13_SFエルフ道中_挿絵有
241019 段落修正
簡単用語
P.P:ピーツーと読んでください。科学で解析できていない超能力。サイキックパワーは何でもできる。エルフが扱うのが得意という設定
B.M.I:ブレイン・マシン・インターフェース。脳と機械を繋ぐSF世界の産物だと思っていたのに、最近現実でイーロン・マスクが臨床試験を開始して話題になっている。科学怖い
アウトロー宙域での初遭遇から1日が経った。
あれから宙賊に会うことはなくなり、俺は暇を持て余していた。
コンテナ待機は続けているが、機体整備を終えてしまえば映画を見るかゲームをするくらいしか暇つぶしの方法がない。
宙賊にいつ捕捉されるか分からない中での待機は神経がすり減るかもしれないと思っていたが、いつヴォイドに襲撃されるか分からない環境に長年居たせいか、案外何とも感じないんだなと拍子抜けしてしまった。
暇を持て余していても腹は減るので、エリーに連絡したところ交代で飯で食うことになった。
缶詰みたいな生活を送っていると、たかが飯の時間ですら楽しみに変わっていくのが分かる。
数時間ぶりに何が食べられるのか楽しみに思いながらラビットの食堂に来たところで、同じく休憩中だったアレンに出会った。
「よ、アレン。ブリッジ要員も交代で休憩か?」
「ええ。今はエレンが周囲を警戒していますので、休めるうちに休んでおこうかと。
オキタ氏も休憩ですか? 是非ご一緒させて下さい」
「ああ、早く座ろうぜ。腹が減って仕方がない」
対面するように食堂の椅子に腰掛けたところで、配膳ロボットが水を運んで来た。
レストランでよく見掛けるロボットだが、普通は宇宙船に置かれるものじゃない。
少しでも便利な環境にしたいと思うハイデマリーのこだわりなのだろうか。
因みに、最早お馴染みとなっているがシズの端末の一つでもある。
「昨日の襲撃が嘘みたいに暇になったよな」
「オキタ氏がアレだけ暴れたからでしょう。
恐らく、宙賊は私達の船を意図的に避けていますよ」
「人を食い物にすることが仕事な連中が、そんな殊勝な行動をとるもんかね」
「そんな人達だからこそ、勝てないと分かった相手には突っかからないものです。
誰だって命は惜しいでしょう?」
「それもそうか。
昨日程度の連中なら、纏めて掛かって来てくれた方が面倒臭くないんだけど」
昨日の宙賊は数ばかり集めた素人集団だった。
当たらないだろうと思って適当に撃った狙撃は当たるし、味方が堕ちると動揺が隠せていない浮ついた挙動を取るし。
元TSF乗りとして言わせてもらうと、VSFに追い立てられるTSFほど惨めなものは無いだろう。
せっかく人型ロボットに乗っている癖に、もっと巧く乗れよと……と言うか、乗れないなら寄越せよと色々文句が言いたくなる連中だった。
『お待たせしました。ペペロンチーノとコンソメスープです』
「おお……なんか、滅茶苦茶旨そうなのが出てきたな。
シズが作ったのか?」
『はい。高級料理店にも引けを取らないと自負しています』
「艦内の生活を守るのも自分の仕事だと言って、炊事洗濯と八面六臂の活躍ですね。
貴女がいないとラビットは回りませんよ」
「はいはい、多芸多芸。
もう驚かねえよ。これが脅威のAI技術ってね」
『お褒め頂きありがとうございます。では』
配膳ロボットはそのまま食堂の奥へ引き返していった。
……待て、配膳ロボットが飯を作れるのか?
色々とおかしいと思いアレンの顔を見ると、気まずそうな笑みが返ってきた。
「シズの事はあまり気にしても仕方ありませんよ。
ほら、冷めない内に食べてしまいましょう」
ペペロンチーノをフォークに絡めて口に運ぶと、唐辛子特有のピリッとした辛さが舌を刺激する。
鼻に抜けるような辛さではない、丁度良い味付けに嘗ての生活を思い出しそうになる。
口直しにスープを口に含めば、コンソメの香りが広がっていく。
中に入っている良く分からない肉っぽい塊も大変美味だ。う~ん、本当に旨い。
「因みにですが、献立は全てハイデマリー氏の希望で決まります。
時々聞いたこともない惑星の料理が出てきたりもするので、その時は自炊に切り替えるのが吉ですね」
「なるほどなぁ。アレンは自分で料理できるのか?」
「はい。仰って貰えれば作って差し上げますよ?
流石にシズには負けてしまいますが、それなりに美味しいはずですから」
「すごいな。皆、自分の仕事以外にも出来る事があるし……俺はそう言うのが無いから、ちょっと羨ましい。
ほら、料理が出来る男はモテるって言うじゃないか」
「おやおやおや? もしかして私、口説かれていますか?
仕方ありませんね……勿論お受けしますよ?」
「待て違う、そういう意味じゃない! 座れ、座れって、す わ れ!!」
「もう、イケずですねぇ」
アッぶねぇ! マジで背筋がゾワゾワってきた。
今思うとアレンと二人きりのこの空間が結構ヤバい気がしてきた。
「まあ良いでしょう。
間もなく採掘基地の座標に辿り着きますし、愛を深め合うのはその後でも構いません。
もう宙賊の襲撃も無いと見ていいでしょうし、ハイデマリー氏の読みが当たりましたね」
「どうかな……俺は妙な予感がしてならないけど」
「オキタ氏の勘ですか。
ちなみに、その的中率をお聞きしても?」
「殆ど当たったことがない」
俺がそう言うと、アレンは呆れた顔を返してきた。
いや、すまん。
それっぽいこと言っておけば当たったときに自慢げに出来るだろうと思ってつい。
「あまり脅かさないでください。
予知能力までお持ちなのかと本気で疑い掛けましたよ」
「はは、そんなものがあったらもっと巧く立ち回ってるさ。
そんな超能力……ああ、エルフで言う所のP.Pって奴か。
帝国が提唱するB.M.Iみたいな人工的な強化手術を受けているならともかく、自然に発生する解析不能能力なんて俺にはないよ」
「そうですか?
誰にでも発現し得る能力なので、エルフ星系では幼児でも使っていますよ」
「ならエルフ特有なのかもな。ヒトって平々凡々な種族だし」
俺がこの世界に来て一番驚いたのは、二足歩行ロボットとか光の速さを超える宇宙船とか、SF好きなら想像つくようなモノじゃなく、ごく普通に超能力の存在が認知されていることだった。
とはいえ、P.PはこのSF世界でも解析できていない超能力らしい。
この辺りは実際に使える連中が少ないのが原因な気がする。
それじゃあ納得しないのが人間の悪癖と言う所か。
使えない能力を使える技術にまで落とし込むにはどうすればいいか?
と言う問いに対して生まれたのが、後天的に肉体に強化を施すB.M.I強化手術と言う手段だ。
「エルフはP.Pの扱いに長けてるって聞いたことがあるけど、アレンやエレンは使えるのか?」
「勿論使えますよ。ほら、この通り」
「おお! すごい、マジの超能力だ!」
手をこちらに翳してくるアレン。
その手は少し青色の光を発していて、俺が置いていたコップが一人でに持ち上がって宙に浮いている。
「フフ、新鮮な反応をありがとうございます。
他の方には宴会の度に一発芸として見せているので、そういった初心な反応はもう返してくれませんから」
「帝国軍の研究者が聞いたら発狂もんだぞ。
でも、見慣れていればそんなもんなのか?
軍には使える人がいなかったから見たことがなかったし、今もどういう原理なんだろうかとか、滅茶苦茶気になってるけど」
「フフフ、オキタ氏は本当にお可愛いですね。
今度エレンと二人で教えて差し上げましょう」
「それは御免被る」
「それは残念です。興味があれば何時でも仰ってください」
妖艶な笑みを浮かべた誘いは全力で回避する。
エルフスキーな連中ならコロっと引っ掛かりそうなんだから、そっちを開拓してくれればいいものを。
「そういやこれも一度聞いてみたかったことなんだが、P.Pで対人用の銃弾とかレーザーを止められるって噂は本当なのか?」
どこぞの映画よろしく、飛んでくる銃弾やレーザーも防げる。
そんな噂を聞いてから、どうしても俺はそれを聞いてみたかった。
やっぱそういうのって憧れるだろ。
「可能ですよ? もっとも、そこまで強いP.Pを操れる人は限られますが。
幸いにも私やエレンは強い部類なので、対人パワードスーツ程度なら生身で相手ができます」
「パワードスーツ相手ってマジか。やばいなP.P」
「ええ。便利ですが、使い方によっては危険な武器になりますからね」
そう言われ、P.P兵装なるものの存在を思い出した。
帝国軍が次期主力機に搭載するために研究している、という噂を聞いたことがある。
B.M.IでTSFやVSFくらいの大きさの機械を動かすのは搭乗者の精神に負荷が掛かり過ぎる、というのが理由だったはずだ。
とはいえ、そもそも適合者が少なく解析不明な力をどうやって使わせるつもりなのだろうか? と駐屯地では笑い話の類だった。
「そういう理由もあって、商談時のハイデマリー氏に付く護衛は私かエレンが担当することになっています。
採掘基地でも私がハイデマリー氏の護衛に付くので、オキタ氏はエリー氏と一緒に居て下さい。
あの子の手綱を握れるのは貴方くらいでしょうし」
「あー……まあ、目の届く範囲では何もしないように見張っとく」
俺がまだ軍に居た頃、駐屯地に来ていたエリーはそれはもう酷かった。
軍人相手にはまだマシだったと思いたいが、同じタイミングで稼ぎに来ていた傭兵に喧嘩を売るわ売られるわ。
女日照りの環境下だとあんなナリでも良く見えたのか、しつこいナンパ男は金的にケリを入れることで黙らせていた。
初めてそれを見たとき、思わず内股になってしまう程の衝撃だったのを今でも覚えている。
今でもアイツの足を見ると少し身構えるくらいにはトラウマだ。
そんなこんながあれば話は上にも伝わるわけで。
結果、救援に来てくれているお嬢さんを危険な目に合わせるなという伯爵の鶴の一声により、暴れん坊係などと呼ばれる俺が生まれることになった。
俺とエリーの腐れ縁はそういった感じで始まったんだよな。
「貴方は彼女のお気に入りですから、末永く仲良くしてあげて下さいね」
「どう見てもお気に入りの玩具扱いだろ、俺。
……さて、そろそろコンテナに戻ることにするよ。
これ以上待たせるとエリーが煩いし」
腹ペコで機嫌が悪くなったエリーの姿は簡単に想像つく。
何気ない会話もこれからは増えていくだろう。
戦いばかりの軍人時代もそれはそれで楽しかったが、自由に暮らせる傭兵生活も十分楽しい。
ラビットに雇われて本当に良かったと思う。
食器を全て片付けて食堂を後にする頃には、採掘基地まで目と鼻の先まで来ていた。
メカクレエルフ♂×2。渋さが足りない+オカッパにするか悩んでロン毛+若干ショタ気味に
2章終わった頃の人物紹介で双子画像あればいいやの精神です




