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宇宙の傭兵SF冒険譚  作者: 戦慄の大根おろし
XTSF開発計画
29/91

27_帝都バレンシア星系


「見ろよ、スターゲートだ。話には聞いていたけど半端なくデカいな……ブルーローズですら余裕で収まる物が、帝国の主要星系には一基ずつ置いてあるんだろ? 何かもう、規模がデカすぎて意味わからなくなるよな」


 ブルーローズ艦内のゲストルーム、その一室のモニターにスターゲートの姿が映っている。超望遠で捉えていた時には対して大きくないと勘違いしていたが、実際に近づくとその全貌を見る事すらできなくなっていた。


「オッキーはスターゲート使うの初めてだっけ?」


 アンドーと双子が諫めてくれたお陰か、エリーは普段通りのエリーに戻っていた。3人は相手をするのが疲れたと言っていたが、終始ニヤニヤしながら”ご機嫌取りをよろしく”と俺の肩を叩いてこのゲストルームに押し込んでいった。お陰でここには俺とエリーしかいない。いったい俺にどうしろと。


「そりゃそうさ。非番でも基地から出ることは無かったし、基地以外に行くのも任務で近くのコロニーに立ち寄るくらいしかなかったからな……あれ、もしかして俺って田舎者になるのか?」


「そんなことないんじゃない? 居住惑星やコロニーは宇宙に数えきれないほど有るけど、殆どの人は生まれたコロニーで一生を過ごすんじゃないかな。宇宙を探検するには人間の寿命じゃ短すぎるんだよ。それこそ、ボクみたいなエルフやハイデマリーのようなハーフリングじゃないと、態々全部を捨てて外に出て行こうなんて思わないんじゃないかな」


「そんなもんか? フロンティアスピリッツを持った奴も多いと思うけど」


「スピリットがあってもクレジットが無いんだろうね。ラビットみたいな250m級の輸送艦でも3桁億は建造費が掛かるし、そこからハイパーレーンの使用料とか護衛の傭兵契約とか諸々考えたら、一般人には到底出せない額だよ」


「億かぁ……自前の船を持ってて宙賊狩りを専門にすりゃ稼げないこともないか?」


「それは腕が立つから言える事でしょ! オッキーやボクからしたら、そこらの宙賊なんてクレジットが浮いてる程度にしか見えないからね」


「それも自前の船があればって話だからなぁ。運用とか諸々面倒だし、艦長席で座ってるよりTSFに乗ってた方が気が楽だから、今まで通りハイデマリーの下で働ければそれでいいかな」


「それマリーが聞いたら喜ぶよ、絶対」


 実際、ハイデマリーとの雇用契約は満足している。戦闘面では好きにやらせてくれるし、給料も今の階級からしたら破格の額だ。それでいてケツ持ちまでちゃんとしてくれる理想的な雇い主だと思っている。それでも、もうちょっと色気のあるお姉さんボディの持ち主が良かったと嘆いているのは俺とアンドーだけの秘密だ。


「あとさ、ごめんねオッキー」


「ん? 何がだ?」


「リターナ中尉の件だよ。ちょっとボク、大人げなかったかなって……」


「あー、別にいいよ。俺だってお前の立場なら勿体ねーくらい言いそうだしな」


「けどさ……」


「だからいいって。てかお前、大人げないって何だよ。……ん? そういえば、お前って何歳なの?」


「あれ? 言ってなかったっけ? この間成人したよ、エルフ基準だけど。人間で言う所の17歳ってとこかな」


「成人んんん!? え、お前が!?」


 そのチンチクリンでか!? と言葉に出さなかった自分を褒めてやりたい。

 まじまじと頭の天辺から足のつま先まで目を走らせるが、どこをどう見ても成人してるようには見えない。噓だろ……これが大人ボディだとしたら、あまりにも救いが無さすぎる…!


「言葉にしなくても分かるんだよ、このドスケベ!」


「おっふ!?」


 腰の入ったボディブローが腹部にめり込む。軽い身体しやがってるのに撃ち込まれる拳は超痛い。武闘派なの忘れてたぜ……。


「エルフは2回成長期があるの! あと数十年もしたらお望み通りボンキュッボンになってるんだから!」


「じゃあそのペッタンコが育つ頃にはっ、俺はおじいちゃんだな。頼むから老人に拳を振るうような二次性徴は遂げないでオッフ!?」


「しつっこぉい!」


 前略、男三人衆。ご機嫌取りとはこういうものでよろしかったでしょうか。





   ☆




 スターゲートを通り、一路帝都バレンシア星系へ。スターゲートと言うくらいだから、通る時にSFチックな特殊演出でもあるのかと思っていたが何もなく、ピカッと光った次の瞬間には何光年離れているか分からない星系へとワープが完了していた。

 だが、本当に驚くべきなのはワープが完了した後だった。艦隊がワープした直後、モニターに映るのは無数のコロニー群と、光学映像で映し出されていくバレンシア星系に属する惑星の数々だった。


「ここがバレンシア星系……すげぇ」


「コロニーは数千万単位で人が住めるギガント級が10機と、それを囲うように小型コロニー……て言っても、他所の星系だと十分大きいんだけどね、数えるのが面倒になる程あるよ。

 あと、星系にある惑星は全てがテラフォーミングで居住可能な惑星に整地済み。その全部がバレンシア星系専用のハイパーレーンで繋がった、文字通りこの星系そのものが帝国の中枢になってる」


 星系全体が帝都扱い。あまりの規模に凄い以外の感想が出てこない。宇宙に暮らす人もいて、惑星上に暮らす人もいる。もし地球が残っていたら、こんな形で発展しているのだろうか。


『これより艦隊はコロニー"エスペランサ"へ帰港する。各員は接舷に備えよ』


「うん? 帝都本星にはいかないのか?」


 流石に60㎞級の超弩級戦艦になると地上への降下はしないのだろうか。無重力空間の方がメンテとかもやりやすそうだから、態々重力下に降りる必要もないのかもしれない。


「あ~、オッキーは知らなくて当然か。帝都本星には貴族連、中央評議会とその関係者しか降りられないんだよ。後は皇帝陛下を守っている帝国近衛軍と、艦隊司令官クラスの軍人くらいじゃないかな。最低でも中将クラスじゃないと話にならないんじゃない?」


「やべー場所だな。貴族と政治家に高級軍人しかいないとか、ただの魔窟じゃねぇか。近寄りたくない」


「だよね? 降りて良いって言われても、絶対降りたくないよね」


 御免被る。そんな所に降りたら何に巻き込まれるか堪ったものじゃない。


「ところで、帝都本星ってどれなんだ?」


「エスペランサのすぐ近くだよ。ほら、これが惑星バレンシア。見渡す限り緑と青、何もない退屈そうな場所だよね」


 エリーがモニターを弄って見せてくれた惑星には、緑で溢れる自然豊かな青い惑星。もちろん地球とは違うが、緑と青のコントラストが地球そっくりだ。関係者しか降りられないということで、開発されている場所も極僅かなのだろう。


「でもまぁ、自然豊かなのは良いんじゃないか? コロニーで暮らしていると緑が恋しくなることがあるし」


「今時自然豊かな惑星なんて、開発されてない僻地かリゾート目的でテラフォーミングされた所くらいだよ。バレンシア星系の惑星も全部貴族の別荘地扱いだし、ボクらみたいな一般人はコロニーに住んでるの。何処まで行っても庶民は庶民、ヤになっちゃうね」


「下で働く人間がいてこそ支配層も面子が立つと思うけどなぁ。いつの時代もルールを作る方が強いってのは変わらないのな。

 その点、俺たち傭兵は自由に暮らせる分恵まれてるのかねぇ? 腕が良ければ稼ぎに困ることは無いし、何より腕っぷしの強さってのは誰から見ても分かりやすくていい」


「ま、持つ者持たざる者の関係は宇宙創成期から変わらないってね。

 あ、オッキーこれ見てよ。一般人からしたら、こっちのコロニーの方が帝都扱いなんじゃないかな。大企業や傭兵ギルド、商人ギルドの本部も此処に入っていて、手に入らない物が無いって言われているコロニーだよ。ほら、これがそのセントレアコロニー群。どうせ立ち寄るだろうし、後で買い物にでも行こ? 報酬替わりでオッキーの奢りね!」


「へいへい、分かってますよお嬢様」


 光学映像で映し出された大規模コロニー群。ギガント級コロニーを中心に、周囲を幾つかのコロニーが囲うように配置されている。このコロニー群だけで一つの惑星くらいの規模はあるのだろうか? 手に入らない物が無いって言うくらいだからそれ以上か。都会にくるのも久しぶりだ、俺も少し楽しみになって来た。


『ブルーローズ、エスペランサとのタッチダウンまで3,2,1……完了。各員、ご苦労だった。以降は通達あるまで待機とする』


『ラビットクルーに通達、これよりラビットの搬出作業を開始する。関係各位は第8格納庫に集結せよ』


「行こっか。リターナ中尉も迎えないとでしょ」


「そうだな。さ~て、あの無表情がどんな面を見せてくれるか楽しみだぜ」


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― 新着の感想 ―
[一言] オキタの機体もそうだが、ラビットの耳も補充?しないといけないでお金足りるかな・・・
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