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宇宙の傭兵SF冒険譚  作者: 戦慄の大根おろし
着任、ラビット商会
10/90

10_エピローグ

241010段落修正

 

 オキタが傭兵になると決心し、ラビット艦内で一通りの騒動が終わった頃。

 ガーデン少佐の元にはオキタから復帰お断りの連絡が届いていた。


「振られましたな、少佐」


「それ自体は構わん。が、詰まらんことをさせられたものだ」


 ガーデン少佐はそう言い、オイゲン中尉の淹れた紅茶を口にした。


「中央評議会の命令で一芝居売ったが、結果についてはどうでもいい。

 議会の老人どもはオキタ准尉が見せた"あの力"を捨て置くには惜しいと考えているようだが、楔を打ち込んだ伯爵自身が准尉を軍に戻すつもりがないのだからな」


 ガーデン少佐は2つの思惑からこのコロニーに遠征させられていた。

 一つは帝国の最高政府機関である中央評議会からの命令。

 もう一つはオキタの後ろ盾となっている伯爵からの"お願い"だ。

 ガーデン少佐は伯爵から先だって起こったヴォイド侵攻の顛末を聞かされた上でそれらを天秤に掛け、伯爵からの依頼を優先することとした。

 一つはオキタの様子を確認すること。

 これは単純に伯爵がオキタに抱えている申し訳なさから。

 もう一つは、復帰する素振りを見せた場合は速やかに止めること

 これはオキタが帝国軍を辞める切っ掛けとなった本当の理由から遠ざけるため。


「中央評議会と伯爵。

 二つの思惑に挟まれて面倒な立ち回りをさせられたが、結果としては悪くない。

 評議会への言い訳はいくらでも付くが、老練翁と称される伯爵相手にこの程度で借りを返せるのであれば安いものだ。

 これで私も貴族連への足掛かりができた」


 ガーデン少佐はオキタが軍に復帰すると言った際に幾つかの対抗プランを用意していたが、今回はそれらの準備も無駄に終わっている。

 本心ではオキタに復帰したいと粘られることを期待していたのが、蓋を開けてみればあっけない決着となったことに拍子抜けだと感じている。


「普段の少佐からは想像もつかない下手な芝居でしたので、笑いを堪えるので必死でしたよ。

 もっとも、私は純粋にオキタ准尉とこの宇宙を飛んでみたくもありましたが」


「フン、元より私は英雄などと呼ばれる存在が嫌だ。

 突出した個人など軍にとっては邪魔でしかない。

 共和国からの圧力が無視できなくなった現状では、中央評議会に使い潰される未来など想像に容易い。

 伯爵が彼を遠ざけようとする気持ちも理解できる」


「『箒星』『ファイヤーストーム・ワン』『ヴォイド・キラー』『一人師団』

 ここまで二つ名を付けられているTSF乗りは、帝国軍の歴史で見ても多くないですからな。

 帝国近衛軍への誘いも近々あると噂されていたくらいです、復帰が叶わないと聞けば評議会もさぞ残念がるでしょう」


「損得勘定だけで生き残ってきた先生方のことだ、すぐに別の手駒をこさえるだろうさ」


 そこまで言ったところで、ガーデン少佐の端末に連絡が入る。

 ラビット商会の艦船がコロニーを離れること。

 それに伴い一時的な出向先から復帰し、本来の所属である帝国情報局への原隊復帰命令だ。


「やれやれ、これで面倒な辺境とはおさらばだ。

 オイゲン中尉、我々の本来の業務に戻るぞ」


「ハッ! お供します!」


 ヴォイド侵攻、帝国中央評議会、貴族連、共和国。

 各勢力の入り乱れる宇宙で、一傭兵に過ぎないオキタに何が出来るのだろうか。

 均衡する力によって、宇宙はまだ平和を保っている。



次回キャラ紹介を挟んで次章へ続きます

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