22_オークリー天地返し作戦完了_挿絵有
240901 挿絵追加<7th anime XL-Pony A>
241019 段落修正
「お遊びはここまでだな。第二艦隊相手が相手では流石に分が悪い」
ヴェルニスのコックピットの中で呟くノーヴェ。
頭上には帝国軍第二艦隊が展開し、母艦からは続々と第二艦隊の主力艦載機が発艦する様が見てとれる。
レーダーに映る艦影の数は分遣艦隊のそれではなく、艦隊集結の全力発揮だった。
『隊長! このエルフはどうするんです!?』
「なんだハーネス、まだ遊び足りないのか?」
『俺の機体の腕を奪ったのは奴です!
ここで墜としておかないと、後々面倒になる!』
灰色の装甲表面が青く輝くセイバーリング。
確かに後々面倒になりそうだと、ノーヴェも同じことを考える。だが時間切れなのも確かだった。
「ダメだな、これ以上は帰還できなくなる」
『隊長!』
「一人で第二艦隊とやり合うなら止めはしない。好きにしろ」
『おめおめと逃がすとでもっ……!』
「総員撤退だ、ヘックスと合流して共和国の領域まで"ジャンプ"しろ。
輸送艦も無視だ、時間が無い」
『……覚えたからな、エルフの傭兵』
セイバーリングに背を向け、撤退していく6機のヴェルニス。
そう言えば1機足りない―――気付いたノーヴェはIFFを確認するが反応はなかった。
死んだか、まあ仕方の無いことだ。目を掛けていた部下ではあったが、これもまた廻り合わせだと捨て置くことにした。
プロテクトゥールと合流する途中、中破した輸送艦とすれ違う。
戦況は把握していたつもりだが、派手にやったものだと口元から笑みが零れる。楽しませてくれる相手は最高だと。
「ヘックス、無様を晒したな。
ΑΩの最終ロットを手に入れられず、輸送艦も墜とせなかったとは」
『く、ノーヴェ……貴方が遊んでさえいなければ、こんな無様は……』
「おいおい、他力本願は止せ。舐めて掛かったお前の過失だろう」
『……撤退します。全隊、本艦に同期しなさい』
損壊したプロテクトゥールの周囲に集まるヴェルニスたち。
ワープでの撤退は逃がさんと帝国軍が迫るが、艦の中心から力場が発生。プロテクトゥールを中心に渦を巻くように重力が集まり始め―――
『ジャンプ』
初めから何もなかったかのように、共和国部隊はその姿をオークリーから消した。
☆
「生き残った……」
エリーが艦上に直接着艦したのを見届けたあと、ハイデマリーは気力の限界を感じ背もたれに寄り掛かった。
辛い戦いだった。
怖かったし、何度も死ぬかと思った。
途中諦めもしたが、仲間に鼓舞されて一矢報いることができた。
大健闘だった。輸送艦で戦艦相手に大立ち回り、ΑΩの回収を阻止することに成功した。
だが、大失敗だった。
オキタを失ったという実感が、危機が過ぎ去った今になってぶり返してきた。
また泣きそうになるのを上を向いて耐える。
アンドーは言った、戦うとはそういうことだと。
だから連中の鼻っ面をへし折ったことで、この気持ちは仕舞いなのだ。自分はラビットの艦長であり雇い主だ。
沈んだ気持ちのクルーを励ますために声を上げようとしたところで……
『あーあー、ーおーい、聞こえてないのか? これでもダメなのか?
おいリターナ中尉、お前の機体も全然ダメダメじゃん。
ラビット、ハイデマリー、エリー、アレン、エレン、アンドー、シズ、誰でもいいから助けてくれ~』
『せ、狭い……』
何故か、リターナ中尉と争うように通信を試みるアホの姿がモニターに映し出された。
「…………はぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ、、、良かったぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!」
歓声が上がる艦橋の中、ハイデマリーは蹲りながら両手で顔を抑えて叫んだ。
「ったく、おいそこのアホンダラ、何心配かけとんねん!」
『お、繋がった。いやー悪い。正直俺も死んだと思ったけど、爆発する前にワンチャンに賭けて生身でイジェクトした所を中尉に受け止められてな? それでこうなったってわけ』
『ん、流石にあれは焦った。
咄嗟に受け止めてコックピットに引きずり込むくらいにはテンパった』
「それはマジでアホちゃうか……?」
『なあハイデマリー。アウトランダー爆散したけど、これって保険出るか?』
「入ってへんやろ出るわけあるかい!
ったく、ホンマしょうがないやっちゃな。迎えにいくからじっとしとき!」
全員無事、作戦完了! ハイデマリーは満面の笑みを浮かべてそう宣言した。
「私は好きにした。君らも好きにしろ」
好きに書いたので、よければ好きに感想でも書いてやって下さい
次回で2章エピローグ→人物紹介+備忘録。




