可欠。人の代わりを務めさせるのなら必須」
「つまりシズと同じっちゅーことか。厄介やな。他には?」
「分散意識ネットワーク。個体が得た情報をニューラルネットを通してリアルタイムで共有、個を群へと変える技術だね。戦術的なフォーメーションの構築、自己修復的な戦略変更、全体知能による学習加速は、投入される数によっては恐ろしいものになる」
「ちょ、それって人超えてるじゃん」
「元々は人の代わりを目指して作られた物だから。けどそれを満足してしまったら、人は”次”を求める。だから私みたいに人間の限界を超えた存在が求められ造られた。それと同じことだよ」
心なしか冷たく言うリタ。普段気にしていないように振舞うのも、本当は俺たちに気を遣わせないように心配りをしてくれているのかもしれない。
初めて肌を重ねた時もリタは気にしていたが、やはり拭えない何かを抱えているのだろう。それを感じさせないのが俺の役割だが、情けないことにまだ完全に払拭させてやれてない。悔しいな……。
雰囲気が少し暗くなった、笑い話の一つにでも変えてやらないと話が進まないな。
「そんな風に自分を言うなよ、リタはリタだ。と言うか、お前が人間じゃなかったらデスペラードのGに人体改造無しで耐える俺は何だって話だろ」
「っ! オッキーはね、オッキーでしょ! 慣性制御突き抜けてくるのもお構いなしにサイドブースター吹かしてビュンビュン飛び回るなんてオッキーくらいしか出来ないよ! カリナナもそう思うよね?」
「え? あ、はいなのです。何であんな動き出来るのか意味が分からないのです。あんな動きしたらコックピットの中がミートパイになっても可笑しくないのです」
「……ふふ、そうだね。オキタって、実は生身で宇宙空間に出ても死ななかったりするんじゃない?」
「流石は単機で”無”を作る男やで。歩く超兵器って感じやな!」
「……お前ら、少しは手加減しろよ」
狙ってこんな雰囲気にしたのは俺だけどさ。ちょっとはあるだろ。
「話を元に戻すね。
これは私がまだ共和国に居た頃にも開発途中だったから、もしかしたら程度の話だと思って聞いて欲しい。帝国でも似たような技術開発を進めていると仮定したらの話だけど」
「勿体ぶるね。もう何が出ても驚かないよ?」
「うん、ありがとうエリー。
その技術はクロノ理論を応用した予知アルゴリズム、簡単に言うと未来予測の技術のこと」
「未来予測て、りーさんと同じ……?」
「そうだよマリー。私が感覚でやっていることを汎用技術に落とし込むことを目的に研究が進められていた。
概要だけ説明するけど、量子の揺らぎと時空データを解析、数秒先の未来を予測することによって敵の攻撃を事前に回避したり、数分後の未来予測から戦術の先読みまでも可能にする技術のことだよ」
リタの肌に白い紋様が浮かび、琥珀色の目が真紅に染まる。初めて全身をB.M.Iで強化した人を見たのか、その姿を見たカリナナは唾を飲み込んでいる。
俺はもう見慣れたものだが、やはりこの状態のリタを見ると圧倒されるものを感じる。今のリタを前にするとエリーでさえ耳が張っているのだから、それこそ量子力学的に何かを発しているのだろうか。
しかし、そうやって限界まで身体を強化したリタだからこそ出来る未来予知を、誰にでも使えるようにするって? 人ってのは行きつく所まで行かないと満足しないのだろうか。
いや、今はそんなことを考えている暇はない。そんな技術が戦場に持ち込まれた場合を想定しないと。
「それが実現していたら、相当不味いことになるぞ。戦術レベルで常に先手を取られ続けると、戦場が完全に支配されても可笑しくない」
「私もそれについては同感だし、あの技術はそもそもそれが目的だった。
でも研究の要だった私は共和国から離れた。私が帝国に送り込まれた時にはある程度の見通しが経っていたのか、それとも現時点での実現は不可能と判断されてたのかは分からない。だから”もしかしたら”程度に考えておいて」
神妙な面持ちで全員が頷く。そんな技術を搭載した機体やドローンが出てくる場合、カリナナに相手をさせるのは酷だろう。カリナナにはラビットⅡの直掩に回って貰い、俺たちが前に出るしかないな。
「じゃありーさん、次に敵の布陣についてや。ハイパーレーンを抜けてからブラントン星系までの宙域で、どの辺りに網を張られとると思う?」
床に表示されている星系図、ブラントン星系を突っ切るハイパーレーンが拡大表示される。
ハイパーレーンは星系外縁から中心部へと延びているが、その途中で弧を描くように次の星系へと道が逸れている。
ブラントン星系の主星を掠めない理由が分からないが、スターゲートがあるから不要と判断されたのだろうか? 使用料が馬鹿にならないから貴族か大企業しか使えないだろうに、面倒な配置だ。
「まず間違いなく、ハイパーレーンを降りたここ。主星に近いこの場所には配置されているはず」
「じゃあもう少し手前、主星まで数度のワープで到達出来る距離で降りるんはどうや?」
「ワープ距離がENG出力に左右される以上、相手にしてみても読み易い手。あまりお勧めは出来ない」
「けどハイパーレーンを降りるタイミングはボクたちで調整できるんだし、向こうからすればこの広い宇宙で一隻の船を見つけるのは難しいと思うんだけど」
「一見するとそう思えるけど、ゴール地点が決まってる以上はその限りじゃない。
ハイパーレーン離脱後の駆逐艦、巡洋艦、戦艦クラスのENGで、主星までの必要ワープ回数を星系図に重ねるとこうなる」
リタが端末を弄ると、ハイパーレーンを降りてからのワープ可能距離と主星までの必要回数が表示された。どこで何の艦艇が降りた場合、どの程度の回数と距離を必要とするか詳細に描かれたそれは、ラビットⅡがどう動くかも念頭に置かれていた。
「これに合わせて索敵レンジが最大のドローンを配置すると、こうなる」
「これは……無理なのです、どう足掻いても索敵に引っかかってしまうのです!」
カリナナの言う通り、どう動こうにも敵に発見される。もっとも、全域をカバーしようとすると膨大な数のドローンが必要になるだろう。けど理論上は配置することが出来る以上、交戦は避けられないと見るべきか。
「G.E製の索敵タイプは全長5メートルにも満たないから、巡洋艦の搭載スペースなら必要数を揃えることは容易い。捕捉される可能性は極めて高いと思う」
「成程なぁ……一戦やるしかない、いや、むしろ一戦で済ませる方法を考えた方がええってことやね?」
「流石マリー、話が早い。私達の強みはまさにそれで、戦場は私達が選ぶことができる。
だからこそハイパーレーンが弧を描いている先で降りて、そこでG.Eと戦うことを提案したい。戦線を突破した後に主星までワープ、スターゲートの管理宙域まで飛べば帝国軍の管理下に入れる」
星図に想定戦闘宙域が表示される。ハイパーレーンを抜けた先で索敵ドローンに捕まり、そこでワープアウトしてきた敵と一戦やる。可及的速やかに敵を撃破した後はワープでスターゲート宙域まで飛ぶ、か。
「良いんじゃないか? 俺はリタの案に賛成だ」
「うん、ボクも賛成だよ」
「よっしゃ、ならそれで行こか。
シズ、ラビットⅡ発進や。進路ブラントン星系、ハイパーレーン主星に近い領域。戦闘開始予定は2日後や」
『承りました、ミス・ハイデマリー。進路ブラントン星系』
ハイデマリーの呼びかけに艦橋で舵を握っているシズが応えると、ラビットⅡが加速を始めた。
「パイロット組はこれから1日は完全休暇、英気を養っといてな。後で嫌ってほど働いてもらうことになるで」
「「「「了解」」」」
「オッキー、仮にリタの読みが全部外れてたらどうするの?」
「そりゃ運がないって切り替えるしかないな」
「敵が雁首揃えて待ち構えてたら?」
「その時は、向こうに運が無いってだけだ」
「なんで?」
「何でも何も。お前も俺も、追い込まれてから暴れる方が好きだろ?」
「言えてる」




