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宇宙の傭兵SF冒険譚  作者: 戦慄の大根おろし
着任、ラビット商会
5/82

05_アンドー整備班と支援AIシズ_挿絵有

04話にエリーの挿絵を追加しました

仕入れに出ている整備班の双子をシズに変更しました


240120 アンドーの挿絵追加

241006 段落修正


「すごい双子だったな……」


「濃いよねーあの二人、悪い人達じゃないんだけどさ。

 所かまわずあんな雰囲気でイチャイチャしてるから目のやり場に困っちゃうんだ」


「所かまわずか」


「ところかまわずダヨ」


 あの二人はレーダー要員と通信要員なんだろ?

 ならこの船で一番関わることになるんじゃなかろうか。

 優秀らしいのが唯一の救いか? 出会い頭と尻には注意しておこう。


「じゃあ次は外部コンテナことボクらの機体格納庫を案内するよ!

 たぶんアンドーはいると思うから挨拶しとこうね」


「アンドー?」


「アンドーは整備班の班長なんだ。

 とはいっても、アンドーしかいない整備班なんだけどね。

 後はアンドロイドが2人……2体? まあ、行けば分かるよ」


 エリーの機体に俺のを合わせて2機だろ?

 そんな人数で手が回るか不安なんだが、言われた通り行けば分かる話だろう。

 艦橋の扉が目の前に見えたところでその場の地面を蹴り、低重力に逆らいながら上部方向へ向かう。

 少し狭くなった艦との接合部を通り抜けたあたりから嗅ぎなれた鉄とオイルの臭いがしてきた。


「おーい、アンドー!」


「……あん? エリーか、どうした?

 お前さんの『セイバーリング』なら整備は済んどるぞ」


「あ、うん。ありがと。じゃなくて、新人連れてきたよ!」


「オキタだ。ハイデマリーと契約して、今日からラビットで働くことになった。よろしく」


「ああ、ハイデマリーから連絡があった奴か。

 儂はアンドー、ラビットのメカニック担当だ。

 エリーの奴だけじゃ艦の守りにも不安があったし、お前さんには期待しとる。

 よろしく頼むぞ」

挿絵(By みてみん)


 ヒト族の中年男性、アンドーと握手を交わす。

 整備班だけあって手をよく使っているのだろう、掌に硬い感触が伝わってくる。

 そう思っていることを感じ取られたのか、軽く肩を竦めながら苦笑を見せた。


「ねえアンドー、ボク一人でも守ってこれてたんだけど。

 ジッセキがあるよ、ジッセキが」


「船のことを考えたらお前さんたち二人でもまだ足りん。

 せめてもう一人くらい居てくれれば儂も安心できるんだが……」


「前の雇われは星屑になっちゃったからねぇ」


「星屑ってお前……この船は輸送艦だろ?

 そんな危険な場所を通るのか?」


 ハイデマリーに聞きそびれていたことを思い出す。

 この船が訪れるコロニー、通る航路、積み荷、顧客などなど。

 契約時は予想外に高くなったクレジットの事で頭がいっぱいで基本的なことを全く聞けていなかった。


「契約前にハイデマリーから聞いておらんのか?」


「きっとクレジットしか見てなくて、それに釣られちゃったんだよ。

 オキタはTSFに乗る時以外は基本アホだし」


「おい平たい胸族、喧嘩売ってるつもりなら言い値で買うぞ」


「残念、売り切れてまーす」


 ニヤニヤと馬鹿にしたように笑うエリーにムカつくが、言われている通りなだけに情けなくもなる。

 仕方がないだろう、軍に居た頃よりもかなり稼げる額を提示されたら誰だってそうなる。


「儂らの口から言うのも何だ、詳しいことはハイデマリーに聞いてくれ」


「真っ当なだけじゃボクたちを養うクレジットは手に入らないってことだよ。

 まっ、ボクたちならヘイキさ! 何たって天才だからね!」


 確かに何が相手だろうと負けるつもりはないな。

 伊達に帝国軍で3年間戦い続けた訳じゃないし、対ヴォイドの前線を張っていた自負もある。

 エリーは……本人が言う通り平気だろう。

 こいつが凄腕なのは俺も良く知っているから心配していない。


「ああそうだ、お前さんの『アウトランダー』の搬入もさっき済ませたぞ。

 新品と聞いていたが旧式の機体だ、保管状況が悪けりゃ埃を被っていてもおかしくないと思っておったが、問題なさそうだったんでシステムチェックだけ通しておいた。

 いつでも出れる状態だが、細かい調整が必要な場合は言ってくれ」


「ありがたい。でも、よく一人でこんなに早く整備できるな。

 他にも数人ほどいるって聞いたが、何かの仕入れに出てるんだろ?」


 アンドロイドが二人いると聞いているが、何かの仕入れに出ているとエリーが言っていたから。


「ああ、シズのことか。

 どう説明したもんか……ひとまず、アイツならそこらの端末にいるぞ」


「そうそう、どーせ今もボクたちのこと見てるでしょ。

 ねーシズ、聞いてるんでしょ?」


『勿論ですミス・エリー。ここから先は私が説明しましょう』


 格納庫に音声が響くと、格納庫の奥から両脇に車輪のついた球体が転がって来て足元で止まった。

 一般家庭から軍でも採用されているAI端末だ。

 車輪から分離した球体が色々な機械にドッキングし、その機械を丸々動かすこともできる傑作機として広く知られている。


『ボディが仕入れ業務から帰還しておらず、このような形での挨拶となり申し訳ありません。

 そして初めまして、ミスター・オキタ。

 私はミス・ハイデマリーに仕えている支援AIのシズです』


「ああ、よろしく。何というか……人間味に溢れた声だな?

 俺の知っているAIはもっと機械的な音声を好むはずなんだが……」


 チカチカと光るシズの端末だが、何のソフトを入れているのか人間が話していると聞き間違えるほど流暢な音声だ。

 有機物の義体を持つアンドロイドならまだしも、一端末に過ぎない機械上でやるには困難だろうしやる必要もないのに。


『支援AIと言ってもその性能差は所謂ピンキリです。

 私はミス・ハイデマリーに仕えるため、一般に知られるそれとは一線を画していると自負しています。

 艦内システムの全てにアクセス権を持っている私が本艦の最終兵器と言っても差し支えありません』


「……なあ、此奴本当にAIか? ちょっと情緒に溢れている気がしないか?」


「さぁね、ボクにも分からないよ。

 知ってる限り、AIはドヤ顔が連想できるような話し方をする存在じゃないはずだけどね」


 エルフの双子といい、まともなのはアンドーしかいないのか?

 そう思うと妙な親近感が沸いてくるな。このオッサンとは仲良くできそうな気がする。


「アンドーを見つめて何考えてる知らないけど、例に漏れず変人だからね。

 何てったって、シズの義体は完ッ全にアンドーの性癖から生まれたんだからね。

 しかも整備とか言って義体に触りまくってるし……ド変態だよ! ド変態!! 女の敵だよ! シッシッ!」


「誰が変態だ!

 ロリだと小さい所に手が入る!

 お姉さんなら高い所まで手が届く!

 合理的で理想的な義体だろうが!

 それに、アンドロイドはそういう用途が主で生まれた経緯もあってだなぁ……」


「だったらもうちょっとまともなのにしたらいいじゃん!

 ロリ巨乳とか爆乳お姉さんとか作るなバカァ!!」


 汚らわし!っと顔を歪めているエリーに完全同意だ。

 マジかよ、まとも枠かと思いきや変態じゃねぇかこのオッサン!

 ……少し気になるので、シズには帰ってきた後でまた挨拶しておこう。


『ミスター・アンドーの趣向に間違いはありません。

 行く先々で周囲の視線は私の義体に釘付けですので』


「だからアンドー以外はシズと出歩きたがらないんだよ……」


「ああ、アンドロイドだけで仕入れに出ているって言ってたのはそれが理由か」


 一緒に出歩きたくない理由が分かる。

 誰も他人の性癖の塊を隣に町歩きしたくないよな。


「……ん? なあシズ、お前ひとりで2つの義体を操っているのか?」


『肯定です、ミスター・オキタ。

 艦内の整備点検は勿論おはようからお休みまで、果てには艦の操舵や義体を使った精神ケアまで、私の機能は余すことなくラビット・クルーのためにあります。

 先ほど申し上げた通り、艦内システムは全て私が司っておりますので』


「それは、すべて同時に行えることなのか? 複数の義体を操りながら?」


『問題ありません。スペックの範囲内です』


 そんなAI聞いたことがない。いや、AIで収まる範疇の存在なのか?

 エリーやアンドーは当然のようにしているから、シズは問題なくこなせるんだろうが……ただのAIとはとても思えない。


『私のことなど些細な問題に過ぎません。

 それよりも、ミスター・オキタとミス・エリーに連絡事項です』


「ん? 何かあったの?」


『コロニー駐屯軍より傭兵ギルドを通して募集の通達が出ました。

 どうやら、この星系を根城にしている宙賊を叩くようですよ』


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― 新着の感想 ―
[良い点] 正直オキタに専用機作って与えるのが商会としても一番安全よね。 戦闘機の出番はいつまでだろうか?
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