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シスタースーザン

ここは俺っちの地元、サラダワン。

8才の時、7年前に起こったグルビック山の奇跡で

中央都市マダラスカルとの交易が発展し、ベットタウン化したことで

人口1万人程度から現在3万人に増えていた。

ちなみに人口はまだまだ増え続けている。

「銅貨3枚、5時間歌ってこれだけかよ・・・」

メインストリートの橋の上、交通の要所的な場所で

路上ライブをかれこれ5時間近くやったが

初の路上ライブの収入は銅貨3枚(30円)という切ない状況だ。

メインストリートの中央にはカモネギネギ劇場が見える。

2階建で白いレンガ作り、20~30名程度を収容できる小さい劇場だ。

最低でもあれくらいの規模の劇場を満員にできないと食ってはいけないかな。

パーティを組んでもらえない以上、音楽で食いつなぐしかないわけで。

グラディウス家が音楽で食っていくようになった理由を

今ひしひしと体感している俺っちである。

時刻は17時くらい。季節は初夏だらか日が落ちるまではあと2時間くらいはある。

別の場所に移るか、酒場で歌わせてもらうか、どうするレニーよ。

「いい歌ですね」

下を向いて考えていた俺っちの目の前にシスターの若き女性が声をかける。

身長は160センチ。年齢は17~18?

「初めまして、私はスーザン・ボリスと申します」

ゆるめのシスターの黒色の衣装からでもわかる豊満なパイオツ。

Dか?いやEはあるな。ちょっと長めの金髪を後ろで束ねている。

緑がかった青い目。マジ可愛い。

「すぐ近くで私の所属する聖歌隊が歌を披露するのですが見にきませんか?」

「興味ねーっす」

スーザン個人には大変興味がありますけどね!

「そう言わずに。これも神のお導きですよ」

スーザンは俺っちの手を取り強引に教会まで連れて行った。

大きくもなく小さくもなく街中にある一般的な教会。

屋根の上には丸に十字の記号のモニュメントがある。

サークルクロスというらしい。

転生前の世界ではメス、女性を表す性別記号だ。

異世界での一般的な宗教団体で転生前でいえばキリスト教に近い感じである。

「ちょっと待っててください。今、書類を持ってくるので」

「ん?書類?」

数分後、A4サイズくらいの紙を持ったスーザンが戻ってきた。

「こことここにサインをしてもらえますか?」

入信希望者と書かれてあるけど・・・。

「それと金貨1枚をご寄付願えますか?」

マジかよ、勧誘だったのかよ、騙された!可愛さに騙された!

「これも神のお導きですよ」

違う、ぜってー違う。お前が俺の手を引いてここまで導いたんだよ!

「興味ねーっす」

「では寄付金だけでもお願いしますぅ~」

ガシっ!と両手で俺っちの右手を握りしめ豊満なバストの上に持っていきながら

上目使いの潤んだ瞳で下から見つめるスーザン。

「金貨1枚ですぅ~」

や、やばい!エクスカリバーの柄を甲冑のおっさん騎士が握りしめ

岩から抜き取ろうとしている。

体は15才。エクスカリバーを抜き戦う準備は出来ている。

転生前の俺っちは29才でチェリーではないが異世界の俺っちはまだチェリー。

ここは焦らずパイオツを揉むくらいにしておくか。

「も、もましてくれたら・・・」

「寄付金は銀貨1枚です」

近くでおじいちゃんに説明しているシスターから銀貨一枚(100円)と聞こえたが?

「おい、寄付金は銀貨1枚って言ってるぞ!何であんたは金貨1枚なんだよ!」

「チっ・・・」

うわっ、今舌打ちした?ねぇ、舌打ちした?

スーザンは俺っちの手を振り払うと振り返らずに教会へ入って行き

ドアをバタンと閉めた。嘘がバレたとたんにあの態度。

シスターってあんな裏表ありましたかね?人間不信になるわ~。

まあ、寄付金を払う金銭的な余裕はない。何とかしないとな~。

教会のドアの前にある階段に座り、今日は野宿かな~、これからどうするかな~と

考えていたら教会の中からオルガンの演奏と聖歌隊の歌声が聞こえてきた。

アベマリアみたいな曲。いい声だな~。荘厳で透き通る歌声。

ロックじゃないけどこういう音楽もありだな、と思った矢先、

すげぇ低音のデスボイスが聞こえてきて演奏が中断した。

何だ今の地獄の番犬ケルベロスみたいな咆哮、この世の終わりみたいな声は。

教会のドアが開き、中からスーザンと神父が出てきた。

「スーザン・・・大変言いにくいのだが今日で聖歌隊を辞めてもらいたい」

「なぜです、神父様!」

「いや、その・・・歌声がね。聖歌隊だけがシスターの仕事ではないから」

   ●

「くそ~あのちんぷ(神父)、ふらけんなよ~」

テーブルの上にグラスを叩き置くスーザン。

スーザンのおごりで酒場に付き合うことになった俺っちだったりする。

「ちみ(君)の可愛さならせいららい(聖歌隊)に入れば

すぐにトップになれるから、とかぬかしやがったくちぇに~」

グラスに酒をなみなみと注ぎ一気飲みする。シスターなのに酒をがぶ飲み。

「スーザンって何歳なんっすか?」

「ちゃんさい(3才)」

3本指のピースサインを横にして右目のあたりで決めポーズ。

「はいはい、ちゃんさいちゃんさい。18くらいか?」

「ぶーっ!ピチピチのはらち(20才)でーすぅ」

異世界の飲酒可能年齢は特に決められていないが酒を飲んでも問題ない年齢だ。

「あんらも飲みなちゃいよ~」

「いや、俺っちはいいっす」

転生前はまあまあ飲んでいたけど、異世界ではまだ飲酒は試していない。

ここは異世界。泥酔し路上で寝ると強盗に会い命を落とす。

「あっ今お前、しすらー(シスター)なのにちゃけ(酒)飲みやがってと思ったろ!

しすらー(シスター)=おちゃけ(酒)を飲まにゃいって

おめ~らおろろとも(男共)の勘違いだぞ、このチンカスやろうが~!

ちくしょーちんぷ(神父)のあそこを蹴り上げてやろうか、ぎゃはははは」

シスターで酒乱。ああ、シスターのイメージが・・・。

「おっ?吟遊詩人がいるじゃねーか」

酒場の客が話しかけてきた。

「1曲何か披露してくれよ。銀貨5枚(500円)でいいか?」

5時間の路上ライブで銅貨3枚(30円)に比べればいい金額じゃん。

「OK。では1曲・・・」

と言い出したところで

「せいららい(聖歌隊)のいいちん(一員)である、ヒック

このわらしが何かうら(歌)ってあげよう、ヒック、じゃないの」

正確には聖歌隊の一員だった、であるが突っ込みを入れるのはやめておこう。

「レニー、何か、ヒック、けーち(景気)のいいちょく(曲)、

ヒック、弾いてちょうらい」

「場の雰囲気ってやつがあるからさ。ここはしっとりとしたメロディのバラードが」

「たれ(誰)のおごりで飲んでるんだ、このチンカスやろうが!」

わかった、わかったよシスター様。

知らねーぞ、どうなっても俺っちは知らねーからな。

俺っちのエレキリュートに合わせスーザンのデスボイスが炸裂する。

「ちんぷ(神父)のあそこを蹴り上げろ!」

上げろ、げろ、ゲロ・・・フェードアウト。

   ●

「ゲロゲロゲロゲロ~」

酒場の外、路地裏でキラキラを吐き出すスーザン。

シスターのイメージが崩れ去っていく。

「酒場の客、スーザンのデスボイスに全員凍りついてたな・・・」

夜空を見上げる俺っち。修行初日から色んなことがありました。

「なかなかいい曲じゃないか」

びくっ!誰だ?暗闇の中から一人の女性が現れた。

身長は170センチくらい。銀とも金ともいえない金に近い銀色の髪。

サラサラの髪の長さは肩あたり。軍人が被る帽子を少し斜めに被っている。

軍服っぽい衣装で上半身は赤をベースにラインは黒。

下半身はピチめの白いズボン、そして黒いブーツ。両手は白い手袋。

はちきれんばかりの豊満なパイオツ。黒目に赤い丸、赤い丸に金色で数字の8。

そうだな・・・簡単にいうとストリートファイターの女版ベガって感じかな。

「私の名前は88(ハチハチ)。君の名は?」

ナイスバディの超美人!・・・だが何か危険な感じがする。

「レニーっす・・・レニー・グラディウスっす」

「酒場での反応はすこぶる悪かったが、あの曲、私は好きだよ」

「あ、あざーっす!」

ヒューマンでもないし、エルフでもない。まさか魔族とかいうやつか!

魔族を見るのは初めてだ。修行初日で魔族に会うなんて。

(魔族は危険だ。遭遇したらとにかく逃げろ)

ジョセフの言葉を思い出すがどうしていいか正直わからない。

「明日の晩、ある場所であの曲を演奏してもらいたい。

ギャラとして純金貨5枚を支払うよ」

「純金貨5枚(50万円)!」

「前金として純金貨1枚を渡しておくよ」

断ったら殺されるかも。

「あ、あざーっす」

「前金を渡した以上、キャンセルは無しだよ」

「OK・・・っす」

危険だ、危険だが純金貨5枚はマジで欲しい。

「楽しみにしているよ。明日の晩、この時間にこの場所で待っているよ」

と言い残すと88は暗闇の中に消えていった。

森の中で熊とばったり出会ったが何もなくやり過ごせた感じ?

時間にして2~3分程度だったが30分にも1時間にも長く感じた。

この88との出会いが世界を左右するあんなことに

巻き込まれる始まりだっただったとは。

そして魔族とは何なのかを俺っちは深く知っていくことになる。

「誰と話してたの?」

下を向きっぱなしだったスーザンは88を見ていないようだった。

「魔ぞ・・・綺麗な人だよ。スーザン、歩けるかい?」

「無理・・・」

「スーザン、家どこ?」

酔ってフラフラになったスーザンを支え星空満点の夜道を歩きながら

酔っ払った後輩をタクシーに乗せアパートまで送り届けたことを思い出していた。

「スーザン、家に泊まっていいっすか?」

「駄目に決まってるだろうが、このチンカスやろうが!」

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