発火
▫発火▫
「ふぅー…休暇を貰ったは良いが……」
することが無い。暇だ。
カフェにでも行こうかな。
そんな事を思っていると、妻が話しかけて来た。
「ねぇ、貴方。最近、隣の国で色々起きてるみたいだけど、大丈夫なの?戦争とかが起きたりしないよね、?」
「うーん…。確信を持って言える訳では無いが…。
きっと、大丈夫だろう。現代で戦争なんて、早々起きないからな。」
「そう、ならいいんだけど…。」
「それより、ちょっと出掛けてくるよ。カフェにでも行ってみようかと思ってね。」
「あら、いいじゃない。気をつけて行ってきてね。
あと、夕飯までには帰ってきてね?」
「ああ、分かってる。それじゃ行ってくるよ。」
「行ってらっしゃい!」
俺にも妻がいる。
結婚して3年目だが、夫婦仲は良いと勝手に思っている。いつも1人にしてしまって申し訳ないと思っていが、彼女は俺を咎めたりはしない。むしろ、軍として働く俺を、いつも応援してくれている。本当に、感謝しかない。良い妻を持ったものだ。
「いらっしゃいませー。お好きな席へどうぞ。」
「ああ、どうも。」
ここのカフェは、俺が学生時代に良く通っていた所で、料理がとてつもなく美味い。
ここのサンドイッチは、他の何処にも引けを取らないと、勝手に思っている。
「はぁ…。」
席に座ると、何だか溜息が出てしまった。
…………。
不安だ。
本当に戦争が起きるとは思っていない。
が、本当に戦争が起きないという確証など、何処にも無い。俺は、妻をおいて死ぬのは御免だ。
だから、戦場なんて行きたくない。戦争は起きて欲しくない。
そんな事を考えていると、頼んでおいたお気に入りのサンドイッチがとどいた。
「いただきます」
サクッ。
うん、美味い。
不安を無くしてくれる程、安心感を与えてくれる味だ。自分でこの味を再現しようと思い、サンドイッチを作ってみた事もあったが、何故か毎回失敗してしまった。この味を、家で食べれたら良いんだがな。
「ご馳走様でした。」
サンドイッチ自体は量が少ないので、直ぐに食べ終わった。
一段落した所で、SNSをチェックしようと思い、スマホの電源を入れた。
そこには、目を疑うような通知が来ていた。
「ドレスデンブルク、ヴァルディア連邦共和国へ宣戦布告か。」
起きて欲しくない事が、現実で起きてしまった…。